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新年度はじまる
morningrain.hatenablog.com
「約500ページのボリュームの平和論」というと、相当硬い本を想像するかもしれませんが、そんなことはありません。 本書は、紀行文と哲学書を組み合わせたような本であり、特に難解な用語を使っているわけではありません。読みやすい文体でスムーズに読めると思います。 ただし、とり上げられている問題は、戦争と平和、被害と加害をめぐる非常に難しい問題で、なにか スッキリとした解答が得られるものではありません。 著者は、サラエヴォ、731部隊博物館、チェルノブイリ原発、戦時下のウクライナなどを訪ね、考えます。 そこで見えてくるのは、人間の「悪」をいかに記憶するのかという問題と、何かを割り切らないと、あるいは、何かに目を瞑らないと実現しない平和の姿です。 目次は以下の通り。 はじめに 第1部 平和について 1 平和について、あるいは考えないことの問題 ・旧ユーゴスラヴィアへの旅 ・共生の平和と隔離の平和 ・歴
バブル期(88年頃)に持ち上がった外国人労働者受け入れ政策が、なぜ「研修」というサイドドアを使ったものとなり、搾取の温床ともなってしまった技能実習制度が温存されてしまったのかを探った本。 技能実習制度などの日本の政策の問題点を指摘するというよりは、「なぜそうなってしまったのか」という問いに答える内容になっています。 本書を手に取った理由として、もちろん著者の今までの本が面白かったからというのがあるのですが、もう1つは昨年読んだ是川夕『ニッポンの移民』(ちくま新書)の主張の一部に納得できなかったからというのもあります。 『ニッポンの移民』はいろいろと勉強になる部分があり面白い本でしたが、「日本に移民政策はなかった」とする「移民政策不在論」に対する批判と、入管行政には「埋め込まれたリベラリズム」があったいう主張については首をかしげざるを得ませんでした。 本書を読むと、法務省には日本の労働慣行に
有斐閣の編集部からご恵投いただきました。どうもありがとうございます。 早大の総長も務める政治学者の田中愛治の古稀を記念してつくられた論文集。田中の弟子筋にあたる人が中心となり、田中の研究テーマの1つである「無党派」について考察しています。 90年代、00年代と、日本の政治を大きく動かしてきたのが無党派ですが、その無党派はどのように捉えるべきなのか? 10年代20年代の無党派をどう捉えるべきなのか? 海外の無党派はどうなっているのか? といったことを論じています。 野党の再編が進み、それとともに無党派の動きが注目されている今、興味深い知見が詰まった内容となっています。 目次は以下の通り。 序 章 なぜ無党派層か(遠藤晶久・三村憲弘・山﨑新) 第1部 無党派層をどう見てきたか 第1章 マスメディアにおける無党派層報道の変遷と特徴(細貝亮) 第2章 「政党支持なし」層の意識構造──政党支持概念再
日本は世界有数の生命保険大国であり、2024年の時点で世帯加入率は89.4%もあると言われています。これを支えたのがいわゆる「生保レディ」と呼ばれる女性の営業職員です。 80年代には男性営業職を導入した後発型の生保も登場しますが、伝統的生保会社では今でも女性営業職の割合が圧倒的に高く、明治安田生命は2024年3月の段階で女性が100%です(6p図序−1参照)。 このように伝統型生保の営業職はジェンダー化された職業なのですが、興味深いのが後発型生保はむしろ営業職が男性であることを打ち出して(ソニー生命のCMなどを思い起こしてください)、女性=「素人」とは違う「プロフェッショナル」だというイメージをつくろうとしています。 同時に生命保険はその売り方においても「一家の大黒柱にもしものことがあれば…」、「残された奥さんと子どもは…」というような形でジェンダー規範を利用しています。 というわけで、本
あけましておめでとうございます。 今年の紅白歌合戦は大トリのミセスのあとに松田聖子が登場するという明らかに変な構成でしたが、これは直前まで嵐に出演交渉をしていて、ミセスにも「トリですが嵐がその後に入るかもしれません」という話はしていたんでしょうね。 また、嵐が出演した場合は10分程度かそれ以上の尺を取るつもりだったと思うので、それが直前になってのスペシャルゲストの乱立につながったのではないかと思います。 というわけで、今年の紅白はプランAが崩壊したあとのプランBだったのでしょう。そこで思い起こされるのが、SMAPの登場を待ち続けた2016年の紅白歌合戦です。 あのときはSMAPが来るかもしれないという期待を、タモリとマツコ・デラックスの小芝居で引き伸ばしつつ、最終的にはSMAPもタモリ&マツコ・デラックスも会場に来ないで空振りに終わるという「ゴドーを待ちながら」的な番組をつくり上げたわけで
