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米連邦政府は2026年1月6日、米国の五つの州に対し、社会保障プログラムへの約100億ドル分の資金の提供を凍結すると発表した。それは低所得層家庭の子育て支援などに充てられていた資金で、数十万人規模の子供が一様に影響を受ける措置となるが、米保健福祉省(HHS)は「不正受給の懸念がある(受給資格のない相手に給付されている可能性がある)ため、不正がないと確認できるまでは支払いを差し控える」と説明した。 凍結の対象となった五州(カリフォルニア州、コロラド州、ミネソタ州、イリノイ州、ニューヨーク州)の司法長官らは、措置が違法な権限の濫用であるとして、トランプ政権を相手に訴訟を起こした。ちなみに上記の五州はいずれも民主党優勢の州、いわゆる「ブルーステート」である。 今回の凍結は、「ミネソタ州の保育施設が、巨額の不正受給に関与している」と主張する一本の動画が全米で注目されたことを受けて発表された。その動
トランプ政権が国際刑事裁判所ICCと対立しており、職員に対して制裁措置を課していることはすでに広く知られているが、制裁対象となった実態が報道された。 マイクロソフト社は制裁対象者のメールアカウントを削除し、Amazonはアカウントを停止(そのせいでアレクサは使えなくなり、Kindleの書籍は消えた)、クレジットカード使用不能となった。クレジット決済が前提のサービスは使用不能となった。 世界の多くの国の個人や企業は多かれ少なかれ米国企業が提供するサービスに依存している。VISAやMASTERやAMERICAN EXPRESSといったクレジットカードは米国企業だし、クラウドもSNSも多くが米国企業だ。ある日、突然利用できなくなるという悪夢がICCの職員の身に降りかかった。 トランプ政権発足時に、こうした制裁が行われることは予想できた。いまはまだ他国企業への制裁はおこなっていないが、ICCを擁護
すでに日本のメディアでも報じられているとおり、米オレゴン州のポートランドでは現在「ユニークな抗議活動を行う市民」と「州兵を派遣したいトランプ政権」との間に独特の緊張状態が続いている。そんな中、国土安全保障長官のクリスティ・ノームが自らを「ポートランドのANTIFAたちと対立するヒロイン」に仕立てるパフォーマンスのような写真撮影を行ったことが話題となっている。 このノームの行動について、Fox Newsは「暴徒に立ち向かうノームの勇気」を称賛するようなニュースを報じたものの、多くの大手メディアはそれを「かなり恥ずかしい誇張的な演出」として揶揄するように伝えた。そしてThe New York Timesは「誇張的にノームを英雄視したがるMAGA系のインフルエンサーの影響」についても詳しく語っている。一方で、米国の歴史ある論評誌「The New Republic」は、それらの大手メディアの報道姿
いま一大ブームとなっているAI(人工知能)をどう考えるか。本稿では「人権のアイデア」を軸に見ていく。 AIと人権に関する話題は急激に増えているが、本稿では歴史的経緯をもち、かつ緊急性が高い分野——AIによる、あるいはAIと呼ばれる以前の情報システムによるデータ処理に伴う懸念を中心に述べる。 筆者の立場から注目したいのは、4年前、2021年9月に国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が人権リスクがあるAI(人工知能)システムの販売と利用の緊急停止(モラトリアム)を各国に要請したことである。この要請には根拠と緊急性があったが、事実上無視された(なお、EUは2024年に国際人権法の考え方に基づくAI規制法AI Actを成立させ、2025年現在段階的に適用を開始している)。6年が経過した今もこの警告の問題意識は生きている。なぜ「AIモラトリアム要請」が出たのか、その問題意識から見ていきたい。 「I
昨今、デマや陰謀論について、ファクトチェックやSNSの構造などによるアプローチの議論を多く目にする。筆者の書いてきた原稿では、もう少し深い中長期的な社会の体質改善のようなアプローチの方向から、議論を進めてきた。 今回、「歴史戦」「記憶政治」と、現代の陰謀論やデマの状況の構造的な類似について考えてみようと思う。というのも、歴史や記憶に関する問題におけるデマや陰謀論は、SNS以降に生まれたものではなく、1980年代には活発に飛び交い、第二次世界大戦以前からも存在し続けていた(ライヒの『ファシズムの大衆心理』でその一例を確認した)。 これらは、大文字の政治や、アイデンティティに関わるので、単に事実や論理による意見では修正しにくい部分がある。ポストトゥルースと呼ばれる現在における認知戦や陰謀論も、そのようなアイデンティティに関係する話法を応用しているように見える。そのことを、林志弦『犠牲者意識ナシ
