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近年の政治環境で最も奇妙な点の1つは、はっきりとリベラルの伝統に基づいた価値観を奉じながら、そうした価値観を促進するために、明らかに反自由主義的と言いたくなるような戦略をとる人が非常に多いことだ。ソーシャル・メディアからファシストを追放したがっている「反自由主義的な進歩派の若者(YIP:young, illiberal progressives)」が、現代の共和党員のほとんどを「文字通りの意味でのファシスト」と見なしているという話は今やおなじみである。 こうした若い活動家が、自身の表明している価値観と自身のとる政治手法との間にある明白な矛盾に無頓着なことに、関わった人なら誰でも気づくだろう。傷つけられやすい多様なマイノリティを守るという大義を掲げながら、自分たちに同意しない人をキャンセルしたり罰そうとしたりするイジメのような戦術を用いることには驚くほど躊躇がない。戦術的なレベルに絞って考え
今夜の大統領選討論会では、両候補は自分たちが提案する財政赤字によって誰が利益を得るのかを説明すべきだ。 本(10)日午後9時(米国東部時間)、ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領が、11月の選挙前最初の(そしておそらく唯一の)討論会で対決する。討論のモデレーター(司会者)を務めるのはABCニュースのキャスターで、候補者たちに国内政策と外交政策の重要課題について幅広く質問に答えるよう迫る。また、ほぼ間違いなく、政府の赤字(government deficits)と(いわゆる)国家債務に対処するためのプランを明確に示すよう両候補者に求めるだろう。 ドナルド・トランプは大統領時代、政府の赤字について多くを語らなかった。彼が「赤字」(deficit)という言葉を使ったのは、一般教書演説でアメリカの貿易赤字(trade deficit)に言及したときと、インフラ整備の赤字(infrastruc
一般的に為替レートの標準的なマクロ経済モデルは、実際のデータにうまく適合しないと考えられている(例えば、Meese and Rogoff 1983, Cheung, et al. 2005, Itskhoki and Mukhin 2021)。しかし、21世紀のアメリカドルについては、こうしたモデルが非常によく適合していることがわかった。実質金利、アメリカと海外の期待インフレ率、総合的貿易収支、グローバルリスク、流動性需要を指標とする「標準」モデルは、アメリカとその他G10諸国の通貨との為替レートの実データによって十分に裏付けられる。「通貨変数」(実質金利と期待インフレ率)と、「非通貨変数」は、為替レートの動きを説明する上で、同様に重要な役割を果たしている。1970年代から1990年代初頭にかけては、モデルの適合性は低かったか、現在にかけてモデルのパフォーマンスは着実に改善している。改善に
旧東ドイツのテューリンゲン州とザクセン州の地方選挙で右傾化が進むことは、以前から予測されていたことだ。これは、旧東ドイツと旧西ドイツの間での格差が拡大していることを裏付けるものであり、すでに今年の夏の欧州議会選挙で露骨なまでに顕になっている。 出典:エコノミスト誌 ドイツで9月1日に行われた州議会選挙で、テューリンゲン州、ザクセン州での投票率は74%近くに達した。これは、旧東ドイツの有権者が既存政党に不満を持っているとしても、民主主義を見限っていないことを示している。 テューリンゲン州では、急進右派のビョルン・ヘッケ率いるAfD(ドイツのための選択肢)が、他の政党を大きく引き離して第一党となった。この記事を執筆している段階では、AfDが、非AfD連立政権の組閣を阻止できるだけの33%までの議席を獲得するかは予断を許さない状況だ。 ザクセン州では、〔中道右派政党〕キリスト教民主同盟(CDU)
