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本格派ファンタジー戦記 『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』 書き下ろし特別短編! ●本編あらすじ 隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国、カトヴァーナ帝国。その一角に、とある事情で嫌々、高等士官試験を受験しようとしている、一人の少年がいた。彼の名はイクタ。 戦争嫌いで怠け者で女好き。そんなイクタが、のちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、このときは誰も予想していなかった……。 戦乱渦巻く世界を、軍人としての卓越した才で生き抜く少年イクタ。その波瀾万丈の半生を描く、壮大なファンタジー戦記! 今回は10月10日に8巻が発売となる『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』の書き下ろし特別短編〈前編〉を公開! 見知らぬ子供に「お父さん」と呼ばれ、周囲から痛い視線を浴びるイクタは、自らの潔白を晴らすがめ、立ち上がるのだった……!? 本編とは毛色の違う、コミカルなストーリーを楽しんでほしい!
時計の針が午前八時四十五分を指そうとする頃、僕はパソコンをインターネットに接続してニコニコ動画へとアクセスする。 今日は僕の一番好きな大橋名人が保持するタイトルの一つ、《覇王戦》の第二局がニコニコ生放送で中継される日だった。第一局は大橋覇王が勝利しているので、是非連勝して波に乗って欲しいところである。 「あゆむ、おはよう」 香車の駒の化身が現れて、僕の隣の椅子に腰を下ろした。 「おはようございます、香車さん」 「二日制の一日目、しかも対局開始前から観るなんて、あゆむはほんとに将棋が好きなんやなぁ。一日目は進行が遅いから、退屈やろ」 「まあ、確かに一日目はゆっくりとした展開が多いですけど、僕は両対局者が大橋流や伊藤流で駒を並べるところから観たいし、対局開始が告げられるまでの厳粛な雰囲気も感じたいんです。タイトル戦の対局開始前の光景をリアルタイムで観られるなんて、ニコニコ生放送くらいのもの
これは、歪んだ物語。 歪んだコメの、物語。 「動画とるっすよ!」 「目指すはデイリーランキング一位だね!」 遊馬崎ウォーカーと狩沢絵理華の二人が、ビデオカメラやノートパソコンを手にしながら、突然そんな事を言い出した。 これが遊び仲間である門田達に対する言動ならば、いつものように軽く流されて終わりだったのかもしれないが―― 『……え?』 セルティ・ストゥルルソンは、自宅マンションに突然来た遊馬崎達を前に、何がなんだか解らずに首を傾げて混乱する。 正確に言うならば、彼女が傾げたのは、体の上に載せたヘルメットだけだ。 何故なら、彼女には―― 首から上が、存在していないのだから。 ♂♀ セルティ・ストゥルルソンは人間ではない。 俗に『デュラハン』と呼ばれる、スコットランドからアイルランドを居とする妖精の一種であり――天命が近い者の住む邸宅に、その死期の訪れを告げて回る存在だ。 切り落とした己の首
突然だが、俺――坂本秋月(さかもとあきつき)はかつて、死んだはずの少女と交換日記をしていた。 意味わからんよな。うん。順番に説明する。 二年半前の雨の日のことだ。俺の目の前で、ひとりの少女――夢前光(ゆめさきひかり)は、不幸な交通事故により死んでしまった。 しかしその時。突如現れた、謎の黒ローブの人物に俺はこう問いかけられたのだ。 「おまえの寿命の半分で、彼女をたすけてやろうか?」 何を言っているんだ? そう思ったのを今でも覚えている。 そこで俺は無意識に「やってみろよ」と返していたわけなのだが、この言葉にはとんでもない裏があった。 というのも、数日後。なんと夢前光の魂は〝俺・坂本秋月の体を一日置きに乗っ取る〟というわけのわからん方法にて、この世に復活しやがったのだ。 俺が一日過ごし、夜に眠りに就く。すると翌日、なんと俺の体は、憑依した夢前光の魂に乗っ取られるのだ。そうして彼女が一日過ごし
