サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
コーヒー沼
news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu
新型コロナの感染症法上の分類は5月8日から「5類感染症」に変更されますが、ワクチンの扱いは今後どうなるでしょうか。現行の接種、今後の費用、使用ワクチンの種類、そして接種間隔案について解説します。 初回接種の今後の見通し現在接種されている新型コロナワクチンは表のようになっています。オミクロン株対応ワクチンは、1・2回目の接種を終えた12歳以上のすべての方が接種可能です。 表. 現在の新型コロナワクチン接種(2023年2月6日時点)(筆者作成) オミクロン株対応ワクチンは初回接種には使えませんので、自治体における初回接種は現在、従来株ワクチンの在庫を使っています。しかし、この在庫がなくなると、初回接種自体ができなくなります。実際、そのようにアナウンスし始めた自治体も出てきました。 しかし、アメリカ食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は、1月26日に「今後は使用ワクチンを統一すべき」という見解をま
アメリカでは鳥インフルエンザによる家きん(肉・卵・羽毛を利用するため飼育する鳥)の殺処分が過去最多になっており、日本でも毎日のように鳥インフルエンザのニュースが流れるようになりました。「基本的に哺乳類への感染は起こりにくい」が定説ですが、それを覆すような報告が増えてきました。 鳥インフルエンザに変化?感染症法で2類感染症になっているのはH5N1(高病原性)およびH7N9(低病原性)の2つの鳥インフルエンザで、これ以外の亜型の4類感染症となっています。 2020年以降H7N9のヒト感染例は報告されておらず、もっぱらH5N1が話題になっているため、こちらを中心に書かせていただきます。 さて、これまで夏に収束することの多かった鳥インフルエンザが、季節性を失って、野鳥などに年がら年中感染する状況が続いています。 問題は、いくつかの哺乳類に鳥インフルエンザ(H5N1)の感染事例が複数報告されているこ
新型コロナの第8波は、2万人を超える過去最多死亡者数を記録する波となりました。コロナ病棟では、たくさんの高齢者が亡くなりました。「5類感染症」への移行に際して、医療提供体制の議論は避けられません。 第8波は大変な波だった新型コロナのウイルス性肺炎の重症度が高く、呼吸不全の患者さんが次々入院して医療逼迫したのは第4波・第5波でした。しかし、第7波・第8波は高齢者施設クラスターが頻発し、高齢患者さんが雪崩のようにコロナ病棟に押し寄せました。 一人ひとりのウイルス性肺炎は問題になりませんでしたが、基礎疾患や二次的な誤嚥性肺炎・細菌性肺炎が被害を大きくしました。最前線にいる救急隊員や看護師にとって、体感としての医療逼迫は第8波が過去最悪だったかもしれません。 第8波の累計死亡者数は、第7波のそれを大きく上回り、現在2万人を超えています(図1)。入院によって体力が落ち衰弱後に亡くなったり、寝たきりに
強烈な寒波が襲来しており、呼吸器疾患の受診も増えています。普段から咳が多い人は、寒暖差で急激に悪化することがあります。寒暖差による咳のメカニズムを解説します。 疾患予備軍を寒気が直撃気管支への軽い刺激によって咳が出やすくなることを「気道過敏性」と呼びます。代表的な病気は、喘息や咳喘息です。これらの「予備軍」は多く、今回の寒気をきっかけに発症される方も多いです。 この時期の典型的な受診パターンは、「普段から咳が出やすかったが、寒気の到来で雪かきを余儀なくされ、咳が止まらなくなった」というものです。コンコンと乾いた咳の場合は咳喘息(表)、ぜえぜえやヒューヒューという症状がある場合は喘息が疑わしいです。 表. 咳喘息の特徴(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用) 冷気によって咳が出やすくなる普段から咳が出やすい人は実感していると思いますが、実は冷気によって咳が出やすくなることが分かっていま