このまとめ記事のシリーズ23回目で,中華人民共和国に批判的な言論を TikTok が抑圧しているのを示すとてもしっかりした証拠に触れておいた: ネットワーク伝播研究所 (NCRI) による新研究で,[中国がプロパガンダ目的に TikTok を利用しているという事態は]すでに起きており,しかも非常に実質のあるかたちでなされていることが裏付けられた.Instagram と TikTok に投稿されたショート動画のハッシュタグを比較することで,どの話題を TikTok のアルゴリズムが押し上げたり抑圧したりしているのかを把握できる(…).一般的な政治的話題(BLM,トランプ,中絶など)に関わるハッシュタグは Instagram に比べて 約 38% の人気を TikTok では得ている.ところが,中国共産党にとって差し障りのある話題の――たとえば天安門事件,香港の抗議運動,一斉検挙などの――ハッ
グリーンエネルギーは安価なエネルギーでもあるって話を,ここではたくさん書いている.太陽光発電とバッテリーによって,地球を煮えたぎらせずに産業文明を維持できるようになるばかりか,石油時代がはじまっていらい初めてエネルギーテクノロジーが根本から改善される.ずっと停滞が続いてきた一人あたりエネルギー使用量も増加してほしいところだ.実のところ,エネルギーは「安上がりすぎてメーターで測るまでもない」ほどになりはしないだろう――人々がエネルギーの新しい使い途をあれこれと見つけていって,需要も伸びるだろうからね.でも,エネルギーはいまよりも潤沢になるはずだ. 「でも,だからどうだっての? 誰がもっとエネルギーを必要としてるって? 豊かな国々に暮らす人たちは,もう住居を明るく照らすのも車で通勤するのもコンピュータを動かすのも冷蔵庫を稼働させておくのも,みんなまかなえてるじゃん.エネルギーにいっそう安上がり
正直に白状すると,はじめて上記の画像を見たときには,「なにかのでっち上げ画像だろうか」と思った. 天を突く高層ビル,太陽光発電所,コンテナ船,洋上の石油採掘施設――生成 AI で出力した都市・地方集住地の理想像で,集中管理された豊かな都市国家が描かれている.シンガポールかアブダビのような様相を見せるこの図像には,しかし,具体的にどことわかる見知った感覚はあまりわいてこない. だが,これはインチキ画像ではなかった.これは,2035年のガザ地区の図像だ.イスラエルのネタニヤフ首相官邸がこれを構想した.そう,10月7日のハマスによる攻撃への報復として暴虐な戦争をすでに8ヶ月も続けている,あのネタニヤフ首相の官邸だ.数百万人もの強制退去と 35,000人以上のパレスチナ人殺戮で一掃された土地,イスラエル国防軍によってガレキの山と飢餓の地域にされた人口の密集する都市空間に,ネタニヤフのもとで働くプラ
アメリカ合衆国の選挙に影響を与える実質的な争点はそう多くないが、その中でトップが移民問題だ。「国境の危機」は選挙での主要なテーマとなっている。これは、合衆国の国境沿いで国境警備員と移民との軋轢が劇的に増加している事実の反映でもある。2023年12月19日の1日間だけで、過去最多の12,000人の移民が許可なく合衆国・メキシコ国境に到着している。 2003年、合衆国・メキシコ国境間での移民数は過去最多を記録した 出典:ピュー研究所 2024年の世界移民報告書でも確認されているように、合衆国・メキシコ国境は、国家をまたいで移民が移動する単一回廊としては世界最大だ。 国家間の移民回廊 合衆国内では、「国境」は危険地帯として語られるのが一般的だ。混乱と苦難が現実化している、と。しかし、人の移動を比較している『世界移民報告』によるなら、ヨーロッパへの移住ルートのほうが、合衆国への移住ルートよりも死を