「社長、さっきベンダーの営業さんと雑談してたんですけど、なんかF5機器のSFPが世界的に在庫不足みたいですよ」 何気なく告げた瞬間、六本松の顔が歪んだ。鼻腔を広げしかめっ面になる。 昼下がりのオフィスだった。行き交うスタッフをチラ見しながら禿頭の上司は口ごもる。分厚い唇を折り曲げ呻いた。 「む……本当か、まずいな」 「どうかしたんですか」 「丁度ロコモコさんから引き合いを受けとってな、まぁ大した部材じゃないしすぐ手配できるだろうとメールしたばかりなんだが」 「あら……そうなんですか」 工兵は最大限驚いた表情を作った。数秒数えてから、はっと面を上げる。 「あ、でも大丈夫ですよ。なんか今メールサーバの調子悪いみたいなんで多分送信できてないんじゃないですかね? 運用部に言えば削除してもらえると思いますが」 「本当か」 声を明るくし六本松は運用部に向かいかけた。が途中で振り返る。 「何かこ
「なるほど……社長から業務処理を引きはがしたいと」 室見の指示を説明すると梢は考えこんだ。団栗眼をすがめしかつめ顔になる。 「確かに注意しても聞きませんからねあの人。いっそ案件から退場いただいた方がマシかもしれません。こっちの業務量は増えますけど」 こくりとうなずき同意する。 「ただ普通に引き取ると言っても聞いてもらえなくって、なんか自分がうまくやれてると思いこんでるんですよ、社長」 「大きな誤解ですね」 「嫌な意味で前向きなんです」 しばらく押し黙った末、梢はぽつりとつぶやいた。 「とりあえずぱっと思いつく解決案は……十個くらいですね」 「そんなにあるの!?」 「ブラックなのとダークなのとどれがいいですか?」 「ホワイトなのとグレーなのはないんですか!」 「合法的なプランはちょっと……」と彼女は口ごもった。溜息を一回、やや上目遣いに見上げてくる。 「そもそも真っ当なやり方で説得でき
「あー、もう限界! なんで私がこんな調整!」 運用部門のオフィスを出た瞬間、室見が叫んだ。午後七時、日はとうにとっぷりと暮れている。朝一に発覚した発注漏れのせいで工兵達は終日リカバー業務に駆り出されていた。販社に対しては再手配と納期確認、データセンターに対しては搬入日時の再調整、内部では全体スケジュールの引き直し、タスク依存関係の変更。 幸いいくつかの機器は在庫ありという話で、手に入るものから順に送ってもらえることとなった。とはいえ足りない機械の検証も開始せねばならない。困った末、他部署の検証部材を借り集めようとしたのだが。 「『納品直前で未発注が分かるとか、プロジェクトのグリップ甘いんじゃないですかぁ』ですって? あんた達に何が分かるのよ。営業の暴走する案件でまともな納期管理やってみろっていうの」 打ち合わせ中の鬱憤を吐き出すように毒づく。他部署は他部署で検証予定が詰まっていたのだ
一般に営業は「売るまで」が仕事と思われている。顧客にプレゼンし価格調整をして、発注までもらえば晴れてお役ご免と。 だがことシステムインテグレーションに関しては事情が異なる。様々な業者や製品の絡む個別構築はまさに受注してからが営業処理の本番だった。 まず受注時の金額と仕入れ項目を精査し、関係各社に調達をかけなければならない。その際納期を握るのも重要な仕事だ。プロジェクトマネージャと打ち合わせ、どの部品がいつまでに必要か確認する。中には月額課金のものもあるため、そういう項目はぎりぎりまでサービス開始を遅らせなければならない。だが大体希望通りの納期は守られないため、都度分割納品や代替手段を検討することになる。 そもそもプロジェクトは生もので日々状況が変わっていく。昨日まで不要だった回線が急遽開発側の都合で必要になるかもしれない。そういうリクエストにどうレスポンスよく対応していくか、営業マン