私の同僚や知り合いの医師も、新型コロナに感染したという人が増えてきました。今や日本では4人に1人は新型コロナに感染している状況で、抗体検査から推測すると、約半数がすでに感染したとされる地域もあります。 医師約1,000人の調査医師会員が多数登録している医療メディアCareNetが実施した1,000人規模の『医師の新型コロナ感染状況に関するアンケート』(1)を紹介したいと思います。 これまでに新型コロナに感染したことがあると答えたのは、医師の26.1%でした(図1)。ほとんどが1回の感染でした。 図1. 新型コロナに感染したことがあるかどうか(医師1,008人)(CareNetに転載許諾を得て参考資料1より引用) 厚生労働省の「(2023年1月版)新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識」(2)では、過去に新型コロナと診断されたのは、日本人口の23.2%とされています。比率は微差
複数の保健所管轄区域で、インフルエンザが「警報レベル」に到達しています。都道府県レベルでは、沖縄県がすでに「警報」を発出しています。インフルエンザ陽性の増加が著しく、発熱外来によっては新型コロナと逆転しているところが散見されます。 複数地域で「インフルエンザ警報」現在新型コロナ第8波は減少傾向ですが、1月末~2月にかけてインフルエンザが急増するフェーズが到来する可能性があります。 国立感染症研究所では、インフルエンザ流行レベルマップを公開しています(図1)。全国約5,000のインフルエンザ定点医療機関を受診したインフルエンザの患者数を週ごとに集計し、過去のシーズンをもとに基準値を設け、流行期入り・注意報・警告などを発出する仕組みになっています。 図1. 1月22日時点のインフルエンザ流行レベルマップ(参考資料1をもとに筆者作成) 具体的には、1つの定点医療機関当たりの患者数が、1人超で流行
「5類感染症にしたら全ての医療機関で新型コロナを診るようになる」と言われていますが、少し誤解があるかなと感じます。たしかに「機能上はどこでも診てよい」ことになるのでしょうが、何が誤解なのか詳しく解説したいと思います。 「5類」になっても院内の隔離は必要まず、「インフルエンザと同程度の重症化率・致死率だから、もう隔離対策の必要がない」という誤解があります。院内の隔離は、新型コロナとインフルエンザのいずれでも必要です。 隔離可能なベッドがないと、「空床がないので受けられない」と救急搬送を断らざるを得ないケースが増えます(図1)。 図1. 地域の中核病院の医療逼迫構造(筆者作成)(イラストは、ピクトアーツ、シルエットイラストより使用) 「過去のインフルエンザシーズンでこんな医療逼迫はなかった」とよく言われますが、インフルエンザの流行は短期間でどうにか乗り切れることが多かったためで、コロナ禍前から
新型コロナ第8波の累計死亡者数が1万5,000人を超え、第7波の累計死亡者数を超えました。第8波はまだ波の途中にあり、さらに死亡者数が増えることは確実です。皆さんが思っているより新型コロナの死亡者数はもっと多いのかもしれません。 すでに第7波の累計死亡者数を超える新型コロナ第8波の入院・死亡のほとんどは高齢者で占められています。 高齢者施設クラスターからの入院が多く、第7波よりもさらに平均年齢が高いことから、亡くなる患者さんが多いです。 第8波の累計死亡者数は1万5,000人を超え、過去最多の死亡者を出した第7波の累計死亡者数を超えています(図1)。まだ波の途中であることから、今後さらに死亡者数が増えることが予想されます。 図1. 新型コロナの波ごとの死亡者数(1月12日時点)(筆者作成) 感染症の中期的死亡新型コロナに限った話ではありませんが、感染症というのは、急性期だけでなく、こういっ
