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イラストはこれだけブームになっているのに関わらず、「評論」というジャンルはほぼ存在しない。 近年の新興カルチャーでも、VOCALOIDなどの音楽やVTuberといった文化は調べればいくつも評論を見つけることができるし、ジャンルとしても少なからず存在している。 それ以上に歴史のあるイラストにおいて、なぜここまでイラストを語る言説が少ないのか。その背景や事情を分析する。 目次ユニークさや素晴らしさだけでは、アートではないイラストに評論が存在しない、2つの理由イラストに賛否両論は存在しない?(褒めてます)ただし、教本だけは批判に晒されるなぜ、評論が必要なのか?──100年後にも残る言葉を ユニークさや素晴らしさだけでは、アートではない 少し前に、世界的アーティストの村上隆氏が登場したYouTube番組「ReHacQ」が話題になりました。動画の中で村上隆氏は「100年後はアニメや漫画は歴史の中で最
『ゲームの王国』『地図と拳』知られる作家・小川哲。折に触れてゲーム文化について洞察してきた彼はどのようにゲームに親しんできたのか。 のめり込んだ傑作『シヴィライゼーション』やサバイバルクラフト、アナログゲームへのこだわりから、その先にある世界まで。 気鋭の小説家、小川哲。 満州を巡って繰り広げられる歴史巨編『地図と拳』が第168回直木賞を受賞。クイズ番組で起きた珍事を掘り下げる小説『君のクイズ』が第76回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を受賞した、才気あふれる作家だ。 小川氏は小説家としてのキャリアのなかで、ポル・ポトの圧政下を独自のゲーム理論で生き抜くカンボジアの天才少年を描いた『ゲームの王国』といった小説をはじめ、折に触れてゲーム文化について洞察してきた。 今回、小川氏と兼ねてから親交があったゲームシナリオライターである筆者・各務都心が、小川氏のゲーム観を根掘り葉掘りインタビ
昨今規制の煽りを受けているアダルト業界。タレントとメーカーなとの間で契約の締結が必須になるなど多数の制限が加わったAV新法に、決済会社がプラットフォームでクレジットカードを使用できなくするなどの被害に遭っており、以前よりも制約された状態に置かれている。 一方、その中でアダルトを専門に活動するVTuberの一群であるAVTuberは、アダルト向けのライブ・プラットフォームとして知られるFC2のBANが相次いでいた。 AVTuberはどのような状況に置かれているか。どんな対応を迫られているのか。 今回、自身でもAVTuberの事務所を運営しており、現在のインディーズなAVが当たり前になる以前からAVを個人で制作、「同人AV」という単語をつくった主でもあるピンキーwebさんに取材。 クレジットカード会社がアダルトコンテンツから撤退したように見える業界の背景や、FC2のBAN事情と、その代替となる
これまでの連載では、「ケア誘いビジネス」としてのVTuberのビジネス構造を論じ、第二回では、VTuberが労働者として直面する「おもちゃ的労働」の構造を明らかにした。 私たちが次に考えなければならないのは、「私たち視聴者とVTuberのオルタナティブな関係性」である。なぜなら、これらに代表されるようなスポイル的鑑賞──VTuberの活動を邪魔したり、イメージを毀損したり、他のファンの鑑賞を阻害したりするようなVTuberの鑑賞──が前提とするのは、バッドケアの対象としてVTuberに過剰なケアをするにせよ、インターネットのおもちゃとしてVTuberで遊ぶにせよ、どちらもたとえ産業構造や事務所が必要とするにせよ、VTuberの心身を疲弊させる持続不可能な関係性だからだ。 もしも私たちがほんとうにVTuberをケアし、彼らと遊び続けたいと思うのならば、時にはVTuberを引退や卒業に追い込む
『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(以下『マギレコ』)というアプリゲームがある。いや、あった。 2017年8月22日よりソニーミュージック傘下のアニプレックスとゲーム開発会社・f4samuraiとの協業体制でサービスを開始し、ゲーム内ムービーの制作は『魔法少女まどか☆マギカ』(以下『まどマギ』)から引き続き、アニメーション制作会社・シャフトが担当した。 メインストーリーは大きく第1部「幸福の魔女編」と第2部「終結の百禍編」に分かれている。2020年から2022年にかけては、第1部の内容をベースに同じくシャフト制作による『マギレコ』のテレビシリーズ(以下アニメ版)も放送され、『まどマギ』がアート方面からも評価される一因となった「魔女空間」デザイン担当の劇団イヌカレー・泥犬が、総監督という立場で関わったことも話題となった。 そして2024年7月31日にアプリ本体が、約7年間の歴史に