『有能な怠け者はPMに、有能な働き者は設計エンジニアに、無能な怠け者は現場作業員に、無能な働き者は銃殺にせよ』 ――とあるプロジェクトマネージャの言葉 * 「機械が届かないってどういうこと」 少女の声は不満を多分に含んでいた。視線に険がある。彼女は着席したまま細い足を組みかえた。 「来週には事前検証始めるって話してあったでしょ」 零細システム会社、スルガシステムのエンジニア、桜坂工兵は首をすくめた。実際彼女の前に出るのはいつも恐ろしい。室見立華、同社のネットワーク技術者にして彼のOJT担当だ。可憐な外見とは裏腹に気質は完全な職人肌、少しでも曖昧な点があればすぐに突っこんでくる。ある意味町工場の親方的存在だった。ちなみに少女……というのは見た目的な話で実年齢は不明。経歴の豊富さだけ聞くと三十近くてもおかしくない。が、そのあたりを掘り下げて聞く勇気は工兵にはなかった。 「待ってください、今
「日本全国のサダオさんに謝れ!」 世界中の悲しみと憤怒を背負ったかのような叫びで、デュラハン号は目を覚ました。 驚きの余りスタンドが上がって倒れてしまいそうになるのをこらえながら周囲に注意を払うと、デュラハン号の主が住む木造アパート、ヴィラ・ローザ笹塚の共用階段を人間の女性が降りてくるのに気づいた。 新聞の勧誘やMHKの集金人にも見えないし、訪問販売の類でもなさそうだなどと、寝起きのダイナモで記憶を探る。 デュラハン号の主である真奥貞夫が構築する人間関係の中で、わざわざ部屋を訪ねてくるような女性がいただろうか。 それとも真奥のルームメイトである芦屋四郎の関係だろうか。そこまで考えたところで、 「……」 唐突に思い出した。 階段から降りてきた女性に、思い切り睨まれたからだ。 こんな、空気と前かごが軋むほどの存在感と殺気を孕んだ視線を忘れられるはずがない。 だが、自分も真奥も
聞こえてきた声は、『彼』の主の部下と名乗る男のものだった。 立場的には『同僚』と呼んで差し支えないはずだが、時としてその部下は主より上位に立っていることすらあるから自分と同列には語れまい。 「もう少し計画的にお金を使ってはいかがですが」 最早耳に馴染んでいるその声色は、かなり険しい。 「じゃあお前、俺が悪くなったもの食って腹壊してもいいって言うのか!」 『彼』の主も言葉を返すが、こちらは初手から部下に圧倒されている感が丸見えで、この時点で既に勝負の行方は決しているようなものだった。 『彼』がこのアパートにやってきて数日経つが、主とその部下は日に一度は金のことで頭を悩ませているようだった。 今日もしばし言い争いが続いて、それをぼんやりと聞くうちに、『彼』は空模様が怪しくなってきたことに気づく。 そろそろ主が『彼』を駆って仕事に向かう時間だ。 「お待ちください魔王様! まだ話は……
電話があった日の翌週。 母親と一緒に訪れたアスキー・メディアワークスの編集部で、僕は知った。 僕の小説が最終選考作になれなかったのが、年齢のせいだったことを。 嬉しいことに、僕の応募作は評価が高かった。話としては十分に面白くて、それだけを考えれば、最終選考作に上げることに異論はなかったらしい。ちなみに、四次選考は電撃文庫の編集者全員によって行われている。 しかし、もしこれを最終選考作に上げてしまうと――、 受賞しようがしまいが、来年上半期のデビューが決まってしまう。 もし受賞すれば、翌年二月の出版になる。しなくても三月や四月など、比較的早い。作者はそれを見越して、応募原稿の“改稿”にうつることになる。 今だからよく分かっているが、応募原稿がそのまま出版されることはほとんどない。作家は、担当編集さんと一緒に、小説を何度も直していくことになる。 ライトノベルは、シリーズ化して続
