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GWの過ごし方
delete-all.hatenablog.com
商売における「お客様は神様だ」という考え方は過去のものになった。カスタマーハラスメント等の原因になるからだ。だが、営業という仕事に関しては、客が神という考え方でいい。そもそも契約を締結していただく、商品を買っていただくお客様と対等の関係にあると考えるのは思い上がりだろう。また、営業活動が無駄になるとき、たとえば親身に相談に乗っていたが契約に結びつかないときなどに頭に来る人を見かけるが、それは対等と考えているからだ。だけど、相手が神ならば「まあ神様だからね。人間のことなどわからないよ」と諦めがつくものだ。そういうとらえ方が仕事を続けるうえで有効だ。 僕の仕事は給食会社の新規営業開発。給食事業の特性から、困っている見込み客に解決策を提示できないことが多く、歯がゆい思いをすることも多い。たとえば、欠員が発生して給食が提供できないと困っている施設に対して「明日からは当社が給食をやりますよ」とは言え
ごみ袋やポリ袋などの主原料であるポリエチレン・ナフサが確保されているのかないのかが話題になっている。ナフサが足りているのか、それとも足りていないのか、わからない。そこに見え隠れする駆け引きや思惑にも興味はない。お菓子のパッケージや製品の包装が簡略化されたりモノクロになっても、実用面で支障がなければ問題はないでしょというのが僕の認識。だが、生活や仕事に支障が出れば話は別だ。僕が勤めている給食会社ではナフサを原料とした手袋やラップやビニールといった衛生用品や消耗品が事業継続には必要不可欠だ。ここ数年間値上げが続いている。大量購入も控えるよう要請されている。ナフサの調達状況によって、値上げが加速したら嫌だな、…と恐れていたところにそれらを納品してもらっている各業者からお願いの通知が届いた。具体的な金額を除けば各業者ほぼ同じ内容の文面だった。 各社の共通部分をまとめると《1.昨今の物価高・物流コス
ワイドショーを誤解していた。バカバカしく、くだらないものと決めつけていた。自分の浅はかさが恥ずかしい。僕は給食会社の営業部長で、ときどき人員不足の老人ホームと保育園の厨房にヘルプで入っている。昼食の提供が終わると休憩時間で、休憩室でパートさん達とワイドショーを連日見ている。パートさんたちとの「あらまあ」「やだあ」な雑談に参加するのも大事な仕事だ。共通の話題の源であるワイドショーは無視できない。これほど真剣にワイドショーを視聴したことはない。新鮮な経験だった。そして認識が変わったのである。ワイドショーはくだらないものではなかった。 連日のようにワイドショーで取り上げられている事件があった。京都で起きた痛ましい事件だ(今は部活動遠征バス事故に移行している)。毎日、毎日、これでもかといわんばかりの現場レポート、ご近所インタビュー、元警察官の考察。その日も現地緊急レポートという名目で容疑者の自宅前
母を連れて家族で東京ディズニーシーへ遊びに行った。今回が母と訪れる最後のディズニーと決めていた。ランドではなくシーを選んだのは、開業25周年でお祝いムードだから。「最後だからお祝いしてもらわなきゃ」という母の前向きな言葉に僕は胸が詰まりそうになった。母は80歳を超えている。最近、目に見えて体力が落ちた。今回を最後のディズニーとしたのは、体力面からの判断である。母は、何度も「これで最後なんだね」と名残惜しそうに言った。一か月前。一週間前。前日。当日の車内。現地で。何度も、何度も。僕はそのたびに「そうだよ。最後のディズニーだよ。楽しもうね」と返した。最後という言葉をこれほどの重さを持って使ったことはない。「最後」と口にすればするほど重さが増していくような気がした。誰にでも最後はやってくる。その時が来たのだ。 東京ディズニーランドができた年、子供会のイベントで初めて訪れた。母と弟と一緒だった。ミ