ここ最近、読めたけどブログが書ききれなかったという年が多かったですが、今年は4月以降に一気に仕事が忙しくなった影響で、読む速度も大幅に鈍化。そして、当然のようにブログも書けなくなったので、後半は章ごとのまとめをTwitterにあげて、それをまとめてブログ記事にするという苦肉の策で何とかという感じです。 とりあえずは、小説以外の本を読んだ順で6冊紹介し、その後に小説を3冊紹介します。そしてさらに読んだけどブログで紹介できなかった本を紹介します。 新書に関しては別ブログにまとめてありますので、以下をご覧ください。今年の新書は歴史ものが豊作でした。 blog.livedoor.jp 比較のなかの韓国政治 作者:浅羽祐樹 有斐閣 Amazon 基本的には比較政治学の視点からの韓国政治についての教科書的な本なのですが、本書の大きな特徴は教科書的な本でありながら可能な限りタイムリーな話題を取り入れてい
本書の出発点をなすのは、東ドイツの西ドイツへの適応ないし移行という当初の期待は、近年の展開に照らして幻影だったという所見である。〜「模倣の段階の終着点」にあって、東ドイツは消えてなくなるどころか、ますます見分けが可能である。(11p) 1990年のドイツ統一から35年近くが経っていますが、未だに東西の格差は埋まらず、政治や社会の状況に関しても明らかな違いが残っています。 その1つの現れが旧東ドイツ地域におけるAfDの台頭であり、ドイツ政治全体を揺さぶるものとなっています。 本書はこういったドイツの状況を明らかにし、さらにその処方箋を探った本になります。 AfD躍進の背景を知るうえでも興味深いですし、同じ民族であっても40年ほど違う社会を経験したことによって非常に大きな違いを生み出してしまっていることは歴史的に見ても興味深いです。 目次は以下の通り。 はじめに 第1章 適応の代わりに骨化 第
なんといってもトランプが代表例ですが、近年の政治では政治経験がほとんどない、あるいはまったくない人物が大統領などの指導者の地位につくケースが増えています。 また、議院内閣制の国においても、新興政党が勢力を伸ばして無視しがたい勢力になっている国も増えています(ドイツのAfDなど)。 こうした状況を本書では「アウトサイダー・ポリティクス」と名付けています。 既存の政治の外側からのチャレンジャーはいつの時代にもいましたが、そうした勢力が短期間で政権に手の届くような位置まで上り詰めるようになったのが近年の特徴と言えるでしょう。 目次を見ればわかるように、さまざまな国の事例が取り上げられており、特にラテンアメリカ、フィリピン、日本のれいわ新選組といった欧米以外の事例が取り上げられているのが大きな特徴だと思います。 以下では、面白かった章だけ簡単に紹介していきますが、現代の民主主義を考えるうえでの重要
アメリカといえば競争の国で、それがすぐれた製品やサービスを生み出していると考えられていますが、近年についてはそうでもないよ、ということを主張した本。 著者は「トマ」という名前からもわかるようにフランス人で(ピケティもトマ・ピケティ)、1999年に経済学の博士号をとるためにアメリカに渡りました。そのとき、ノートパソコン、ネットのプロバイダー、航空券、ほとんどものがフランスよりも安かったといいます。 ところが、2017年になると、ブロードバンドの料金はドイツ35.71ドル、フランス38.10ドルに対して、アメリカは66.17ドルになり(7p表Ⅰ.Ⅰ参照)、航空会社はヨーロッパでは乗客1人あたり7.84ドルの利益を上げたのに対して、北アメリカでは22.40ドルの利益を上げるようになりました(8p)。 21世紀の最初の20年間で、アメリカは物価が高く、消費者がカモられる国に変貌してしまったのです。
Amazonに載っている紹介は以下のようなもの。 銀と、ふたつの言語における単語の意味のずれから生じる翻訳の魔法によって、大英帝国が世界の覇権を握る19世紀。英語とは大きく異なる言語を求めて広東(カントン)から連れてこられた中国人少年ロビンは、オックスフォード大学の王立翻訳研究所、通称バベルの新入生となり、言語のエキスパートになるための厳しい訓練を受ける。だが一方で、学内には大英帝国に叛旗を翻す秘密結社があった。言語の力を巡る本格ファンタジー。ネビュラ賞、ローカス賞受賞作。 ここからもわかるように本書は歴史改変ものであり、「銀工術」と呼ばれる特殊な力が支配する世界を描いた作品でもあります。 銀工術とは、銀の棒の表面にある言葉を、その裏に別の言語でその翻訳となる言葉を刻み、その意味のズレによって不思議な力を生み出すというものです。本書は言葉や翻訳を巡る小説にもなっています。 この銀工術のため