「私は、去年の秋に転校してきました。二組でした。好きな食べ物は、色々ありますが、なんといっても、毎日三食でも食べていたいのは――」 僕は、答えを予想した。 女子らしく、甘いものだろうか? ケーキやパフェか? 普通に、カレーやラーメンだろうか? 少し意外性を持って、ソースカツ丼か? 僕は、彼女に勝手に勝負を挑んだ。 彼女が答える前に、可能性がありそうなメニューを片っ端から妄想していった。 そして、 「馬刺し! です!」 彼女は言った。 僕は負けた。 あんまり、というか、かなり女子が選ばない好物のせいで、クラスメイトが楽しそうに笑った。先生まで笑っていた。 見事だった。 彼女は、ひとり前の生徒が不注意で不必要に重くした雰囲気を、たった一言で吹き払ってくれた。 いくらこの県が馬刺しの産地だからといって、高二の女子が毎食馬刺しを食べる生活は、あまり想像できない。 「運動は苦
第一章 「四月十日・僕は彼女と出会った」 男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 それが、今の僕だ。 僕は、硬い床に背中をつけて横たわっている。小刻みに揺れて、音と振動を伝えてくる冷たい床に。 クラスメイトであり、一つ年下であり、声優をやっている女の子が、僕の腹の上に馬乗りになっている。 水色で薄手のセーターを纏った彼女の両腕が、僕の首に伸びている。両手の細い指が、僕の頸動脈に覆い被さって、左右から挟んで、その流れを止めようとしている。 彼女の手は、とてもとても、冷たい。 それは、まるで、鎖のマフラーでも巻かれたかのようだ。 僕の視界の中には、左右に黒いカーテンがある。 彼女の黒くて長い髪が、真っ直ぐ垂れ下がっているからだ。リンスだろうか、南国のお花のような、いい香りがする。 そしてカーテンの中央に見
「選択の日曜日」 人生はいつだって選択の連続で、自分自身が選び取った結果の先に、未来というものは続いていく。 だから多田万里が、今ここに息を切らして一人立ち竦み、 (やばい……どうしよう……) などと焦っているのも、自分が選んだその結果だ。 秋の東京、とある日曜日。銀色に鈍る曇り空の昼下がり。 まっすぐ進むか、左へ行くか、右へ行くか。万里が選べる道は三方向にあって、正解は一つだけ。突っ立ったままで交差点をぐるりと見渡し、迷ってしばし考える。 気が付けば、右手には割れたクッキーの欠片を掴んだままで来てしまった。路上に捨てるわけにもいかず、こう息が上がっていては食ってしまうこともできず、手の中にガシャガシャと掴んだまま、次の一歩を決めかねる。 さあ、選ばないといけない。どちらへ行くべきなのだろうか。 多分、この出来事自体はとても些細なことなのだ。それはわかっている。なのに迷って
1 策を練る事はできる。 最大の問題は、逃げようと思えばどこにだって逃げられるアリシアを、上条達がどうやって追い詰めるのかという点だ。それは、大海原を自由に泳ぐ魚を、人間が手掴みに挑戦するにも等しい。 これに対して、上条は『問題ない』と答えた。 こちらから無理に追わなくても、アリシア=マクスウェルの方からやってくるから、と。 「……、」 誰もいない無人の立川。まるで滑走路のように真っ直ぐ伸びる幹線道路。道が十字に重なる巨大な交差点の中央に立つ上条当麻は、その場でぐるりと周囲を見回す。 いつの間にか、風景の中に白い少女が立っていた。 ツインテールの銀髪に控え目なワンピース。 画像写真の情報が正しければ、彼女がアリシア=マクスウェルだ。 「結局、お前はどっちの人間なんだ?」 先に声を掛けたのは、上条の方だった。 「科学サイド、それとも魔術サイド?」 「それ、分かっていて聞いて
1 御坂美琴、高坂京介とは連絡がつかない。 が、彼らが立川のどの辺りにいるのかは、大体の予測はつけられた。 「とにかく騒ぎが起きている方へ行けば良い。ていうか何だありゃ!? あっちこっちでもくもく立ち上ってる灰色のって、全部ビルが倒れたヤツか!?」 「バスガス爆発よりはヤバそうな感じだけど……あれどっちが暴れてんの? 明らかに役立たずのパンピーが一人混じっているはずなんだけど、きちんと守ってもらってんでしょうね!?」 「ご丁寧に観客席を用意してからスポーツマンシップに則って戦っているとでも思うのか? とにかく急いで合流しないと!」 紙の束を掴んだまま、上条は桐乃と共に高層ビル群の倒壊地点へ向けて走り出す。 束の正体は、ネット上の『エーテル概論』についてプリントアウトしたものだ。 「ヤツと直接かち合う前に、いくつか確認しておこう」 距離はそこそこあるが、徒歩で辿り着けないほどではな