現在、新型コロナと同時にインフルエンザの流行が始まっています。発熱外来でも、じわじわとインフルエンザの陽性率が高くなってきました。インフルエンザにかかった場合、療養期間はどのようになっているのか、忘れてしまった人も多いと思うので、今一度振り返っておきましょう。 インフルエンザの療養期間は?3年ぶりのインフルエンザシーズンが到来しています。すでに、30都道府県で流行期入りとなっています。 自身あるいは家族がインフルエンザにかかった場合、どのように療養していたのか思い出せない人も多いかもしれません。 季節性インフルエンザは「5類感染症」に位置付けられていますが、学校などでは学校保健安全法にのっとって「発症後5日間かつ解熱した後2日(満1歳から就学前の幼児は3日)を経過するまで自宅待機」の出席停止になることが一般的です。 企業などでは特段の就業制限はもうけられていませんが、上記に準じているところ
現在新型コロナ第8波が到来していますが、過去最多の死亡者数を記録しています。日本の新型コロナ死亡者数のほとんどは、実はオミクロン株によるものです。「ただの風邪」「インフルエンザと同等」と言われながら、なぜ死亡者数が最も多くなってしまったのでしょうか。 オミクロン株で4万人以上が死亡オミクロン株が日本に上陸して猛威を振るい始めたのは、2022年1月の第6波からです。当初「重症度が低くただの風邪レベル」と油断していた人が多かった変異ウイルスです。 蓋を開けてみると、これまでの国内の新型コロナ感染者数・死亡者数のほとんどがオミクロン株によって占められることになり、この1年間で約4万人の命が失われました(図1)。 図1. 新型コロナの波ごとの死亡者数(2023年1月7日時点)(筆者作成) 新型コロナの重症化率や致死率がインフルエンザレベルまで下がったのに、なぜこのような事態になるのでしょうか。 感
インフルエンザが全国的に流行期入りしています。発熱外来には多くの患者さんが来院されますが、「新型コロナ陽性、新型コロナ陽性、インフル陽性、新型コロナ陽性・・・」といった感じでチラホラとインフルエンザ陽性例が増えてきました。症状によって、新型コロナかインフルエンザか当たりがつくのかどうか、書きたいと思います。 症状に違いはあるのか?コロナ禍初期は、咳や息切れがしんどかったり、味覚障害・嗅覚障害などの特徴的な症状があったりした場合、「新型コロナかな?」と当たりをつけることが可能でした。とはいえ、コロナ禍初期はインフルエンザ自体が流行していなかったので、そもそも両者を区別する必要がなかったのも事実です。 さて、症状によって新型コロナとインフルエンザの当たりがつくのかと問われると、オミクロン株以降は正直区別が厳しいです(表)。 表. 新型コロナ(オミクロン株)・インフルエンザ・かぜの症状(参考資料
東京消防庁によると2022年の救急車出動件数は、過去最多を記録したそうです。現在、新型コロナ第8波が到来しており、救急搬送困難例が多く、年末年始も救急医療は逼迫していました。私も重症の患者さんを搬送するために救急車に乗ることがあるのですが、サイレンを鳴らしているのになかなか避けてくれない車があり、ヤキモキします。 避けてくれない理由は?救急車がサイレンを鳴らして近づいているのに、時折、なかなか避けてくれない車がいます。脇に寄ってくれないどころか、交差点に突っ込んでくるトラックさえ目にします。事故にならなくてよかったと、救急隊員の運転技術に感心します。 「もしかして自動車の運転手は、救急車のサイレンが聞こえていないのではないか」と思った専門家が、実験で検証しました(1)。 なるほど、意図的に避けてくれないわけではなく、実はあの大きなサイレン音でさえ気づいていない人が一定数いるかもしれないとい