先日、SNSを眺めていたら実業家の人が全裸の女性たちでつくられた人間シャンパンタワーに酒を浴びせて「これが資本主義だ」と叫ぶ動画が流れてきた。当初は生成AIで作成された悪戯動画と思ったが、並び重ねられた平凡な尻の造形にリアルと金の匂いを感じ取って、現実のものと判断した。僕は、その実業家をまったく知らない。動画もバカバカしく、良いのではないかと軽く流していた。真剣に取り合うものではないと考えていたのだ。実業家も撮影者も尻出しガールズも、くだらねーと笑われて終わるものと気楽に考えていたのではないか。 ところが世間様は右から左へ流すことを許さなかった。不謹慎。下品。何が面白いのかわからない。(実業家の)家族や子供が見たら悲しむぞ。そういった「いかがなものか」的な反応が大半であった。人間シャンパンタワーは法律に反していない。プライベートな場で尻を並べてはいけない、何人も許可なく尻にシャンパンをかけ
はてなが振り込み詐欺にあって11億円の資金が流出したと発表した。まず金額の大きさにも驚いたが、振り込み詐欺ってなんなんだよ。インターネット事業をやっている企業が振り込み詐欺に遭うって、なんなんだよ。セキュリティとガバナンスどうなっているんだよ。僕が働いている会社以下じゃないか、まったく。ひとりのユーザーとして2003年からはてなのサービスを使っている。はてなダイアリーからはてなブログへ移行して2007年からログが残っている。はてなブックマークも2005年から使っている。20年以上積み重ねてきた。無くなっても死んだりはしないけれどもなくなったら寂しい。はてなのサービスはそんな存在なのだ。20年以上続けているネットサービスは他にない。今でも毎日使っている。はてなにはそんな僕みたいなユーザーが珍しくない。noteが出てきてブームになったとき、完全に移ろうとしたけれども、やっぱはてなブログだよねっ
給食会社で働いている。会社は中小規模で、厳しい社会情勢のなか、何とか生き残っている感じだ。歴史は古く、創業は半世紀越えだ。顧客の信頼は厚く、五十年契約を継続していただいているお客様もいる。業界では解約率も低い(と思う)。ただ、長い歴史と成功体験に縛られ、組織や判断が硬直化していて、世の中の変化に対応できていない面もある。そこでなのか、偶然なのか、数年前から金融機関から人材を迎え入れて取締役に据えている。出向人事課長が、期が変わった途端に専務。マジで激動だ。 他業界から経営陣に人材を迎えるときに期待するのは、新しい発想や、他業界の成功モデル導入や、人材の多様性等々。つまり空気の入れ替え。新しい風だ。当社のように歴史が長いだけの企業は、体質が古く、変化を嫌うため業務の改革がなかなか進まない。新しいことをしようとすると既得権益のために団結した抵抗勢力があらわれる。そういうものを他業界からのしがら
日高屋が社長発言を謝罪 13日放送番組で「日本人労働者軽視」と受け取れる表現<全文> - 産経ニュース日高屋のトップの発言が「外国人優先」と受け取られて大炎上した。詳細については省くけれども、僕の周辺では、この問題については大手外食チェーンよりも個人経営の飲食店の方がより深刻な問題になっている。外国人すら採用できないのだ。 僕は給食会社の営業部長だ。当社は食品事業も行っている。取引先は個人事業主が多い。個人経営の定食屋、居酒屋、カフェなどだ。そのなかで、とある居酒屋兼定食屋が今月末で廃業することになった。店主は七十歳になったばかりで、体にガタが来ながら頑張ってきたけれども廃業を決めた。売上は落ちていない。値上げもした。利益も出ている。それでも廃業する理由は人材不足で回らなくなったから。よくある話だ。後継者もいない。これまたよくある話だ。 外国人の若い女性が二人、アルバイトとして働いていたけ