その昔,まだ私が学部生だった冷戦末期に,政治哲学で最高に熱い事態が起きていた.それは,英語圏でのマルクス主義の力強い再興だ.その仕事の大半は,「分析マルクス主義」という旗の下で進められていた(別名「たわごと無用のマルクス主義」ともいう).その発端となったのは,ジェラルド・コーエン『カール・マルクスの歴史理論:その擁護』の出版だ(あと,同書出版後にコーエンがオックスフォード社会政治哲学のチェリ講座教授に就任したこと).一方,ドイツでは,ユルゲン・ハーバマースの素晴らしく小さくまとまった『後期資本主義における正統化の問題』が出て〔1975年〕,マルクスによる資本制のさまざまな危機の分析を現代のシステム理論の言語に翻案して新たな息吹を吹き込む期待が高まった.若い急進主義者にとっては,実に熱い時代だった.誇張抜きに,こう言ってもいい――当時,政治哲学に携わっていたきわめて聡明でとりわけ重要だった人
ブラッド・デロングがマルクス主義の痛烈かつ正確な批判を書いている〔※リンク切れの模様〕.そのうえで,マルクス主義の教説で妥当な部分を誰か5つ挙げてみないかと問いかけている.このぼく以上の適任者っているかな? いま,〔マルクス主義の〕あらゆる主張を現代の文脈で現代の分析用語に翻訳する作業にとりくんでいる真っ最中だ.ぼくらの知るマルクスは,そんなにたくさん書かなかった.それに,そう,彼のアイディアの多くは,〔アダム・〕スミスその他に見いだせる. #1. 資本主義システムでは――とくに現代〔の先進国のような経済〕にいたる前は――小規模の生産にくらべて,おうおうにして自律性が低くなる.工業化以降,生活水準は向上していく.でも,メキシコの田舎に暮らす友人たちの多くを見てみると,工場に務めた方がいくぶん高い賃金を稼げそうだけれど,それでも自宅で陶器に絵付けする方を選んでいる.その方が,時間の使い方をず
なぜカナダの警察は法を執行しないのだろう? この素朴な疑問は、2022年初頭、フリーダム・コンボイ [1] … Continue reading の危機の際に湧き上がったが、10月7日のハマスによるイスラエルの攻撃と、それに続くイスラエルによるガザ地区への軍事侵攻を受けてカナダ世論の混乱が高まる中、この数週間で再び持ち上がった。ハマスとイスラエルとの紛争を受けて、カナダ市民の多くが街頭やその他公共の場で、集会・表現の自由を合法的に行使して、ハマスかイスラエルのどちらかの一方を支援している。 しかし、こうした集会や表現の多くは、ハラスメント、脅迫、ヘイトスピーチ、暴力の扇動といった形をとっており、一線を超えて犯罪行為となっているようにも見受けられる。最近話題なった事件だと、日曜日にトロントのイートン・センター・ショッピングモールで行われたパレスチナを支持する抗議活動だ。大人数(その多くは覆面
政治的な党派は,それぞれに,自分たちが優位に立てる論点を必要としてる.バイデンのもとで雇用市場は信じられないほどの堅調が続いているので,各種の右派は自分たちに「ちがうちがう,ホントは物事は酷いことになってるんだ」と言い聞かせるための理由を必要としている.そういうお得意の論点のひとつが,これだ――「雇用はみんな外国人にもっていかれているし,アメリカ人は移民に取って代わられている.」 ひどく誤解を招くグラフについては,つねづねみんなに注意喚起してる.上のグラフも,まさにそういうやつだ.このグラフは,以前の記事で誤りを論じてきた.左右に別々の軸を使うことで,アメリカ生まれの人たちの雇用の減少が,外国生まれの人たちの雇用の増加よりもずっとずっと小さいってことが見えなくなってしまっている.というか,アメリカ生まれの人たちの雇用がわずかに減少しているのすら,ひとえに,ベビーブーマー世代の大量退職による