第8波の新規感染者数がふたたび20万人を超えてきました。全国的に病床使用率が増加しています。さて、一言でコロナ肺炎といっても、現在はコロナ禍初期のウイルス性肺炎とは別物なのです。これについて解説します。 コロナ病棟は高齢者が過去最多アルファ株やデルタ株のときは、酸素吸入が必要になる重症例が多かったとはいえ、若年~中高年の患者さんが主体でしたから、トイレや食事など基本的な身の回りのことをできる人が多かったです。 しかし、第8波の新型コロナ入院は、高齢者比率が過去最多となっており、たとえば東京都では全体の過半数を80歳以上が占めます(図1)。 図1. 東京都の新型コロナ入院患者の年代別割合(参考資料1より引用) 食事介助、オムツ交換、体位変換など、看護度が高い高齢者のケアにかなり人手がとられてしまい、本来30人受け入れられるはずの病床が20人入院しただけで機能停止に陥ってしまう現象も起こってい
新型コロナなどの感染症の予防には、気道の水分量を一定に保つことが重要です。加湿器によって室内の湿度をコントロールすることで、感染予防効果がありますが、どのくらいの湿度が新型コロナの感染予防に効果的でしょうか? 気道の水分量が重要ウイルス感染症や細菌感染症の予防には、気道の水分量が必要です。 気管や気管支で水分量が不足していると、線毛(せんもう)というホウキの役割をする防御機構が機能不全を起こし、ウイルスや細菌が気道に停滞してしまいます(図1)。 図1. 気道の線毛の役割(筆者作成) 相対湿度と新型コロナの死亡者数一般的には40~60%くらいの相対湿度が最適とされていますが、実際のところどうなのでしょうか? 実は、インフルエンザウイルスは、相対湿度が40%を超えるとウイルスの活性化率が急速に低下することが知られています(1)(図2)。おそらく、同じRNAウイルスである新型コロナウイルスも類似
1日の新型コロナ新規感染者数・死亡者数は第7波の水準まで到達しており、第8波のピークがいつなのかまだ分からない状況です。加えて、各地域でインフルエンザの流行期入りとなっており、今後同時流行する懸念があります。今年の年末年始は医療逼迫と重なっていますので、感染した場合にそなえて事前準備をしておきましょう。 解熱鎮痛薬と抗原検査キットの準備を解熱鎮痛薬などの市販薬、新型コロナの抗原検査キットを購入しておきましょう(図1)。日頃から、ご家族の人数分を備えておくことをおすすめします。 図1. 帰省先での感染に備えて持っていくべきもの(筆者作成)(イラストは看護roo!、イラストACより使用) 持病でお薬を飲んでいる人や、妊婦・高齢者などは、かかりつけの医療機関が休業する前に常備薬について相談するようにしてください。市販の解熱鎮痛薬がすすめられない場合もあります。 抗原検査キットは、必ず国が承認した
「医療崩壊」と聞くと、救急車がたくさん病院に搬送されてきて、「点滴をはやく持ってきて!」という災害時の医療を想像されるかもしれませんが、救急車は病院側が受け入れを許可して初めて搬送されるものなので、空きベッドの余裕がなく受け入れが困難な病院は、救急車が搬送されずにむしろ静かです。 今、この「静かな医療崩壊」が水面下で進んでいます。病院が患者さんを受け入れられる空きベッドが相対的に不足しているのです。 「非コロナの救急搬送困難事例」が過去最多専門家会議の資料によると、新型コロナ疑いではない「非コロナ」の救急搬送困難事例は過去最多です(1)(図1)。 図1. 新型コロナの救急搬送困難件数(参考資料1を一部改変) 急病や事故など、新型コロナではない事例で119番に電話しても、スムーズに搬送されないということを意味しています。 これは、過去の波でもなかなか経験されなかった現象です。 院内クラスター
現在新型コロナの検査キットが市販されていますが、新型コロナとインフルエンザの同時検査キットも一部で販売されています。どのようなときに使えばよいのか、また使用上の注意点について書きたいと思います。 同時検査キットが市販開始インフルエンザと新型コロナの同時検査キットはこれまで医療機関で使用されてきました。市販向けは、富士レビオの製品が先駆けて承認を受けていましたが、その後、年末年始の医療逼迫を避けるため、特例的な対応として医療用の同時検査キットも薬局等で販売することが許可されました。 実際に、日本調剤グループでは、12月16日から同時検査キットの市販が開始されています。同グループで取り扱う製品の価格は1回分2,970円で、1人あたり5回分まで購入できるとのことです。 同時検査キット購入時の重要なポイントは、厚労省の承認を受けた製品を買うということです。 医療用の場合「体外診断用医薬品」、一般用