1.はじめに 今回は、民間NPO「Public Citizen」によるレポート「Deleting Tech Enforcement:Trump 2.0 Is Dropping Lawsuits and Investigations Against the $1 Billion-Spending Technology Sector」を紹介する。本報告では2025年の第2次トランプ政権成立以降、頻繁に確認されるようになった米国テック系企業への優遇措置について調査を行なったものとなっている。その中でも特にテック企業がトランプ陣営に対して行った金銭的支援を与えたこと、それへの見返りとして規制緩和が行われたことが記述され、深刻な癒着構造が存在することを示唆する内容となっている。 2.政権とテック企業の癒着構造 Public Citizenの分析によれば、第2次トランプ政権は成立後の6か月間であらゆる
2025年の参院選は我が国の情報環境を考えるうえで重要である、という認識に立ち、新領域安全保障研究所は参政党への投票行動に影響を与えた要因を調査することにした。すでに発表されているレポートや記事を整理する中で、当研究所で実施予定だったアンケート調査を先行して、複数回実施しているものを発見し、急遽、その実施主体に分析を依頼することとした。それが社会調査支援機構チキラボだった。 同団体は当研究所が想定していた以上の豊富なデータを持ち、分析体制もあり、当初、期待していた以上の報告書をいただくことができた。この場を借りて感謝したい。 今回は同団体の報告を前編・後編に分けてご紹介し、続いてその内容を踏まえて当研究所としての視点で整理を試みる予定である。 後編をお届けする。 INODS UNVEIL 一田和樹 →前編(なぜ参政党を選んだのか?〈前編〉外国人不安、YouTube視聴)はこちら チキラボが
2025年の参院選は我が国の情報環境を考えるうえで重要である、という認識に立ち、新領域安全保障研究所は参政党への投票行動に影響を与えた要因を調査することにした。すでに発表されているレポートや記事を整理する中で、当研究所で実施予定だったアンケート調査を先行して、複数回実施しているものを発見し、急遽、その実施主体に分析を依頼することとした。それが社会調査支援機構チキラボだった。 同団体は当研究所が想定していた以上の豊富なデータを持ち、分析体制もあり、当初、期待していた以上の報告書をいただくことができた。この場を借りて感謝したい。 今回は同団体の報告を前編・後編に分けてご紹介し、続いてその内容を踏まえて当研究所としての視点で整理を試みる予定である。 まず、前編をお届けする。 INODS UNVEIL 一田和樹 チキラボによる参院選調査から結果を報告します。なぜ参政党に投票するのか、参政党に投票し
2025年7月20日、エプスタイン問題に揺れている真っ最中の米国で、ドナルド・トランプがTruth Socialに投稿したのは「オバマ元大統領がFBIによって逮捕される様子」をAI生成した動画だった。それはもともと、TikTokにアカウントを持っている別の人物がAI生成した動画だったのだが、トランプはそれを自身の公式アカウントからリポストした。 この突飛な行動を見た多くの人々は、「エプスタインの話題から世間の注目をそらしたいトランプの試み」だと考えている。共和党がエプスタイン問題の議論を避けようとすればするほど、トランプとMAGA層との亀裂が深まっているようにも見える厳しい状況の中で、それは当然の指摘だろう。 しかし、ここではあえてエプスタイン問題をいったん脇に置く形で、「過激化していくトランプのAIスロップ」と「これらのAIスロップに対する一般メディアの反応」のほうに注目したい。トランプ