ウクライナ政府によるロシアへの越境侵攻はプーチンのメンツを潰した、との指摘がある。この侵攻は、ウクライナが敗戦の危機に瀕していることについての西側諸国への警鐘でもある。 ウクライナのクルスク侵攻の真意とは? ウクライナ地上部隊が国境を超えてロシアに奇襲侵攻してから2週間が経過した。その間に、ウクライナはロシア領を1,000平方キロメートル奪った。ウクライナ軍は、ロシア兵を数千人殺害し、数百人以上を捕虜とし、装備を大量に破壊し、週末にはセイム川にかかる橋を2本破壊し、さらに別の橋を破損させ、ロシア軍を孤立させ、補給と増援を遮断した。 しかし、これだけ成功を収めているにもかかわらず、ウクライナがこの侵攻で何を達成しようとしているのかについては、誰も(アメリカもイギリスもドイツも、そしてむろんロシアも)あまり理解できていないようだ。 この戦争で、ロシア領土が敵対勢力に占領されたのは今回が初めてで
昨年末に,日本の半導体産業への関心がとても盛り上がっていた.伝統的に日本はとても強かったけれど,半導体生産の大半は台湾と韓国にとられてしまった.それでも,日本はいまも才能ある人々の宝庫だし,とてもすぐれた半導体生産ツールや部品をつくっている企業はいまもたくさんある.これに加えて,このところの円安もあり(円安によって日本国内に半導体工場を建設するのも海外に日本製の半導体を売るのも容易になる),また,工場建設の規制障壁が比較的に少ないこと,低賃金,気前のいい政府の支援などが合わさって,日本は半導体産業の未来を築くのに完璧な場所に思える. 半導体部門で日本がとても強みをもっていることを裏打ちするかのように,とある日本の大学が,半導体生産技術の大きな躍進になるかもしれないものをつくった.現在,最先端の半導体製造には極端紫外線リソグラフィ (EUV) の機械が必要で,これはオランダ企業 ASML だ
Prashant Garg & Thiemo Fetzer の愉快な共著論文が新しく出てきた.主題は,Twitter で投稿してる学者たちについて.著者の Garg が研究結果を要約してる連続ツイートをこちらで読める.一般に,学者たちは読者が予想してるとおりの人たちだ――世間一般の人たちに比べると,より合理的で,それほど回りにとって厄介な人じゃなくて,それほど自己中心的でなく,社会主義寄りで,文化面ではより自由尊重で,気候変動についての懸念が強い: Source: Garg & Fetzer (2024) でも,それは他のいろんな国々の人たちもふくめた学者全般の話だ.アメリカの学者たちは,ヨソの学者たちとはちょっとばかりちがってる.アメリカの学者たちは有意に自己中心的で厄介で感情的な度合いが高い: Source: Garg & Fetzer (2024) どうしてアメリカの学者たちの方がひ
効率的な環境保護活動に罪悪感を感じるのはなぜだろう? 私の作ったグラフは、環境保護についてのポスターに使われるかもしれないが、私自身は環境保護活動のポスターガールには絶対にならない。 私が食事を作っているのを見れば、環境破壊しているようにしか見えないだろう。ほぼ電子レンジしか使わない。調理にはほとんど時間をかけない。調理に10分以上かかる食事は〔環境保護の観点からは〕食べる価値はない。私はほぼパッケージ化されたものを食べている。アンゴラ産アボガド、メキシコ産バナナなどだ。地元で作られた食材はほとんどない。地元産かどうかについて気にして、ラベルをチェックする必要もない。 これは「持続可能」と思われている行為と正反対だ。我々の脳裏にある「環境に優しい食事」のイメージは、地元の市場からの仕入れ、有害な化学物質を使わない有機(オーガニック)農場での生産、プラスティック梱包よりも紙バッグでの持ち帰り