現在、コロナ病棟に入院してくる患者さんのほとんどが高齢者です。特に第8波は、寝たきりの高齢者が多い状況です。新型コロナ以外のさまざまな理由で、入院期間が長くなっています。 80歳以上が半数を占める当院は新型コロナの軽症中等症病床を運用していますが、第8波以降に入院した患者さんの9割以上が高齢者施設クラスター由来です。現在入院している人のほとんどが認知症などで寝たきりになった高齢者で、第1~7波のどの波よりも平均年齢が高いです。 12月15日に開かれた東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料でも、80歳以上が入院の過半数を占めることが分かっています(図1)。 図1. 東京都における入院患者の年代別割合(参考資料1より引用し一部改変) アルファ株やデルタ株の頃は、糖尿病や肥満がある中高年層が肺炎を起こして入院になることが多かったのですが、現在は若い人は軽症ゆえ自宅療養となっています。
12月13日、岩手県、福島県、群馬県では1日あたりの感染者数が過去最多を記録しました。現場ではじわじわと医療逼迫が迫っており、特に東日本ではかなり厳しい状況になりつつあります。入院や手術が停止した機能不全に近い総合病院・大学病院もあります。第8波の現状を報告します。 報告されているより感染者数は多い現在1日あたりの感染者数は、第6波の水準を大きく超えてきました。(図1)。ゆるやかな流行曲線を描いていますが、現場は真綿で首を絞められるかのように医療逼迫がすすんでいます。 図1. 全国の新型コロナ新規陽性者数(筆者作成) 現在、医療機関で陽性と判明した新型コロナの感染者数はカウントしていますが、自己登録についてはあくまで任意となっています。 検査陽性率も高止まりしており、水面下にいる未診断の新型コロナはかなり多いと考えられます。 「医療非常事態宣言」の発出対象地域も東日本を中心に病床使用率が5
第8波になっても、救急搬送困難事例は後を絶ちません。新型コロナの感染者数はじわじわと増えていますが、大量の発熱患者さんが救急受診して医療が逼迫していることだけが理由ではありません。救急医療の逼迫の根本にあるのは、病院の構造的な問題です。 「発熱、酸素飽和度が低下した80代男性です」救急隊から病院にこういう連絡が入ります。かかりつけの病院がある場合はそこに搬送の相談が来ますが、かかりつけの病院がない場合は、救急告示をしている大きめの病院や、地域で定められている当番順へ搬送の受け入れを要請していきます。 第4波あたりから問題視されていましたが、現在、日本全国で救急搬送がうまく回っていません。軽症者が増えているにもかかわらず、第8波になってもいまだに救急搬送困難件数が高止まりを続けています。 コロナ禍以降、救急搬送困難件数は波を経るごとに増えていき、全体の約3分の1が新型コロナ疑い事案となってい
政府は先日成立した改正感染症法に関連して、新型コロナの法律上の分類について「新型インフルエンザ等感染症」からの見直しを検討することを表明しています。「5類」論が高まっていますが、「5類」にすることで世の中はどう変わるのでしょうか? 現在は「2類相当」ではない新型コロナは現在、「新型インフルエンザ等感染症」の枠組みで運用されています。よく「2類相当」という使い方をされていますが、厳密には誤りです。表1の「〇」はあくまで可能な権限を表しており、「現在やっていること」ではありません。 表1. 1~5類感染症と新型インフルエンザ等感染症における対応(筆者作成) 「現在やっていること」は相当骨抜きされました。陽性者のほとんどが軽症であり、入院ではなく自宅療養を可能とし、発生届も一部の重症化リスクが高い陽性者に限定されています。 すでに「2類相当」どころか「5類相当」の扱いに近いという話を以前しました