僕は、給食会社の営業部長、先月、部下に同行して北関東地方の某市まで赴いた。相手は地元企業をターゲットにしたお弁当屋のオーナーだ。オーナーは中国出身の女性で、弁当事業をはじめたものの、計画通りにいっていないため、日本人向けの日替わり弁当の献立作成とメニュー開発について当社に相談してきたのである。中国語の堪能な部下S山が担当として交渉を進めてきた。交渉が順調なので上司である僕と共に現地に赴いて、現場視察と面談をすることになった。非営業畑のS山はノルマの達成が厳しく、この案件に賭けるものがあるようで、行きの道中から血の気が引いていた。 S山情報によるとオーナーは日本語が上手くないらしい。テクノロジーは言語の壁を越えるのを容易にする。スマホの翻訳機能を使えばいい。しかしS山は「それでは血の通った話が出来ない」と主張して自ら通訳を買って出た。並々ならぬ決意を見せるS山に通訳を任せたものの、僕は「らん
先日、超一流クライアントから給食委託契約(社員食堂)の契約解除を通知された。メールか封書で通知してくれればいいのだが、対面で直接伝えたいと一流の心遣いをしてくださったので一級建築士設計の一流の作りのビルで会うことになった。なお当社上層部は同行を拒否した。嫌な話は聞きたくないそうです。二流だ。 一流ブランドのスーツを着た担当者からあらためて説明を受けた。説明をされても解約は解約である。話を聞いて「そうですか」と肩を落とした。同行した部下は沈痛な表情を浮かべていた。当該部下は一流沈痛マン。沈痛な表情に定評があるので連れてきたのである。重苦しいムードを作り上げてくれる当社の切り札だ。「何とかなりませんか」とあがいてみた。担当者は「解約条項に則った解約です。決定事項です」と冷たく言い放った。隙のない一流の回答。次の業者は決まっていて、すでに裏では動いているという話だった。一流は裏工作も一流だ。「わ
新社会人の皆さん、おめでとうございます。怠惰で長すぎる学生生活を終え、いよいよ社会という舞台に立つ皆さんの姿を想像して、僕自身、新しい仲間を迎える喜びと、玉突きで追い出されるのではないかという不安で胸がいっぱいです。 かつてない人手不足、空前の売り手市場をたいした努力もせずに勝ち抜いた皆さんです。自信と期待に満ち溢れ、不安はないでしょう。思い通りにいかないこと、壁にぶつかることがあっても、皆さんは「ここではないどこかへ行けばいい」と気楽に考え、悩むこともせず、壁に登ろうともしないでしょう。だって他にいくらでも行く場所があるのですから。皆さんはそれくらい恵まれた世代なのです。うらやましいかぎりです。嘘でもいい、一度でもいい、失敗を恐れる姿を見せていただきたいものです。 さて、企業は(特に大手一流企業は)新社会人の皆さんを好待遇で迎えています。なかには初任給が40万円以上という人もいるでしょう
大阪で大規模なノロウイルスの食中毒事案が起きた。 news.yahoo.co.jp 事件の詳細はリンク先その他を確認してもらいたい。被害数百人という規模の大きさと、感染ルートがパンの配送時らしいということで話題になっている。詳細はわからないが、よく特定できたなというのが僕の率直な感想。僕は給食業界で働いている。過去に一度、ノロウイルス食中毒事故の処理に関わったことがある。苦い思い出だ。だからノロウイルスのニュースに触れるたびに当時を思い出してやりきれなくなる。 給食業において感染力の強いノロウイルスは厄介な相手だ。相性は最低だ。なぜかというと給食は大量調理だから。調理・盛付・提供といった各工程を一度に大量かつ集中的に行うため、各工程のどこかに感染者が関わっていたら一気に感染が拡大してしまう可能性がある。今回の事案のパンの配送工程のように。ノロウイルス対策は衛生管理(食品の保管や調理工程の管