1 ステータス異常『しびれ』から回復した上条当麻も参加して、この場にいる四人で現状の確認を行った。 つまり、 「……そっちは高坂桐乃と高坂京介。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ってタイトルのアニメの形で、私達はアンタ達がどんな道を歩んできたかを観ている」 美琴は桐乃の方を指差して言った。 「……そっちは御坂美琴と上条当麻。『とある魔術の……』いや、この場合は『とある科学の超電磁砲』かな? とにかくそんなタイトルのアニメの形で、あたし達はあんた達の行動を自由に眺める事ができた」 桐乃は美琴の方を指差して言った。 京介は肩をすくめ、同じように置いてきぼりにされている上条へ声を掛ける。 「何言ってるか分かる?」 「分からない事だらけだけど、人生なんてそんなもんだ。魔術の仕組みとか科学の論文とか、完璧に理解しなくたって解決はできる」 どうやら、彼らはお互いの世界でアニメのキャラ扱い
ひなはおしっこがとくいです。 はやくおっきくなりたいから、夜にミルクをいっぱい飲むけど、寝るまえにちゃんとおトイレにいけばあんしん。 おねしょしらずの人生でよかったです。わーい。 でも、まほはおばけさんが怖いからかわいそう。 ひなはおばけさん怖くないよ? 会ってみたいです。 でもでも、まだおうちでおばけさんに会えたことはありません。ざんねん。 ひなはおばけさん怖くないけど、おばけさんはひなのことが怖い? もっともっとよいこになれば、おばけさんもあんしんして会いにきてくれるかも。 おー。がんばらざるをえません。 あとあと、おうちをおばけ屋敷にすれば、おばけさんが遊びにきてくれるかも。 おうちぜんぶはたいへんだから、さいしょはひなの部屋だけやってみます。 こんにゃくさんをいっぱいおいておけば、お部屋がにゃくにゃくしておばけさん向きになると思います。 おばけ屋敷にはこんにゃくさんがあるから、きっ
1 御坂美琴は困惑していた。 学園都市の名門、常盤台中学の朝は早い。全寮制のお嬢様学校と言えば大体お察しいただけるだろう。そして早朝だろうが頭に血が回っていなかろうが、本物のお嬢様が寝ぼけ眼で寝癖満載のまま人前に出るなどありえない。というか寮監にぶっ飛ばされる。化粧は禁止と言うくせに身だしなみに気を配れとは理不尽な話ではあるのだが。彼女達は動く死体みたいなのろのろした動きでシャワーを浴びて身支度を整え、そうしている間に頭の起動準備を済ませて人間らしさを取り戻していく訳なのである。 そんなこんなで。 美琴はいつも通りにシャワーを浴びて、バスタオルで全身の水気を拭い、替えの下着を穿いて、学校指定のスカートへ足を通していた。 直後の出来事だった。 彼女はいきなり朝日の差し込む駅前広場へ放り出されていた。 下着姿のまま、スカートを両手で掴んで片足を上げた体勢で、しばし彼女は硬直する。
香椎愛莉ですっ。今回はわたしが日誌を担当します。 ……ええと。 ちゃ、ちゃんと本物のわたしですよ。え、えへへ。 真帆ちゃんも『もうしません』ってみんなに約束してくれたし、これからは別の人が書いているということはないと思いますっ。 でも、本当にわたしがわたしなのか信じてもらうのは、もしかしたら少し難しいことなのかなって思ってしまったりもするんです。 わたしは、あんまり特徴のある文章を書いたりできていないと思いますし……。 それがちょっと心配で、実は今日学校でみんなにも相談してみました。 そうしたら、紗季ちゃんが「みんなで質問を用意するから、日誌で答えてみるのはどう?」って、アイデアを出してくれたんですっ。 えへへ、それならわたしにもできそうだし、少しくらいは自分らしさを見つけられるかもしれません。 いつも甘えてばかりなのもよくないなって思うんですけれど、みんないろいろ考えてくれたのがとても嬉