著者の岡本信広先生より御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 タイトルは長いですが、中国経済の概説書になります。 特徴は2つあって、まずタイトルの前半部分にある「人々の暮らしぶりから考える」という部分で、世代も性別も境遇も違う5人の人物(著者の現地の知り合いや、さまざまな記事などからつくり上げられた架空の人物)を登場させ、彼らにライフヒストリーを語らせながら、中国経済の歴史的変化の大きさや、立場によってどのような恩恵を受け、また、苦労をしてきたかということを示しています。中国経済による時代による大きな違い、同時代での地域や職業による違いが際立つような仕掛けです。 もう1つは後半の「中国経済はどこまで独特か?」という部分で、章ごとに経済学の用語を示しながら、中国経済にはどこまで当てはまり、どこからが当てはまらないのかということを明らかにしています。 中国経済の特殊さ(あるいは普遍
著者の五十嵐先生と編集部から御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 副題は「統計分析が解明する移民・エスニックマイノリティに対する差別と排外主義」。本書は、この副題が表している通りの内容になります。 しかし、「差別」と「統計分析」というのは基本的には相性の悪いものです。人々の平均身長を知りたいならば測ればいいわけですが、社会全体の差別の強さのようなものを知りたいと考えた時に「何を測ればいいのか?」というのは難しい問題です。 例えば、移民に対する差別の実態を知りたくて、「あなたは移民に対して差別的な考えを持っていますか?」という質問をしたとして、その答えはその社会の移民に対する差別的な態度をそのまま反映していると言えるでしょうか? これは本書と同じ新泉社から刊行された中井遼『欧州の排外主義とナショナリズム』でも指摘されていたことですが、世間体などから、本当は差別的な考えの持ち主で
石油は政治学においても注目されている資源で、マイケル・L・ロス『石油の呪い』は石油の存在が民主化の進展や女性の政治参加を阻害し、内戦などが起こりやすいことを明らかにしました。 これに対して本書が注目するのが植民地の独立と石油の関係です。 ブルネイやカタール、バーレーンといった国は小国ですが、産油国であるために豊かです。本書はこのような小国がなぜ存在するのか? という問題を提起しています。 第2次世界大戦後に世界で約600ほどの植民地単位がありましたが、そこから誕生した独立国が150ほどで、多くの植民地が合併される形で主権国家となっています。 そうした中で、なぜブルネイやカタールやバーレーンは小国のまま独立できたのか? というのが本書が解こうとする謎になります。 この問題については、「宗主国が石油の権益を維持するために小国を独立させたのでは?」と考える人もいるかもしませんが、こことり上げられ
日本国憲法の制定過程については、「押し付けか否か」という議論がずっとあり、近年でも「9条幣原発案説」(9条を提案したのが幣原喜重郎だという説)をめぐり議論があり、笠原十九司が幣原発案説を主張しているものの、多くの研究者がこれを否定する状況となっています(例えば、熊本史雄『幣原喜重郎』(中公新書)など)。 この「9条幣原発案説」の背景には、現在の憲法が押し付けでなく日本人の望んだものだったということを示したい欲望のようなものがあると思うのですが、実は憲法については当時9条と並んで、あるいはそれ以上に重要だった問題があります。それが天皇の地位、「国体」の問題です。 日本はポツダム宣言を受諾するか否かの際にも、最後まで「国体」の問題にこだわっており、国体が護持できると考えたからこそ、ポツダム宣言の受諾に踏み切ったわけです。 ところが、現在の憲法では天皇の政治的な権力はなくなり、「象徴」という形に
著者の浅羽先生と編集部から御恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 本書の「あとがき」の日付は2024年10月21日となっていますが、まさかここまでタイムリーな本になるとは関係者も思わなかったのではないでしょうか。韓国政治は2024年12月3日に尹錫悦大統領が突如として発した非常戒厳によって韓国政治は大きく漂流しはじめましたが、本書はこの漂流する韓国政治の「注釈書」となっています。 基本的には比較政治学の視点からの韓国政治についての教科書的な本なのですが、本書の大きな特徴は教科書的な本でありながら可能な限りタイムリーな話題を取り入れている点です。 韓国の政治体制を解説するだけではなく、同時に現在の韓国政治と韓国社会の姿も描き出そうとしてます。また、文章の中でもいわゆる流行語を数多くとり入れています。 こうした流行語は今後どのくらい残っていくのかわからないので古びていく可能性もあり