僕は給食会社の営業部長、久しぶりの更新になった。現場の欠員を埋めるために奔走していたのだ。昼までは保育園の厨房、午後からは特別養護老人ホームの厨房に入り、その合間に営業部長としての仕事をしていた。ありがたいことに、一連の穴埋めで洗浄業務のスキルが上がったよ……。 パートの穴埋めとして潜入している特別養護老人ホームの給食業務からは撤退する予定だ。すでに相手法人本部に解約を申し入れ済み。委託契約で定めた解約条項に則って五月末で解約、撤退になる。解約の理由は値上げ申請へのゼロ回答である。昨年から、法人側は一貫して難色を示していて最終的には「給食会社はいくらでもいる」というゼロ回答の塩対応だった。それを受けて予定通り解約手続きに入ったのだ。 値上げの理由は明確だ。食単価の値上げは、食材や調味料等の原価アップのためであり、委託管理費の値上げは、昨今の労務費のアップと求人市場の激化のためである。試算で
僕は52歳の営業部長だ。中小企業に勤めている。年齢的に転職も厳しいこともあって、今の会社で会社員生活を終えたいと考えている。そのためには、最低でも退職日まで今勤めている会社を延命させなければならない。そんな極めてプライベートな理由から、営業部門の責任者という立場で会社の業務改善の一環として業務属人化の排除に力を入れてきた。属人化とは、特定の個人に依存した仕事のやり方のこと。特定の個人がいなくなると仕事や業務が回らなくなる、悪のブラックボックスである。当社の営業部門は、業務属人化を排除して、スタッフの入れ替えがあっても、計画通りに目標を達成できるようになった。 だが、最近、属人化排除がはたして正しかったのだろうか、ほどほどの属人化は中小企業の強みそのものなのではないか、と考えるようになった。たとえば職人気質のベテランスタッフの技術、採算が取れるのか怪しい個人裁量で行っている丁寧すぎるアフター
「独身税」こと「子ども・子育て支援金制度」には心から感謝している。4月からの導入が待ちきれないくらいだ。「感謝」のひとことでは伝えきれないので、溢れる思いを今こうして文章にしている。僕は食品会社の営業部長だ。中小企業なので、多くの中小企業と同様、人材に余裕はない。そのため人不足を埋めるために部長の僕も駆り出され、社員食堂、老人ホーム、保育園の厨房でパートのおばちゃんたちから「もっと早くできないの!」「手際が悪い」などとお叱りを受けている。直属の上司への文句とムカつきを、その上の、上の、上の役職にある僕という、上司だが直接関係のない人間にぶつけてストレスを発散しているのである。 急な欠員発生の理由として多いのは「入園入学卒業卒園」「体調不良」「学校で大暴れ」といった子供を理由とするものだ。僕には子供がいないけれども、子育ては大変だと頭では理解しているつもりだ。だから子供を理由とする急な休みに
料理系YouTuber『あおいの給食室in沖縄』神奈川の給食業者がレシピの不正流用をしている可能性…ショックを受け寝たきりに、チャンネルの活動終了も発表 - Togetter 僕は給食会社の営業部長だ。このチャンネルを今回の騒動で初めて知った。だが神奈川の給食会社で働く人間として無視はできないので給食営業マン目線で解説する。なお、問題の会社については、ある程度特定されているが確定ではないため、ここでは名前は挙げない。また、当該給食会社が販売している保育園向け献立の詳細も分からないので、一般論として話を進める。なお、神奈川県の給食会社は僕が勤めている給食会社ではない。 まず前提として、レシピそのものには著作権が認められないとされている。理由は、レシピは「アイデア」に分類され、材料や手順は誰が書いても似た内容になりやすく、創作性が認められにくいから。ただしレシピの文章・説明・写真など表現された
新商品の試作を「夕飯にするから」といって持ち帰ろうとしていた同僚が「夕飯まで仕事かよ」とからかわれているのを見て、昔のことを思い出した。約三十年前、僕が大学生の頃、母が職場から持ち帰ってきてくれた弁当が我が家の夕飯だった。父が亡くなって生活に余裕はなかったけれども「苦しい」「金がない」「お先が真っ暗」みたいなことを僕が言うと母は怒った。それが現実のど真ん中を撃ちぬく言葉であっても、「声に出したら言霊になって抜け出せなくなる」が母の理屈だった。お金や努力といった目に見えるものしか信じない、オカルトとは一千万光年くらい離れたところにいる人が言霊を持ち出すなんて……それくらい余裕がなかったのだ。 母が職場から持って帰ってくる弁当は、ハンバーグ弁当、唐揚げ弁当、とんかつ弁当といったカロリーオーバー気味の普通の(?)弁当ではなかった。母は葬儀屋で働いていた。そこではお通夜振舞いとして弁当が出されてい