「ブラックフライデーの略史」より(Boing Boing 経由で知った記事)。 1939年に、全国織物小売業協会がフランクリン・ルーズベルト大統領に向けて警告を発した。11月の最終木曜日に感謝祭を祝ってから休暇シーズンに突入するという例年通りの流れだと、小売の売り上げは散々な結果に終わるだろうというのである。因習打破主義者をもって自任していたルーズベルト大統領は、この警告に対してシンプルな解決策を思い付いた。感謝祭を(11月の第5木曜日から第4木曜日へと)一週間前倒ししようと決めたのである。 ルーズベルト大統領がそのことを国民に伝えたのは、10月の後半になってからだった。大半の国民は、その頃にはもう既に休暇旅行の計画を練り終えていたこともあって、反抗した。例年通りに11月の最終木曜日(第5木曜日)に「本物」の感謝祭(サンクスギビング)を祝う一方で、「偽」の祝日(11月の第4木曜日)を嘲り(
(第一次?)トランプ政権が中盤にさしかかった頃、私はちょっとした啓示を受けた。それまでは、共和党の大統領が賛成できないようなことを言うたびに、私はそうした大統領を選んだ共和党支持者に責任を負わせていた。しかしある時点から、民主党支持者からあらゆる言い訳を聞き続けるのにうんざりするようになった。我々(ここでの「我々」というのは「アメリカ以外の世界の人」という意味だ)はアメリカのリベラル派にもっと多くの責任を負わせるべきだ、と思い始めるようになった。アメリカのリベラル派は、信じられないほど政治が下手で、その無能さが我々にトランプを押し付けたのだ。 これに気づいたのは、アメリカのリベラル派学者の話を聴いていたときだった。その学者は、余談としてトランプがいかに酷いかについて話し、最後に「アメリカ国民を代表して」謝罪した。その学者はトランプの当選に個人的な責任を感じているように感じなかったことから、
ここ数日、金融市場での目を見張るような動きが世界中で(アメリカ、日本、新興国市場の間で跳ね回って)波及している。 一連の劇的な動きはすでに先週から始まっている。これは、広大な世界金融の強固な基盤とされているアメリカの国債市場が動いたことだ。アメリカの恐怖指数(VIX)は、コロナショックの2020年と〔リーマンショックの〕2008年の水準まで急上昇した! 恐怖指数(VIX)は現時点で65で、金曜日の終値の23から上昇している。この数値が維持されれば、1日の上昇率としては史上最大となり、終値としては過去最高の部類の一つとなる。インプライド・ボラティリティ [1]訳注:オプション取引での将来ボラティリティの予測値 が今回と同水準になったのは、2008年10月・11月と、2020年3月だ。 これは大げさに見えるかもしれないが、潜んでいる不確実性の水準を如実に示している。そして、月曜の日本市場の衝撃
3週間前の記事で,デンバーで行われたベーシックインカム・プロジェクトから得られた少々がっかりな研究結果に注目しておいた〔日本語版〕.さて,今度は,イリノイ北部とテキサス中部で実施されたはるかに巨大で長期的なベーシックインカムの無作為化対照実験の研究結果が出てきた.Vivalt et al. の論文から,主な研究結果の要旨を引用しておこう: 本研究では,所得の変化が原因となって人々の雇用に関わる多種多様な項目に生じた影響を検討する.そのための実験として,低所得の個人から無作為に対象者を1,000名選出し,無条件に1ヶ月あたり 1,000ドルの現金給付を3年間続けた.また,対照群として,2,000名の参加者を選出し,1ヶ月に 50ドルの給付を続けた.本研究では,詳細な調査データ・行政記録・専用スマホアプリからのデータを収集した.現金給付によって,対照群に比べて給付を除外した個人所得の総額は 1