今年も去年に引き続き、本を読むペースはまあまあでしたが、ブログは書けなかった。 とりあえず、ちょっと前に読了した斎藤環『イルカと否定神学』の感想が書けてないですし、その他中古で買った本は紹介しきれませんでした(先日読み終わったばかりの浅羽祐樹『比較のなかの韓国政治』も紹介は間に合わず…)。 ただ、紹介しきれなかった本の中で、中古で読んだ中岡哲郎『日本近代技術の形成』とA・O・ハーシュマン『離脱・忠誠・発言』は非常に面白かったのでここで紹介しておきます。 ここ最近恒例ですが、まずは小説以外の本の新刊を読んだ順に6冊紹介した上で、上記の中古で読んだ本の紹介、さらに小説を読んだ順で4冊+1シリーズ(?)紹介したいと思います。 ちなみに新書については別ブログにまとめてありますので、以下をご覧ください。新書は豊作の1年でした。 blog.livedoor.jp 小説以外 ドイツ「緑の党」史――価値保
副題は「その言説に根拠はあるのか」。税制をめぐるもっともらしい言説を実際のデータで検証しようとした本になります。 冒頭はいわゆる「年収の壁」をとり上げていて非常にタイムリー。「働き控え」をしている人にはぜひ読んでほしいですし、同時にあまりに複雑すぎる仕組みを見て政治家や官僚にはなんとかして欲しい(必ずしも控除額を引き上げるというわけではなく、普通の人にも理解できる仕組みにして欲しいという意味で)という思いも湧いてきます。 それ以外にも「企業減税は経済成長を促進するのか?」「消費税の軽減税率は役に立っているのか?」など、興味深い問いが並んでおり、税制を語る前にまず読むべき1冊となっています。 目次は以下の通り。 第1章 「年収の壁」と配偶者控除―配偶者控除は就業調整を引き起こすのか 第2章 課税と労働供給―労働所得税は勤労意欲を削ぐのか 第3章 課税と再分配―税は格差の縮小に貢献できるのか
社会的にも政治的にも日本で最も大きな影響力を有していると思われる宗教団体の創価学会について、カナダに生まれ、現在はアメリカのノースカロライナ州立大学の哲学・宗教学部教授を務める人物が論じた本。 副題は「現代日本の模倣国家」で、創価学会をミニ国家になぞらえた見取り図のもとで議論が行われているのですが、本書の何よりの面白さは著者によるフィールドワークの部分ですね。 創価学会の家庭に入り込み、任用試験とそれに向けての勉強、創価学会における女性の役割、信者と池田大作の関係などを明らかにしていく部分は、日本人の書いた創価学会本でもなかなか描かれていないものではないかと思います。 ここでも、そのフィールドワークの部分を中心に紹介したいと思います。 ちなみに校閲もかなり厳密になされており、著者のいくつかの誤解なども注で指摘されています。 目次は以下の通り。 はじめに 第一章 模倣国家としての創価学会 第
自分は1970年代半ばの生まれで、90年代の前半に明治大学に入学したのですが、入学式の日にヘルメットを被った活動家の人たちが新入生にビラを配っている光景に驚いたのを覚えています。 もうなくなったと思っていた学生運動的なものがまだ残っていたことに驚いたわけですが、それくらい70年代後半〜90年代にかけて学生の政治運動というものは退潮してしまった(少なくともそのイメージがあった)状態でした。 これはなぜなのか? この70年代後半〜90年代にかけての若者の政治や社会運動からの撤退の謎を、1974年に創刊され、85年に刊行を終えた雑誌『ビックリハウス』の分析を通して明らかにしようとしたのが本書です。 『ビックリハウス』については糸井重里による「ヘンタイよいこ新聞」のコーナーなどが今までも社会学者などによって分析されてきたので、ご存じの方も多いでしょう。自分も世代ではないですが、宮台真司や北田暁大の