ふぁううううううううちちっ違うんです違うんです違うんですっ! 先週の日誌は私が書いたんじゃなくて、真帆が私のふりをして書いたものでっ……! しかも全部真帆の思い込みというか……私がしたこととか、思ったこととは全然違う内容なんです! 本当なんです! ううっ、私たち、真帆から『今週は日誌おやすみだよ~』って聴かされて、そうなんだって信じちゃって、まさか誰かが更新してるだなんて思わなくて。 しばらく、真帆以外は誰もページを開かなかったんです……。 そのせいで、まさかあんな事が書いてあるだなんて気付きもしなくて……。 な、なのであれはどうか全部忘れて下さいっ! 私はあんなこと全然思ってたりしないので! あ……!? い、いえ! 思っていないというのは昴さんに対して何も考えたり感じたりしていないという意味ではなくてですねっ、もちろん日頃いろんな事を教えて頂いたり、助けて頂いたりしていることを心から感
はろはろ~っ☆ 恋する乙女、湊智花ちゃんだよん! ムネはひかえめだけど、ハートのサイズはダイナマイツなんだからねっ! 今日はぁ~、ちょっと恥ずかしいけどぉ~、私のとっておきの恋バナをみんなにオヒロメしちゃうゾ! ぴえーん! ……あれ? ぴえーんだとあんまりもっかん……じゃなかった。私っぽくないかなぁ。 ぱえーん。 違うな~。 ぽえーん。 ……うーん。まだビミョーにヘンだけど、こんなもんでいっか。 あはは、ふだんしゃべってる通りに文章書くのって難しいね~。ぽえ~ん。 ま、細かいことは気にしないで恋バナ恋バナ! トキメキ智花ちゃんの恋する相手は、もちろんコーチの昴さん☆ ぽえ~ん☆ この前、むかつく中学生と昴さんのライバルがバスケ勝負を挑んできたから、私と昴さんは愛の合体パワーでラブラブっぷりを見せつけてやろうとしたんだ~! ついでに勝負にもサクッと勝っちゃえ~、的な? でも! なんというこ
香椎愛莉です。今回はわたしが日誌を担当しますっ。 うう、でもすごく不安なんです。わたしはいつもぜんぜん面白いことを言ったり書いたりできないから、退屈な内容になっちゃうような気がして……。 せっかく見に来て下さったのに、がっかりさせちゃったらすみません。 ……ううん。でも、ダメですよね。やる前から諦めちゃうなんて。 自信はないけど、面白く書けるように精一杯がんばってみますっ。 それで、その。実は今日、真帆ちゃんに相談してきたんです。 どうやったら、楽しんでもらえる日誌が書けるかなって……。 そうしたら、真帆ちゃんがアイデアを書いたお手紙をくれたんです! えへへ、嬉しいな。 まだ開けてないので、今から見てみますねっ。 なんて書いてあるんだろう。 えっ。 か、関西弁って。わたし、関西に住んだことなんてないよぅ……! ちゃんとした関西弁なんて、ぜんぜん知らないし……。 よく知らないのに変な関西弁を
おー。ひなだよ(╯⊙ ⊱ ⊙╰ ) まほがつかっていた顔文字、面白そうだからひなもつかう≡≡≡≡≡≡(ε:) この前、おにーちゃんとあおいのお友達の、 ぞのとしょーじがたくさん教えてくれました(☝ ՞ਊ ՞)=☞)՞ਊ ՞) かわいいですなーヾ(:3ノシヾ)ノシ((└(:3」┌)┘)) でも、さきに怒られちゃうかも?ヽ(*・ω・)ノ ヽ(・ω・*)ノ ヽ(*・ω・)ノ ゙♡ヽ(・ω・)ノ♡ ひなはよいこなのでこれくらいでかんべんしてあげます。 まだまだあるけど、また今度ね。 夏休みが終わって、九月になりました。 おねぼうできなくなったのがちょっとざんねんだけど、ひなは学校も大好きなのでどんとこいです。 学校はみんなとずっといっしょにいられるから、夏休みも学校もどっちも好きです。 しゅくだいもちゃんとできたよ? ちゃんとぜんぶ、ひなひとりでやりました。 あんまりまちがえなかったのでよかったで