声優で、バーチャルYouTuber(VTuber)のパイオニア・キズナアイのボイスモデルとして活動してきた春日望さんへの独占取材。 自身の声優に至るまでの経緯や、これまで語られることがあまりなかったキズナアイのオーディション秘話。そして分人騒動の裏話。 そんな話を赤裸々に語る春日さん。後編では「キズナアイのアニメ化」とも発表され、実際にはキズナアイを目指す少女が主人公に描かれた『絆のアリル』から、バーチャルYouTuberカルチャーにおいてのキズナアイについてなどをうかがった。 「VTuberとはなにか?」「VTuberは生身の肉体を晒すべきなのか?」といった議論が好きな視聴者は是非最後まで読んでいただきたい。 目次キズナアイ、スリープから再始動へ?アイちゃんに全振りしたかった自分がいた バーチャルYouTuberとVTuberとキズナアイ歌い手文化や生放送文化──春日望から見たバーチャル
栄枯盛衰、毀誉褒貶の激しいVTuberシーン。激動の時代を、渦中からプレイヤー視点で解説し、その歴史を刻む連載「おしえて、林檎様!」。 今回も、VTuber界で酸いも甘いも噛み分けてきた、吸血鬼と人間のハイブリッドレディこと九条林檎さんに聞いていきます。 第3回目のテーマは、今に至るバーチャルYouTuberの始祖的存在「Kizuna AI」(キズナアイ)さんです。 6月30日にキズナアイさんが様々なメッセージを届ける意味深な動画が公開され、2022年2月から2年ぶりに活動復帰するのでは? と囁かれています。以降目立った動きはありませんが、依然動向は注視されています。 キズナアイとは何だったのか? 「関わるのをやめようと思ったことも」春日望が初めて語る誕生秘話 バーチャルYouTuber(VTuber)は「影の立役者」によって成り立っている。名前を知られることのないファンも存在としては大き
近年はイラストレーターの個展が増えてきた。これまでのギャラリーで行われてきた個展とは違い、企業が全面的にバックアップをするというスタイルである。 予算をかけて設計され、こわだり抜かれた展示──一見華やかで、動員も見込めそうに思えることだろう。ただし、そこには課題も横たわっている。 今回は、ネット中心で活動してきたイラストレーターが展示を行うモチベーション、そして展示企画の持つ課題について考えていく。 目次なぜ、絵描きは個展をやるのか?表現への探究心、プロダクトへのこだわり──イラストレーターが個展をやる理由現代においてイラスト個展を成功に導くためには、チームが必要不可欠個展は、金がかかる。そして、回収はさらに難しい数百万円のお金は、どこから出ているのか?個展の収益モデル 作家の取り分やギャラリーの取り分は?デスマーチ、トラブル、イベント対策……展示企画の課題作家ではなく、企画を立てるこれか
バーチャルYouTuber(VTuber)は「影の立役者」によって成り立っている。名前を知られることのないファンも存在としては大きい。しかし、名前の出ないスタッフ、演者たちは、まさに業界を裏で支える影の存在として、どこかに居続けている。 その必要不可欠な存在の中で、とても大きな貢献をしているのにも関わらず、表に出ることを本当は望んでいなかった人物がいる。それは、バーチャルYouTuberのパイオニア・キズナアイさんのボイスモデル、春日望さんである。 2020年、とあることをきっかけにキズナアイさんに携わっていることを正式に発表。2022年にキズナアイさんはスリープ(無期限活動休止)をしており、先日から謎の生配信を行っている。 春日望さんはあの頃何を考え感じていたのか? キズナアイプロジェクトにどのように携わってきたのか? そして今、どんな夢を思い描いているのか? 独占インタビューを前後編で