文部科学省は11月29日、学校での給食時において、適切な新型コロナ感染対策を取っておれば「黙食を求めない」ことを明文化しました。「黙食」について、小学生と医療従事者の観点から私見も踏まえて書きたいと思います。 「黙食」の効果スーパーコンピュータ「富岳」による飲食時のマスクの効果をシミュレーションした結果が、第108回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料として提出されました(1)。 宴会で同じテーブルなどの近い距離にいる場合、感染リスクは高いですが、この経路をマスクでシャットダウンできれば感染リスクを大きく低減できることが示されています(図1)。 図1. マスク着用による宴会の感染リスク低減効果(参考資料1より引用) 「富岳」は、その他飲食店や観光バスのシミュレーションのデータも提示していますが、総合的な飛沫・エアロゾル対策によって、感染リスクは3分の1程度まで減少させることが
さて、気温と湿度が低くなってきました。特にコロナ禍以降、家の中で加湿器を使う人が増えていますが、加湿器の水の中に繁殖する病原微生物によって起こる「加湿器肺」の患者さんが増えています。 「加湿器肺」とは加湿器の売り上げはコロナ禍に入ってから急速に増え、その後も安定して売り上げを維持しています。また、例年1~3月頃はインフルエンザの流行がピークとなる時期で、また、春先はスギ花粉が飛散するため、そろそろ加湿器が本格稼働しているところも多いのではないでしょうか。 相対湿度が低いと、気道の免疫が障害されたり、空気中にウイルスなどの微生物が浮遊しやすくなります(図1)。なので、適正な湿度というものはとても大事です。 図1. 感染対策に相対湿度は重要(筆者作成)(イラストは素材ラボ、イラストACより) さて、加湿器のタンクの中に繁殖した真菌(カビ)や細菌などの微生物が、エアロゾルによって部屋に噴霧され、
塩野義製薬の新型コロナ治療薬「ゾコーバ」がゲームチェンジャーと賞賛され、広く処方されるべきだという見解が目立ちます。重症化リスクのない軽症者に対して有意な効果が確認されたことから、治療選択肢の1つになりますが、効果が過大解釈され、いつでも気軽に処方してもらえるという誤解が広まっています。 そう簡単には処方できない現時点でゾコーバは簡単に処方できません。ゾコーバ登録センターに登録した医療機関や調剤薬局でないと配分できない決まりがあります(図1)。まず2週間はこの運用となります。 図1. ゾコーバの処方の流れ(参考資料1をもとに筆者作成) 薬を処方してもらうために、同意書を記載してもらう必要があります。オンライン診療の場合、口頭での同意も可能ですが、後日同意書の発送が必要になります。 また、医療機関が院外処方せんを発行する場合、調剤薬局に対して「そちらにゾコーバはありますか」という電話による事
ある患者さんに複数の薬剤の処方せんを発行したのですが、そのうちいくつかが「入手できない」ということで、処方自体を取り消したことが最近ありました。薬剤の流通懸念はコロナ禍に入ってじわじわと増えていましたが、現在、全国の医療機関で混乱に近い状況です。一体何が起こっているのでしょうか? 「手に入りません」今年の7月に解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンが「出荷調整」になったことは記憶に新しいと思います(1)。それ以降も手に入りにくい状況が続いていますが、それ以外の様々な薬剤が入手困難になりつつあります。 たとえば、口内炎やのどの痛みに、炎症の原因物質を抑えるトラネキサム酸という薬剤やトローチ製剤が使われることがありますが、これらは現在「出荷調整」がかかっていて、手に入りにくいです。 入院患者さんには、細菌感染症に対して抗菌薬を点滴することがあります。この抗菌薬の一部も現在流通がストップしているもの