2010年代屈指の新アイディアのひとつは,こういうものだった――「無条件の現金給付は,福祉のすぐれた形態だ.」 基本的に,みんなに小切手を送って,本人にそのお金でなにをするか決めてもらう方が,アメリカで通例となっているいろんな就労要件やら対象を限定した補助金のややこしい方式よりも好ましい. このアイディアのとびきり極端なかたちが,《最低所得保障》(Universal Basic Income) だ.略して UBI と呼ぶ.本式の UBI は政治的に実現する見込みがない. とてつもない 政府支出が必要になるからだ.それでも,多くの人たちがこのアイディアのもっと穏当なバージョンに興味を抱いている――たとえば,1ヶ月あたり1000ドルを全員に渡すといったアイディアがそれだ.なかには,これを現実世界で検証している人たちもいる――その一例が,「デンバー最低所得保障プロジェクト」だ.同プロジェクトでは
「エアコンの温度に対する性差」について取り上げている記事がまたもや目に留まった。 北アメリカのオフィスでは、冷房の設定温度が女性からすると低すぎるというのだ。女性社員はデスクで震えているが、男性社員はへっちゃらだというのだ。 環境へも深刻な影響を及ぼしている。冷房の設定温度が低すぎて耐えられないほど寒いので、7月だというのに小型ヒーターをつけている女性社員がいるのだ。エネルギーが無駄遣いされているのだ。 エアコンが使用されている室内の温度に対して性差(男女で感じ方に違い)が生まれるのは、なぜなのか? 服装――女性は、夏場にライトコットンのワンピースを着がち――だったり、女性の基礎代謝の低さ――女性は、男性と比べると、エネルギーの燃焼速度が遅いため、同じ温度でも寒く感じる――だったりに原因が求められがちだ。ビルの空調システムの設計も一因になっている――設定温度を高くすると、効率が悪くなる仕組
2021年に開催された東京オリンピックで金メダリストに支給された報奨金の額が一番高かったのは、香港(およそ77万ドル/1億1000万円超)。二位は、シンガポール(およそ74万ドル)。三位は、台湾(72万ドル)。ちなみに、現在(2024年度)開催中のパリオリンピックに関しては、一位は変わらず香港(76万8000ドル)。二位は、イスラエル(27万5000ドル)。三位は、セルビア(21万8000ドル)。日本の場合は、金メダリストに500万円(1ドル=150円で計算すると、およそ3万3000ドル)が報奨金として支給される。
我々X世代が、MTV世代から古き良き共和党(GOP)世代になった真相は、身売りしたのではなく、ノスタルジアの容赦のない力だ。 〔訳注:「X世代」は、「ジェネレーションX」とも呼ばれ、1965年から1970年代生まれの世代を指す言葉(現在2024年で40代後半から50代後半に当たる)。ベビーブーマー(団塊の世代)の次の世代であり、先進国の戦後復興的な基礎価値観から逸脱したような思想を示した世代と一般的に見なされている。イーロン・マスクやフロリダ州知事ロン・デサンティスが世代を代表する人物として語られることもある。日本での「新人類」と呼ばれた世代と並べて語られることもある。〕 ドナルド・トランプが次のアメリカ大統領になる可能性は極めて高い。同様に、カナダ保守党の党首であるピエール・ポワリエーヴルが次の首相になる可能性も高い。これらが実現すれば、X世代はついに念願の反動保守政府を手にしたことにな
第二次世界大戦後の日本で起きた「成長の奇跡」はよく知られているが、あれは実は二回目の奇跡だった。一回目の奇跡は、さらに輪をかけて奇跡的な出来事だった。時は、明治維新で揺れていた19世紀の終わり。日本は、農業国から工業大国へとほぼ一夜のうちに変貌したのだ。 経済面・社会面での変化に対する抵抗が何世紀にもわたって続いた後に、日本経済は15年足らずのうちに大きく変貌した。未加工の一次産品の輸出に特化した比較的貧しくて農業主体の経済から、工業製品の輸出に特化した経済へと。 日本経済の変貌を支えた要因は何だったのか? ユハース(Réka Juhász)&坂部(Shogo Sakabe)&ワインスタイン(David Weinstein)の三人の注目すべき共著論文によると、技術知識を日本語に翻訳して体系化する(文書にまとめる)ための並々ならぬ努力が鍵となる役割を果たしたという。国家主導の翻訳事業のおかげ