1924年の加藤高明の護憲三派内閣以降、政友会と憲政会(→民政党)が交互に政権を担当する「憲政の常道」と言われる状況が出現しますが、なぜ、このような体制が要請されたのでしょうか? そして、この政権交代の枠組みを運営したのは誰なのでしょうか?(明治憲法のもとでは議会での多数派が組閣を導くわけではない) また、護憲三派内閣以降の政党内閣の歴史は「政友会の堕落の歴史」のように語られることがあります。 田中義一は鈴木喜三郎などのファッショ的な人物を政友会に取り込んで選挙干渉を行い、対外政策では幣原外交を捨てて対中政策で失敗し、その後の浜口内閣に対しては軍部と結託して統帥権干犯問題を持ち出し、五・一五事件のあとは鈴木喜三郎総裁への西園寺の不信感から政権が回ってこず、天皇機関説問題では右翼と組んで政党内閣を支えた理論にとどめを刺す、こんなイメージもあるのではないかと思います。 なぜ、初の本格的政党内閣
副題は「デジタル経済・プラットフォーム・不完全競争」、GoogleやAppleやAmazonなどの巨大企業が君臨するデジタル経済において、その状況とあるべき競争政策を経済学の観点から分析した本になります。 基本的にGoogleのような独占企業が出現すれば市場は歪んでしまうわけですが、例えば、Facebookが強すぎるからと言ってFacebookを分割すればそれがユーザーにとって良いことかというと疑問があります。Facebookは巨大だからこそいろいろな人とつながれって便利だという面もあるからです。 本書はこうした問題に対して、「不完全競争市場こそがスタンダードなのだ」という切り口から迫っていきます。 このように書くと難しそうに思えるかもしれませんが、全体的に読み物のような形に仕上がっており、また、高校の教科書の記述などを拾いながら書かれていて、経済学にそれほど詳しくない人でも読めるものにな
出版社は飛鳥新社で400ページ超えの本にもかかわらず定価が2273円+税で、みすず書房とかの本を買い慣れている人には「???」という感じなのですが、決して怪しい本ではありませんし、35歳の若さでオックスフォード大学の正教授になったという著者が、現代の政治がうまくいかない理由を実証と理論の両面から教えてくれる非常にためになる本です。 監訳者は『大阪 大都市は国家を超えるか』や『分裂と統合の日本政治』の砂原庸介ですが、砂原庸介・稗田健志・多湖淳の教科書『政治学の第一歩』と同じように、本書も集合行為論をキーにさまざまな問題が論じられており、具体的なテーマを通じて政治学の理論も学べる形になっています。 目次は以下の通り。 第1部 民主主義―「民意」などというものは存在しない 第2部 平等―権利の平等と結果の平等は互いを損なう 第3部 連帯―私たちが連帯を気にするのは、自分に必要なときだけ 第4部
著者の湊氏よりご恵贈いただきました。どうもありがとうございます。 近年、特に中国に対抗するためのパートナーとしてインドへの注目が高まっています。日米豪印の「クアッド」という枠組みがつくられ、そこではインドは民主主義や法の支配といった基本的理念を共有する国として紹介されています。 しかし、本当にそうなのだろうか? ということを本書は突きつけています。 インドのリーダーとして、あるいはグルーバルサウスのリーダーとして注目を浴びているモディ首相ですが、本書を読めばその政治スタイルはかなり権威主義的で、インドの民主主義はモディ首相のもとで大きく毀損されています。 日本はインドと基本的理念を共有しているといいますが、むしろインドが中国と近いのでは? と思わせるような内容です。 目次は以下の通り プロローグ 大国幻想のなかのインド 第1章 新しいインド? 第2章 「カリスマ」の登場 第3章 「グジャラ
2023年にノーベル経済学賞を受賞したゴールディンによる一般向けの書。 ここ100年のグループを5つに分けてアメリカの女性の社会進出の歴史をたどるとともに、それでも今なお残る賃金格差の原因を探っています。 世代についての叙述も面白いですが、ここでは現在の賃金格差の原因となっている「どん欲な仕事」についての部分を中心に紹介したいと思います。 目次は以下の通り。 第1章 キャリアと家庭の両立はなぜ難しいか―新しい「名前のない問題」 第2章 世代を越えてつなぐ「バトン」―100年を5つに分ける 第3章 分岐点に立つ―第1グループ 第4章 キャリアと家庭に橋をかける―第2グループ 第5章 「新しい女性の時代」の予感―第3グループ 第6章 静かな革命―第4グループ 第7章 キャリアと家庭を両立させる―第5グループ 第8章 それでも格差はなくならない―出産による「ペナルティ」 第9章 職業別の格差の原