僕は食品会社の営業部長。昨年から営業の業務にAI(生成AI)を導入して、効率化とコスト削減をすすめている。まず、初期の企画提案書に添付するイメージやパースを業者からAIに切り替えた。理由は、中小企業なのでビジネスになるかどうかわからないものにコストをかける余裕がないため、それから、一件当たりにかける労力を下げて多くの案件にエントリーするためだ。これまでは業者に依頼していたけれどもコストとスピードの点で不満があったのだ。ただ、正式な企画提案書には精密な図面やイメージ図が必要になるため、そこでは業者の力がまだまだ必要だ。つまりAIを使うところと使わないところを分けて仕事をしている。AIで作成したもののクオリティーについては、そこそこ、及第点といったところ。初期段階のイメージ図なら許せるというレベル。ちょっと著作権的に危ない感じもするので使用には注意が必要ではある。 先日、部下が作成した企画案に
僕は食品会社の営業部長だ。3月である。年度末である。気分が沈む。というのもこの時期はノルマ未達見込みの部下が作り上げた出来の悪い言い訳を聞かされるという苦行が待っているからである。彼らは先行きの見えない社会を呪い、己の不運を嘆く。「仕事にやりがいがない」「モチベーションが上がらない」と真顔で言う。彼らは、失敗の理由がわかっていながら、言い訳をする。聞くだけ無駄だ。やりがいはない。でも仕事だから真顔で聞く。ひととおり話を聞き、アドバイスしたあとで「やりがいは仕事に必要かな?」と質問する。彼らから、やりがいは不可欠ではないけれどあった方がいい、という答えが返ってくる。そんな彼らに僕が出来ることは「仕事は生活のためにやるものだよ」と言うことくらいしかない。 仕事についての考え方は人それぞれである。だがそれでも僕は仕事は生活のためにやるものであり、それ以上でもそれ以下でもないと考えている。生活はや
僕は食品会社の営業部長だ。先日の会議で、会社上層部に「なぜ業界のことを知ろうとしないのですか?」と質問をした。彼らは金融機関からの出向でやってきて、取締役におさまった。そして、十年もその立場にあって業界の知識とコネがゼロで、的外れなことばかりしている。先日も受託している社員食堂の販売価格を、委託契約を無視して上げようとして先方とトラブルになりかけた。「牛丼屋だって自由に価格に決めている」が言い分であった。外食産業と給食事業の区別がついていないのだ。質問に対する専務(上層部トップ)の回答が想定外だった。「あえて学ばないようにしている」と彼は言い切ったのだ。「君たちは業界の知識常識に縛られているが、私たちはフラットな視点で見ることができる。なぜかわかるかね営業部長」。わからない。わかりたくもない。「我々はプロの経営者だからだ」と彼は付け加えた。プロ経営者があらわれた! プロ経営者と聞いてフラッ
三連休の初日に大学時代の友人Aと後輩Bに会った。三人で会うのは2004年以来になる。物理的距離的体力的な問題の同時多発的な発生により、ずっと会うことが出来なかった。友人Aが2010年の冬に体調を崩してどうにもならなくなり東京から故郷の青森に帰省し、新聞社に勤めていた後輩Bはすでに九州へ異動していたため、三人で会うにも会えなかったのだ。おっさん三人には若いカップルのような遠距離を埋めるほどの愛の力はなかった。昨年、後輩Bが長年の激務が祟って体調を崩して仕事を辞め、地元の栃木に帰ってきた。そして、10数年かけて生活の安定した友人Aが青森から夜行バスで上京することになり、後輩Bも合流して上野で会うことになったのである。 上野恩賜公園のカエル噴水で待ち合わせした友人Aは元気そうだった。16年経って僕らは52歳のおじさんになっていた。青森へ帰るとき、死人みたいな青白い顔をしていたので、顔をあわせるな