2025年7月25日、女性専用の情報共有アプリ「Tea Dating Advice」で重大なデータ侵害事件が発生した。賛否両論を巻き起こしている同アプリのデータベースに保管されていた画像データは、誰でもアクセスできる状態になっていたことが4chanの投稿によって広められた。 そもそも「Tea」とは? 「Tea Dating Advice」は2023年に誕生した女性専用のアプリで、カテゴリ上はマッチングアプリ(出会い系アプリ)のひとつとして数えられがちだが、従来どおりのそれとは性質も用途も大きく異なっている。 マッチングアプリは現在、多くの人々から手軽に利用されている一方で「プロフィールの詐称が横行しているため相手の素性が分からない」「アプリを通して被害に遭ったときの情報が共有されにくい」などの課題があった。Teaは、そういった問題に悩まされている女性ユーザーたちが「男性に関する情報」を匿名
国内の特定の政党へのロシアの関与などSNSで話題になり、海外からの干渉はあったと官房副長官が発言した。海外からの干渉について考える際に、想定しておいた方がよいことがいくつかあるのでご紹介したい。 1.海外からの干渉の影響の評価は難しく、干渉の証明も難しい 海外からの干渉の影響として、「民主主義への脅威」、「社会の分断の拡大」、「選挙結果が歪められる」などがあげられる。本来、影響は「行動」などで計られるべきものですが、「行動」まで検証した調査はほとんどない。 2.近年の海外からの干渉の多くは効果がないことが多い ここ数年の主要な関係機関の事例に関するレポートを読むと、その多くで効果がなかったか軽微だったという結論のことが多い。前項で影響評価はほとんど行われていないと書いたのと矛盾するようだが、「行動」に影響を与える前段階でそもそも情報が拡散しなかったなどを根拠に書かれているので、おそらくその
「リベラル」がファシズムを招いた逆説 前回、ナチス・ドイツにおけるファシズムの発展を性の観点から分析したライヒの『ファシズムの大衆心理』を参照し、現在の「大衆心理」を理解する参考にした。今回も、その延長線上で、現在の「リベラル」「フェミニズム」への反動が、性や男性性を巡る陰謀論的な物語と結びついて蔓延し、トランプ支持になりファシズム的状況を招いている現在について考えていくことにしたい。 論理や証拠で説得できない者たちが増えていき陰謀論が跋扈するのがポストトゥルースであるが、それが蔓延する土壌となる大衆の心理、彼らの生活の背景がある。それを解き明かさなければならないというのが、ナチス・ドイツに「リベラル」が敗北しつつある時期のライヒの分析だった。「国家社会主義は曖昧な革命感情と同時に反動感情を抱いている大多数の労働者、ほとんどの失業労働者、若者を結集するのに成功した」(上、p163)。そのナ
ファシズムにおける性と政治 前回までの二回において、ナチス・ドイツにおいて、どのように性と政治が影響し合っていたのかについて、ヴィルヘルム・ライヒの『ファシズムの大衆心理』の記述を参照して確認してきた。 非常にリベラルで性にも寛容で先進的だったヴァイマル共和政のドイツが、不況などを経て家父長制的で権威主義的な国家と化していき、家族や生殖を重視するナチスのイデオロギーを如何に女性たちが支持し、禁欲を強いることで捌け口を求める男性たちの性的衝動をいかにイデオロギーや体制の支持、そして差別や暴力に振り向けてきたのか、ライヒの分析により心理メカニズムを分析してきた。田野大輔『愛と欲望のナチズム』によると、ナチスは理想的な家庭を目指すような禁欲と、ヌード写真を活用したり性的満足を与えるための施設を作るなど、性欲の抑圧と解放により、政権やナチズムがある種の「希望」「満足」を与える対象であるかのように男
デジタル影響工作の世界的なフロントランナーは、もちろんロシアである。その担い手は同国の各情報機関だ。しかし、実際にどの機関がどの案件の黒幕かというのは、なかなかわかりづらい。 西側への心理戦に力を入れた冷戦時代 そもそもサイバー空間が出現する以前から、ロシア(ソ連)は対西側の心理戦に力を入れていた。冷戦時代、旧KGBやGRU(軍参謀本部情報総局)は諜報活動と並行して「アクティブ・メジャーズ」と呼ばれる積極工作に力を入れており、工作対象の内部に自分たちに都合のいい方向に組織内方針を誘導する「影響力のエージェント」と呼ばれる人物をアセットとして育成した。篭絡して正規のエージェントとして獲得した人物もいれば、本人がそう自覚しないままに意識をコントロールされる「無意識のエージェント」と呼ばれるアセットもいた。 さらに同時に、西側社会の主にリベラル勢力を標的に、時に偽情報も含むプロパガンダを流し、世