ハン・ガンによる済州島4.3事件をテーマとした作品。 ハン・ガンは個人的にはノーベル文学賞を獲って当然と考える作家で(同じ韓国の作家ならパク・ミンギュも好きだけど、こちらはノーベル賞を獲るタイプではない)、そのハン・ガンが韓国現代史の大きな闇である済州島4.3事件をテーマにしたということですごい作品なんだろうなと予想しながら読んだわけですが、想像とはちょっと違う形でやはりすごい作品でした。 この作品は作者のハン・ガンを思わせる主人公のキョンハが疲弊しきっている状態になっているところから始まります。キョンハは光州事件と思われる事件についての著作を書き上げましたが、そのために疲弊しきっています。 そこにカメラマンでもあり短編のドキュメンタリー映画もつくっている友人のインソンから連絡が入ります。インソンは故郷の済州島で木工の仕事もしていたのですが、そこで指を切断する怪我をしてしまったのです。 こ
ちょっと変わったタイトルのように思えますが、まさに内容を表しているタイトルです。 第2次安倍政権がなぜ長期にわたって支持されたのかという問題について、その理由を探った本になります。 本書の出発点となているのは、谷口将紀『現代日本の代表制民主政治』の2pで示されている次のグラフです。 グラフのちょうど真ん中の山が有権者の左右イデオロギーの分布、少し右にある山が衆議院議員の分布、そしてその頂点より右に引かれた縦の点線が安倍首相のイデオロギー的な位置であり、安倍首相が位置が有権者よりもかなり右にずれていることがわかります。また、衆議院議員の位置が右にずれているのも自民党議員が右傾化したことの影響が大きいです。 では、なぜ有権者のイデオロギー位置からずれた政権が支持されたのでしょうか? 『現代日本の代表制民主政治』では、自民党の政党としての信用度、「財政・金融」、「教育・子育て」、「年金・医療」な
『番号を創る権力』の羅芝賢と『市民を雇わない国家』の前田健太郎による政治学の教科書。普段は教科書的な本はあまり読まないのですが、2010年代の社会科学においても屈指の面白さの本を書いた2人の共著となれば、これは読みたくなりますね。 morningrain.hatenablog.com morningrain.hatenablog.com で、読んだ感想ですが、かなりユニークな本であり教科書としての使い勝手などはわかりませんが、面白い内容であることは確かです。 本書の、最近の教科書にしてはユニークな点は、序章の次の部分からも明らかでしょう。 この教科書ではマルクスを正面から取り上げることにしました。それは、マルクスの思想が正しいと考えるからではなく、それを生み出した西洋社会を理解することが、日本をよりよく知ることにつながると考えたからです。 20世紀以後の日本の政治学は、欧米の政治学の影響を
1972年生まれの韓国の女性作家の短編集。河出文庫に入ったのを機に読みましたが、面白いですね。 「優しい暴力の時代」という興味を惹かれるタイトルがつけられていますが、まさにこの短編集で描かれている世界をよく表していると思います。 「優しい暴力」の反対である「優しくない暴力」は80年代半ばくらいまでの韓国には吹き荒れていました。本書の訳者である斎藤真理子が訳した同じ河出文庫のチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』では、むき出しの直接的な暴力が描かれていました。 ところが、経済が成長し、民主化が進み、軍が民衆を弾圧するようなむき出しの暴力は鳴りを潜めました。 でも、「暴力」は社会の中にあって、ふとした瞬間に顔を見せているというのが、本書が描く世界です。 冒頭の「ミス・チョと亀と僕」は、父の恋人でもあったミス・チョことチョ・ウンジャさんと高齢者住宅で働く主人公の奇妙な関係を描いた作品で、ユ
東京大学出版会のU.P.plusシリーズの1冊でムック形式と言ってもいいようなスタイルの本です。 このシリーズからは池内恵、宇山智彦、川島真、小泉悠、鈴木一人、鶴岡路人、森聡『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』が2022年に刊行されていますが、『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』がウクライナ戦争の世界への影響を論じていたのに対して、本書はヨーロッパへの影響を論じたものになります。 morningrain.hatenablog.com どこまでを「ヨーロッパ」とするかは(特にロシアはヨーロッパなのか?)というのは議論が分かれるところでしょうが、ウクライナ戦争は「ヨーロッパ」で起こった戦争として認識され、それゆえに非常に大きなインパクトを世界に与えました。 そして、当然ながらヨーロッパ各国にはより大きなインパクトを与えているわけです。 本書はそんなヨーロッパへのインパクトを豪華執筆陣が解説したものにな
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