永塚紗季です。 今回は日誌の前に深くお詫びを申し上げます。 先週は真帆がひどい内容の記事をアップロードしてしまい本当に申し訳ありませんでした。 雑にもほどがある文体、大量の草、顔文字、あげくのはてにアスキーアートまで。 多くの方にご覧頂く内容として著しく不適切だったとしか言いようがありません。 今後こんな不祥事が起こらないよう私からきつく言いつけておきますので、どうかこの日誌を見捨てずにお付き合い頂ければとても嬉しく思います。 それにしても私の顔文字が『凸』ってあまりにも意味不明すぎませんか!? 一体どこが似てるっていうんでしょう! 問い詰めたら「上がおでこで下がメガネ」とか、どや顔でまな板のような胸を張っていましたけど、真帆の頭の中に対してはときどき本当に理解が追い付かなくなります。 ひどい中傷を受けたので私も真帆の顔文字を作ってここで晒してやりましょうか。 でも、顔文字は使うなって怒っ
はろ~・わーるど! やっほーまほまほだよん! くふふ、今日はあたしが書くから心して読むがよいぞ。 こんなせくすぃ~キョニュー小学生の日記がタダで読めちゃうなんてみんな幸せモノだね~。 でもさ~、もっかんには困ったもんだ! 次からは面白くなるはず……って、そんなハードル上げちゃったら次書くあたしがちびっとキンチョーしちゃうじゃんか~。 ちびっとだけね。 ま、あたしが書けばきっとだいじょび! みんなが楽しんでくれるようにゼンリキでていねいに書くから、読み終わったらいっぱいほめてくれたまえ! あたしほめられて伸びる派だかんね。うんうん。 そーそー。ていねいっていえば、あたし、ふだん文字書くときってあんま漢字使わないんだ。 だって漢字めんどっちいじゃん。ひらがなとカタカナだけでじゅーぶんだと思わない? でもなんか、サキが『たくさんの人が見るんだからちゃんと漢字使いなさい』っておデコ光らせながらゆー
はじめまして、慧心学園初等部6年C組の湊智花と申します。 実はこのたび、私が入部している『女子ミニバスケットボール部』の活動記録を、ここに載せて頂けることになりましたっ。 たくさんの方が見て下さるような場所で、小学生の私が文章を書くなんてとっても不安ですけど……。 でも、少しでも楽しんで頂けるように頑張って挑戦したいと思いますっ。 それに、日誌の当番は毎週部員のみんなとかわりばんこで交代することになっているので……。 もし、今回が面白くなくても次からは大丈夫だと思います! え、えへへ。 それでは早速はじめますね。 今回は最初なので、慧心女バスの部員紹介をさせて下さいっ。 まずは、自己紹介をしないと……。 私の名前は湊智花で、慧心学園初等部のクラスは6年C組です。 ……あっ、これはもう最初に書いてました! すみませんっ! あとは、身長142センチで、クラスではお花係をやっていて……。 あとは
「アンタも知ってると思うけど、私の恋愛がちっとも進展しないのよ。どうすればいいかな」 「おぉ〜、ずいぶん素直に言ったね」 美琴は唇を尖らせて、 「あれだけ煽っておいてよく言うわ。……どーせアイツが見ているわけじゃないしね」 「そっか、だよね。――同感」 「同感って?」 「なんでもない、こっちの話。えーと、『恋愛を進展させるにはどうすればいいか』だったよね。そうだなぁ――」 桐乃は、何かを思いついたとばかりに手を叩いた。 「人生相談してみるってのはどう?」 「えっ……ど、どういうこと?」 「かみじょ……じゃなくて、美琴さんの好きな人って、困ってる人がいると助けずにはいられないって性分の人じゃん? だから、美琴さんが困ってて、助けを求めれば、大きな接点ができると思うんだ」 「な、なるほど……で、でも、人生相談っていっても……何をどうやって切り出したらいいのか……」 顔を赤らめ、俯いて、もじもじ
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