本稿は、新領域安全保障研究所の2025年度委託研究として、黒井文太郎氏に依頼した研究レポート(本編)を要約したものです。シリア紛争の認知戦の経緯と認知戦の活動主体であったサイトやメディア、インフルエンサーやジャーナリストの動きを詳細に追跡し他国への影響まで分析した本編は、当研究所の協賛企業・有償会員にのみ配布される予定です。また、その全容は、6月19日(木)に開催される第2回講演会で発表されます。 人は自分が受け取る“情報”から状況を認知し、どう行動すべきかを考える。それを利用する戦いが「認知戦」だ。フェイク情報も含めてさまざまな情報を武器化し、人々の意識/認知を自分たちに有利な方向へ誘導するのだ。 認知戦の対象は“敵方”に限らない。“国際社会”を対象に情報を操作し、自分たちの味方を増やす工作もある。こうした工作は、国際紛争ではどの陣営も行なうが、とくに、より理不尽な弾圧や殺戮を行なってい
トランプ陣営のソーシャルメディアアカウントがシェアしている雑なAI生成画像、いわゆる「AIスロップ画像1」を見て、いったい何のつもりなのだと疑問を抱いたことのある人は少なくないだろう。これまで気に留めなかったが、さすがに「トランプ教皇」の画像には度肝を抜かれたという人もいるかもしれない。 昨今のトランプ政権の公式アカウントは、かなりの頻度でAIスロップをソーシャルメディアに投稿している。とりわけ目にする機会が多いのは、トランプ大統領を教皇やスターウォーズの登場人物として描いたナルシスティックな画像だが、その他にもトランプ政権が強制送還した人々をモチーフとして描いた「Hope」のポスター(オバマ政権を象徴する画像の一つ)風の画像や、当局者をジブリ風に描いた画像などもある。 著名なテクノロジー系ジャーナリストたちによる米メディア「404 Media」は2025年5月7日、「The AI Slo
暴かれたPravdaネットワーク アメリカのデジタルフォレンジック・リサーチ・ラボとフィンランドのCheck Firstは、ロシアのデジタル影響工作ネットワークであるPravdaの全貌をレポートし、リアルタイムにその状況を確認できるダッシュボードを公開した。PravdaネットワークはPortal Combatと呼ばれる作戦の一部となっている。 以前の記事でも紹介したように、このネットワークは圧倒的な数のコンテンツを複数のサイトから発信し、LLMグルーミングの効果をあげていた。LLMグルーミングとは多数の露出により、AIがそのコンテンツを信用できる情報源と考えるように仕向けるもので、すでに主要なAIの多くが汚染されており、テーマによってはロシアのプロパガンダを答えるようになってきている。 このネットワークは80以上の地域と国に広がっており、自動でそれぞれの国の言語に翻訳されている。日本語もタ
1983年、札幌生まれ。批評家。博士(学術)。日本映画大学准教授。著書に『現代ネット政治=文化論』『攻殻機動隊論』『虚構内存在 筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉』『シン・ゴジラ論』『新海誠論』(作品社)『新世紀ゾンビ論』(筑摩書房)『娯楽としての炎上』(南雲堂)『シン・エヴァンゲリオン論』(河出書房新社)『ゲームが教える世界の論点』(集英社新書)、編著に『3・11の未来』(作品社)『地域アート』(堀之内出版)『東日本大震災後文学論』(南雲堂)など。1995年からインターネットに触れ、「ネット万華鏡」(共同通信)「ネット方面見聞録」(朝日新聞)などネット時評も担当。https://x.com/naoya_fujita この著者の記事一覧へ
「AGIピルを飲む」ということ 今「AGIピル」を飲んだ人たちによる以下のような急峻に変わる世界の未来シナリオが現実味を帯びつつある。 2026〜2027年までに、あらゆる人間よりも賢いAIシステムが開発され、その後1〜2年で、100万台のGPUで稼働する超知能へと進化。質的には人類全体の知性を凌駕する存在となる。 同時に、AGI/超知能を巡る東西冷戦が激化し、台湾有事や第三次世界大戦のリスクが高まる。軍拡競争の中で制御不能なAGIが生まれ、さらにオープンウェイトAGIの悪用によって世界はかつてない脆弱性を抱えることになる。 しかし、そのすべてを乗り越えた先には、不死、マインドアップロード、エネルギー問題の解決、そして多惑星間種族への飛躍が待っている。 AGI/超知能は人類を「文字通り」滅ぼすのか、それとも繁栄へと導くのか――。 このナラティブが、一部ベイエリア周辺のテクノロジー界隈を中心