僕は52歳の就職氷河期世代で、中小企業で営業部長として働き、家族は妻とサボテン、こづかいは月額19000円である。先日、衆議院選挙が終わった。ここ1年超で実施された三回の国政選挙で就職氷河期世代は完全に見捨てられたと実感する。国政選挙が始まる前は、氷河期世代は属する人数が多いからだろうけど、その救済策が話題に登るけれども、選挙がはじまるとトーンダウンし、選挙後にはほとんど触れられない。このお決まりのパターンを繰り返している。施策は行われているけれども、救済が必要な人がまだいるので十分とはいえないし、それ以前に、世代の上の方の年齢が50代半ばに達したので時間切れだ。 もちろん、氷河期世代全員が負けたわけでもない。ほとんどの人は粘り強く戦って生き抜いている。優秀な人間もたくさんいる。僕の観測範囲、僕の周辺では、なんらかの公的な保護が必要なほど困窮している人間はいない。僕も何とかここまで生き残っ
僕は食品会社の営業部長だ。営業部ってのは、毎日どこかで誰かが燃えてる場所だ。もちろん実際に火がついてるわけじゃないけど、精神的にはしょっちゅう火事。僕はその真ん中で部長なんて肩書きをぶら下げて立っている。肩書きは重いが、実際に重いのは肩そのものだ。四十肩あらため五十肩、可動域は四十年前のロボットのプラモデル級だ。 ある日の午後、部下がやってきて、ちょっとご相談があります、と言った。表情は若々しい。こういう場合のちょっとがちょっとであった試しがない。それに、相談という言葉は、どうして人間の脳みそをざわつかせるのだろう。 相談はとある顧客への見積提出だった。僕は部下のクソ長い説明に耐えた。案件の難易度、部下の気持ちの湿度、過去のいきさつ、それらを何の処理もせず、まとめて机の上にドサッと置いていかれた感じだ。期限は明日の午前で、なんとか決裁をいただいて持参しなければならないと部下は言う。 どうし
僕は食品会社の営業部長。新規開発営業が本業だが、都合よく会社に使われ、給食事業の既存顧客との価格交渉も任されている。最近は価格協議が多い。昨今の原材料および人件費高騰を反映した委託費や販売価格を勝ち取るのだ。これだけの物価高、人件費高でも全ての顧客が価格改定に応じてくれるわけではない。たとえば、某神奈川に本社を置く自動車メーカーの部品を作っている企業のような経営の先行きが見通せないところなどは、価格交渉は難航している。仕方がない。 話が出来ればいいほうだ。まったく聞いてくれないところもある。値上げを求めるだけで協議せず、即コンペになったり、解約をほのめかされて脅されたりしたことは何度もある。下請けきっつー、と嘆いていたら、下請けではなくなっていた。https://www.gov-online.go.jp/article/202511/entry-9983.html どういうわけかというと今
そのカラオケボックスは、いつ来ても“人生の残りカス”みたいな匂いがする。壁の吸音材は、歌声よりも後悔と怨念を吸いこんでいるのだろう。それらと時間を混ぜるとクソみたいな匂いを放つのだ。クソみたいな匂いのする部屋で歌うという行為は、人生のどこかで落としたネジを探す儀式みたいなものだ。そんな場所の真ん中に、義父が座っている。 義父は七十代。箱職人で、木と紙と、昭和と平成の湿気でできている。そして、酒が一滴も飲めない。「飲めるけどな」と義父は強がるが、ほとんど酒が飲めない老人は、ブコウスキーの小説に出てきたら、たぶん一行で退場させられる。義父は人生の苦味をどうやって流してきたのだろう。ビール吸引機のごとく、がぶがぶ飲んでいる僕には理解できない。義父からカラオケに誘われた。嫌な予感がした。これは歌うためじゃない。義父の心の中につもった“おが屑”を掃除する時間なのだと。 僕はウーロンハイを頼み、義父は