どうみてもトランプ有利に潮目は変わってる。バイデンのヘマと、トランプの暗殺未遂で加速して、公となった。でもその前から進んでいたんだ。これについてのはっきりした兆候を一つだけ上げるなら、MSNBCが朝の政治番組モーニング・ジョーで〔トランプ暗殺未遂事件の直後に出演者が〕トランプについて悪しざまなことを言うかもしれないことを恐れて、番組の放映を中止したことだろう。 別の言い方をするなら、トランプはすごいヨロヨロだったんだ。選挙に負けた大統領で、いろいろ起訴されていて、マジで有罪評決まで受けてる。ところがどっこい、今や選挙でどうみても本命になってる。ざっぱに言うなら、なぜこうなっちゃったのさ? 「潮目が変わったのはなんでだと思う?」と聞いて、その回答を知性、洞察力、知的誠実さで採点するのは良いリトマス試験紙だと僕は思っている。 「トランプが人気なのは、人種差別主義者だから」みたいに言ってる人をよ
ドル紙幣について誰もが知っておくべき基本的な事実がいくつかある。 市中に流通しているドル紙幣の大半は、100ドル紙幣。 市中に流通するドル紙幣のうちで100ドル紙幣が占める割合は、上昇傾向にある。 大半のドル紙幣――とりわけ、100ドル紙幣――は、海外で流通している。 ジョー・クラヴァン・マッギンティー(Jo Craven McGinty)がウォール・ストリート・ジャーナル紙の記事(2018年7月6日付)で報じているところによると、そうらしいのだ。記事の一部を引用しておこう。 連銀(Fed)が公表している情報によると、昨年(2017年)の終わりの時点で市中に流通していたドル紙幣の総額は1兆6000億ドルで、そのうちの1兆3000億ドル――全体の80%――が100ドル紙幣だったという [1] … Continue reading。1997年の終わりの時点ではどうだったかというと、市中に流通し
ポール・クルーグマンによると、サンベルトが発展したのはエアコンのおかげらしい。 (アメリカ南部および南西部の温暖な気候の)サンベルトの発展は、エアコンの登場が契機になっていると概ね(おおむね)理解することができる。エアコンのおかげで、湿気が多くて蒸し暑い夏もしのげるようになり、冬場でも暖かいこの地域の魅力が増したのだ。とは言え、ゆっくりとした緩慢な変化だった。立地の決定には、慣性がかなり働くからだ。 こちらの記事でも同様の考えが述べられている。 1960年頃に人口動態の面で転換点が訪れている。南部の人口が総人口に占める割合は一貫して下落し続けていたが、1960年頃から一貫して上昇する方向に転じているのだ。・・・(略)・・・この転換点は、エアコンが登場したタイミングと合致している。サンベルトにある州の方が北東部にある州よりも成長率が高かった理由を誰かに尋ねられたら、アーサー・ラッファーのおか
1セント硬貨だとか5セント硬貨だとかの額面の小さい小銭の発行をやめてしまうべきなんだろうか? 「何とも言えない」というのが私の答えだが、「やめるべきじゃない」というのがジェイ・ザゴースキー(Jay L. Zagorsky)の答えだ。 真っ先に指摘しておくべきことがある。造幣局は、需要に応じて硬貨を発行しているに過ぎないのだ。額面の小さい小銭に対する需要は、急速な勢いで増えている。過去10年の間に、1セント硬貨(ペニー)と5セント硬貨(ニッケル)の発行枚数は、ほぼ倍増しているのだ。世論調査でも、1セント硬貨や5セント硬貨への人気は高い。 1セント硬貨にしても、5セント硬貨にしても、製造コストが額面を上回っているのは確かだ。2017年のデータ(pdf)によると、1枚の1セント硬貨を製造するのに1.8セントの費用がかかる一方で、1枚の5セント硬貨を製造するのに6.6セントの費用がかかる。しかしな
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