米国の非営利団体「Media Matters for America(MMfA)」が2025年3月14日に発表した調査結果によると、米国のオンライン番組のエコシステムは圧倒的に右派が支配しており、その偏りは政治的な番組だけでなくコメディやスポーツなどの「政治的ではない番組」にも浸透しているという。 The right dominates the online media ecosystem, seeping into sports, comedy, and other supposedly nonpolitical spaces https://www.mediamatters.org/google/right-dominates-online-media-ecosystem-seeping-sports-comedy-and-other-supposedly この調査はYouTube、S
ドイツ総選挙について:ここまでのおさらい すでに多くの大手ニュースでも報じられているとおり、2025年2月23日に投開票されたドイツの総選挙では、大幅に得票率を伸ばした極右政党「AfD(ドイツのための選択肢)」が第2党に躍進した。 この選挙では、ロシアによる大規模な偽情報/誤情報の拡散活動が大いに問題視されてきた。ドイツ政府はいくつかの対策を講じたものの、ベルリン裁判所がXに強制していた「研究者へのデータアクセス」さえ、選挙日までに実現されることはなかった。 https://inods.co.jp/news/5395/ この拡散活動においては、とりわけ極右のアカウント群が「AI生成の偽コンテンツ」を投稿して進められてきたことが指摘されている。先日の一田和樹氏の記事では、極右アカウントのAI利用に関するISDの調査報告の結果が紹介された。 https://inods.co.jp/news/5
8/14 13時 日本最大級の国際サイバーセキュリティ・カンファレンスCYDEF8説明会 井手達夫氏、佐々木孝博氏 今回は、Curd Knüpfer氏らによる「Political Communication Research is Unprepared for the Far Right」を紹介する。この論文は従来のリベラルな民主主義体制の下で発達してきたポリティカル・コミュニケーションという学問的枠組みを再検証し、非自由主義的な政治勢力に対する新たな分析的枠組みの構築の必要性を指摘している。 極右を始めとする非自由主義的な政治主張は、近年西側自由民主主義体制においても復活の兆しを見せており、これらの政治勢力は自らが弱体化させ破壊しようとする民主主義体制における規範や慣行を悪用している。更にこれらは極めて自己言及的であるが故にその意図の解読を困難にし、ポリティカル・コミュニケーションにおけ
この領域の関係者とお目にかかった際、「じゃあ、デジタルフォレンジック・リサーチラボに依頼すればいいじゃないですか」と言うことがたびたびあった。自分たちで分析できないなら、頭を下げて教えを乞うしかない。(最近は、デジタルフォレンジック・リサーチラボのレポートにもやもやするものが増えたので言わなくなった) しかし、実際にデジタルフォレンジック・リサーチラボが日本の状況を分析したレポートを目の当たりにすると、「見なきゃよかった」という思いが頭をよぎった。 デジタルフォレンジック・リサーチラボは、2024年12月18日に、日本のX空間における外国からのナラティブ干渉を分析したレポート「Foreign narratives proliferate among Japanese X communities」を公開した。 レポートの内容 この調査では、まず外国の著名なメディアや外交アカウントとエンゲージ
はじめに:崩壊した「トップダウン型」モデル 20世紀の大部分において、超党派の専門知識に基づく機関は…