1994年、冬、僕は東京にある私立大学の法学部の3年生で、刑事訴訟法ゼミに所属していた。そのゼミは面接だけで入れたが、なぜか人気がなかった。不人気の理由は入ってから知った。四年生に上がるときの条件が厳しく、三年末でクビが続出していたのだ。生存率30〜40パーセント。ゼミに入っていないと就職で不利になるのだ。「彼女」はゼミ同期で唯一の女の子だった。よく笑うチャーミングガールで、優秀だった。課題をこなすだけで精一杯な僕とはちがって、進んで教授に質問したり、教授室に押しかけたりしていた。僕とは違う世界の住人だった。ゼミ以外で顔を合わせても、挨拶をするくらいの関係。 ある冬の日、休講をいいことに学食で友達と馬鹿話をしている僕のもとに彼女は現れた。「ちょっと付き合ってくれない?」と彼女は言った。あなたは逃げられないのよ、と告げるような凄みが彼女の言葉にはあった。まるで起訴されたら100%有罪になる刑
横浜の街中で、偶然、「彼」と会った。彼は、かつての上司だ。二十数年ぶりの再会。四十代だった彼は「定年退職して、今は毎日サンデーだよ」と笑った。薄くなった頭髪。シワとシミが目立つ顔面。それでもあの頃そのままの変わらない笑顔に、僕は胸がいっぱいになった。何かが胸の奥からこみ上げてきた。感謝の気持ちを伝えたかったけれど、こんなとき僕はいつも言葉が出てこない。適切な言葉を探しているうちに、タイミングを失ってしまう。そんな僕を置いてきぼりにして、彼は近況や当時の仲間たちの噂話をすると、こう言った。「私を部下にしてみないか?今の君に私が使えるか?」 三十年前(1990年代後半)、二十代の僕は今とは異なる業界で営業として働いていた。昭和のモーレツな働き方が色濃く残り、各種ハラスメントは当たり前の環境。営業部門は特にそういった傾向が強く残っていた。厳しかった。先輩たちの指導は容赦ないものだった。同僚との競
僕は食品会社の営業部長だ。ウチの会社の給食事業において、とあるクライアントと昨年夏から年末までの値上げ交渉をおこなっていたが不調に終わってしまった。その原因はクライアント(顧客)、カスタマー(利用者)、につづく第三の客、労働組合。労働組合が取引において大きな存在感を示すのは給食業では普通だが、一般的には知られていないようだ。案件は、とある企業の社員食堂で、ウチの会社は長年契約を継続していただいている。昨今の食材高騰と人件費の確保のために、価格アップをお願いしていた。数か月にわたって、クライアントの担当者と慎重に協議を重ねてきて、ほぼ合意まで至ったけれども、残念ながら最後の最後で労働組合によってひっくり返されたのである。 社員食堂は福利厚生施設だ。毎日利用する人もいるように、従業員の生活に密接に関わっているという点が、レストランや食堂と異なる。もう一点異なるのは、社員食堂がクライアントから施
僕は団塊ジュニアで就職氷河期世代の一人だ。大学新卒時の就職率は確か6割ちょっとで、底ではなかったとはいえ厳しく、僕のような平凡な法学部生は、夢や希望を目指すよりまず、就職することが現実的な目標だった。企業には門前払いされまくった。だから、当時まともに相手にしてくれなかった某社が先日、新卒を確保するために初任給を大幅にあげて人事担当が「学生たちに気持ちよく働いてもらいたい」と言っているのをみて、「入社3日で退職者続出しろー!」と呪詛を唱えずにはいられなかった。 昨年の選挙の際、一瞬、氷河期世代救済が話題(争点)になりかけた。「選挙のネタにするなよ」と思ったが、一転して今回の衆議院選挙では話題になっていない。それはそれでどうなのか。各政党のサイトに氷河期世代救済策的なものが掲載されているものの、柱ではない。ネタにならなくなったのだろう。氷河期世代支援策は、それが十分なものかはさておき、すでにい
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