今回の新型コロナ第8波、「東高西低」の分布で始まっていますが、現在もっとも厳しいのが北海道です。気温が低く換気不良になりやすいという気候に加え、第7波を小さめの波で切り抜けた地域で逆に感染が多くなっています。さて、北海道の救急医療がなかなか危機的な状況に陥っています。 北海道の新規陽性者と病床使用率が過去最多水準北海道の新規陽性者数は過去最多の約1万人を超えています(図1)。病床使用率も過去最高水準の50%近くに到達しました。 図1. 北海道の新型コロナ新規陽性者数と病床使用率(参考資料1をもとに筆者作成) また、北海道の救急搬送困難(3回以上断られ30分以上留まった)事案数は、先週1週間で238件となっており、これも過去最多を記録しています(2)(図2)。 図2. 北海道の救急困難事案数(参考資料2より引用) さらに基幹病院が大規模なクラスターを起こしており、待機手術なども含めた通常医療
新型コロナ第8波が到来しています。とにかく、高齢者施設からの入院要請が多い状況です。なぜここまで高齢者施設でクラスターが増えてしまうのでしょうか? 新型コロナのクラスターが増加第6波以降、新型コロナで入院する患者さんのうち高齢者が占める割合が増えています(1)(図1)。現在も、コロナ病棟に入院してくる患者さんのほとんどが高齢者です。 図1. 年代別入院患者数の各波の比較(参考資料1より引用) 11月13日までの医療機関および高齢者施設を含む福祉施設のクラスター発生数は、じわじわと増加しており(図2)、施設クラスターを起こしてコロナ病棟に入院する高齢者も増えつつあります。 図2. 医療機関および福祉施設のクラスター(参考資料2をもとに作成) コロナ禍に入って約3年が経過しますが、なかなか医療機関や施設クラスターはなくなりません。なぜでしょうか? 高齢者施設の感染対策の難しさ高齢者施設では医療
波の大きさはまだ分かりませんが、新型コロナ第8波がやってきました。「すべての医療機関が新型コロナを診れば、『第8波だ』と騒がなくてもよいのでは?」という意見をよく目にするようになりました。コロナ禍前の発熱診療と現在を比較しながら、私見を交えて書きたいと思います。 致死率は大きく低下した新型コロナは、感染性と致死率の高さから、動線分離が求められてきました。ワクチンの接種が進み、ウイルスも変異し続け、致死率は大きく低下しました。 波を経るごとに、「インフルエンザのようにすべての医療機関で新型コロナを診るべき」という意見を目にすることが増えていきました。 たしかにもっともな意見だと思います。 ただ、現在「新型コロナを診ていない医療機関」の中には、たとえば、眼科や皮膚科なども含まれています。発熱患者さんを対応する機能を想定していないクリニックに対して、新型コロナを診療すべしとまでは個人的に思いませ
新型コロナの波の先行指標として「発熱相談件数」「検査陽性率」があります。これらが増加に転じてきました。第8波が始まったと考えられますが、ピークはいつ頃が想定されるでしょうか。 「発熱相談件数」「検査陽性率」の増加11月5日の全国の新型コロナ新規陽性者数は7万4,170人と増加傾向です。この1~2週間でコロナ病床の使用率がじわじわ増加しており、第8波の始まりを見ていることは間違いありません。 新型コロナの波の先行指標である「発熱相談件数」や「検査陽性率」を、東京都は毎日開示しています。第7波が落ち着いた10月以降は低い水準でしたが、このたび再びいずれも増加に転じています。 東京都の「発熱相談件数」は9月25日以来となる1日2,000件超えになっています(1)。同じく「検査陽性率」も、27.3%まで上昇しています(2)(図1)。検査陽性率は、数値が高いほど見逃されている新型コロナが多いことを意
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『news.yahoo.co.jp』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く