2024年11月14日、風刺メディアの「The Onion」が、アレックス・ジョーンズの「InfoWars」を落札したことが報じられた。現在のところ売却価格は公表されていない。 両方の媒体がどんなものなのかをよくご存じの方であれば「あのThe Onionが、あのInfoWarsを買収するのか?」と仰天し、大笑いするようなニュースだ。しかし、これらが日本語で詳しく語られる機会は多くないだろう。 僭越ながら、この落札がどれほど奇想天外なニュースだったのかを、ひとりのThe Onionファンから丁寧に説明したい。私よりも熱烈なファンには「ぬるい」と感じられるかもしれないが、その点はどうかご容赦いただきたい。 The Onionとは? The Onionは、米シカゴを拠点とする風刺メディアだ。「存在そのものが正統メディアの風刺にもなっているパロディのメディア」と表現するほうが的確かもしれない。この
前回は「愛着スタイル」と陰謀論の信じやすさに対する実証的な研究データを元に、愛着や親密性の観点が、現在のデマやフェイクや陰謀論によって分断と対立を激化させる文化戦争の時代における安全保障において必要なのではないか、という提案を行った。 ジョゼフ・E・ユージンスキは、「無力感、社会的疎外感、自信のなさ、不安感、コントロールができないという気持ちは、陰謀信念と相関関係がある。疎外されている、他者にコントロールされている、無力である、将来が不安だという感覚を持つ人たちは、自分の置かれている立場を理解するために、あるいはうまく対処するためのメカニズムとして、陰謀論に傾倒する可能性が高い」(『陰謀論入門』p108)と述べているが、今回は、これが一部の敗北した特殊な「負け組」のみではなく、現代を生きる人間が広範に巻き込まれている事態である、ということを、ギデンズの社会学の知見などを参照に述べていこうと
OSINTで有名なベリングキャットがOSINTツールキット「Bellingcat’s Online Open Source Investigation Toolkit!」を公開した。このツールキットは莫大な数のOSINT関連のツールを網羅しており、カテゴリー別に求めているツールを探すこともできるし、検索を行うこともできるようになっている。 ベリングキャットが行った2023年の調査では、ツールを見つけやすいと回答したのはわずか15%だった。2022年の調査でも、同様の結果だった。実際には、どちらの時点でもオープンソース研究者のためのツールキットのリストが多数存在していたにもかかわらず、多数の研究者はそこにたどりつけていなかった。また、ツールの存在がわかっても更新頻度や信頼性、使用にあたっての難易度などの問題もある。 今回のツールキットは、オープンソースのツールへのURLや説明だけでなく、費用
イーロン・マスク買収後、透明性レポートの公開を止めていたXが初めて透明性レポートを公開した。ページはたったの15ページで簡単なものだが、なかった数年間に比べれば長足の進歩と言える。 ちなみに日本から透明性センター( https://transparency.x.com/ )にアクセスすると、いまだにツイッター時代の日本語版の透明性レポート( https://transparency.x.com/ja )に飛ばされる。直接英語版のURL( https://transparency.x.com/en )を使わないといけないようだ。 X利用者大国である日本は削除要請などさまざまなおころで上位に出て来ている。 イーロン・マスクに買収された後、ポリシーなどが変更されたため、削除基準などが代わり、結果として透明性レポートの数値はだいぶ変化している。この兆候は買収直後から明らかだった。しかし、トルコなど
最小の労働者階級・ブルーカラーの60ツイートに対して、同性愛・LGBTへの言及ツイートは9664件であった。161倍の開きがあった。トランプが2016年に選挙に勝利したのは、ラストベルトの労働者の支持が影響したと言われている。2010年-2015年の上記10メディアが、ラストベルトに言及した数は12件であった。 同性愛・LGBTへの言及ツイートが9664件、黒人への言及が3436件であることと比較すると、マスコミはラストベルトの労働者に興味はなかった。ラストベルトの労働者も問題を抱え苦しんでいたのに。 上記で書いたように、共感は社会的・政治的リソースだ。社会問題を解決するためにまずそこに社会問題があることが人々に認知されなければならない。LGBT問題も黒人問題もそこに社会問題がある事自体は認知されている(改善も遅々としてであるが進んでいる)。一方、労働者・ブルーカラーの問題は、マスコミによ
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