「インターネットのおもちゃ」というスラングがある。インターネット上で、人々のからかいの対象になること。例えば、VTuberである赤見かるびは配信で次のような印象的な言葉を残している。 ほんとにさみんな炎上のネタ好きだよね。って考えるとさ、誰かが炎上した時ってさ、インターネットであーぎゃー言うじゃん。 そうやって言うの楽しいんでしょ〔視聴者の〕みんな、実は。 いやすごいよ。〔VTuberやYouTuberは〕体張ってみんな。 かるびも思ったよ。みんながそれで笑顔になるならいいよって、思う。それで、おもしろいって。炎上ネタをいじって、おもしろいって思ってくれる人がいるならいいやって。 私、配信〔業〕を始めるときに、相当な、覚悟を決めたからね。 私はインターネットのおもちゃになる。それを覚悟して配信を始めたから。(赤見 2022、強調と〔〕の追加は筆者) VTuberをインターネットのおもちゃに
華々しいデビューを飾る者がいる裏で、人知れず表舞台から去っていく者もいる。激動のVTuberシーンの“今”をアーカイブすることで、後世に歴史的資料として残すことを試みる連載「おしえて、林檎様!」。 今回も吸血鬼と人間のハイブリッドレディこと九条林檎さんに、VTuberシーンのリアルを聞いていきます。 今回触れるトピック ・企業が著作権(IP)を売らないことのメリット ・VTuberと企業の認識がズレやすいマネジメントの範囲 ・『学園アイドルマスター』のプロデューサーが凄い ・メタバースの何が終わって、何が終わっていないのか ・VRChatのスマホ対応と、clusterへの影響 ・VTuberとVRシーンの距離はなぜ遠い? 第2回のテーマは「VTuberの著作権」。以前所属していたAVATAR2.0 Projectから、自身の著作権を買い取っていたことが話題になった当人に、VTuberの著作
クイズには、構造的な課題がある? 知識集団・QuizKnock。東大のクイズ研究会を中心に、Webメディアから始まりYouTubeチャンネルを設立した。いまやテレビでの活躍を見ない日はないほどの売れっ子で、YouTubeチャンネルの登録者数は225万人を誇る。 約3年間クイズ番組「東大王」大将もつとめたエンジニアで数理科学博士号を持つ鶴崎修功さん、「競技クイズ界最強の男」の異名を持つクイズプレイヤーにして、QuizKnockを運営する株式会社batonで広報を担当する徳久倫康さんの2人にお越しいただいた。 「楽しいから始まる学び」をテーマに活動するQuizKnockだが、一方でその胸中には、クイズの絶対視とはほど遠い、複雑な葛藤もある。 マスメディアで見せる闊達な様子とは裏腹に、彼らは常に自問自答を続けてきた──「そもそもクイズとは何なのか」「クイズの公平さはどのように保たれるべきなのか」
イラスト評論「ネット絵学」プロジェクトを推進してきたイラストレーター・虎硬がおくる新連載「令和のネット絵学」。 今回は、イラストレーターであり、広告や画集などを手掛けるプランナー・ディレクターでもある筆者が、イラストレーターに限らず、クリエイターに仕事を頼む「発注」の極意を明かします。 目次仕事は必ず「発注」から生まれる発注のお作法は、この10年で進化したどんなに忙しくても”あの人のため”なら予定は無限に空くクリエイターのモチベーション3原則発注とは、力学を理解した上で設計をすることである発注成功のための、たった一つの鍵考えて、考えて、考えて、言葉を尽くす主役はあくまで企画、それでもストライカーには劇的なゴールを! 仕事は必ず「発注」から生まれる イラストに限らず、仕事は「発注」から生まれます。誰に、何を、どのようにお願いするかが、プロジェクトにおけるすべてと言っても過言ではないでしょう。
──あなたにとってアイドルとは? 「実生活において誰かを愛したいのに愛せないみたいな状況が多い。 振り上げた愛のおろし先が見当たらない時に人々の愛を受けて入れてくれる場所。お金に代えて」 ある街頭インタビューに答えて。東京大学大学院生(当時)、足立伊織 愛と暴力のメビウスの輪 「仕方ねぇよバカ女なんだから」 「母親がいないせいで精神が未熟なんだろ」 このひどい言葉は文脈なしで読んでも人をぎょっとさせる。 これは、あるVTuberに対する名誉毀損に当たるとして、開示請求を受けた書き込みである(大阪地方裁判所第16民事部令和3年(ワ)第10340号発信者情報開示請求事件、令和4年8月31日判決言渡し)。 書き込んだ者を、私たちは「アンチ」と呼ぶだろう。当該のVTuberを傷つけるひどい行為をした、と。書き込んだ者はよほど当該のVTuberが嫌いなのだろう、と。 しかし、そう簡単な話ではない。こ
『League of Legends(LoL)』を運営するRiot Gamesは6月12日、競技シーン「LoL Esports」における2025年の再編計画を発表した。 新たな3つ目の国際大会の追加や、世界で開催されている各リーグ間でのスケジュールの統一などが発表されている中で、プレイヤーからの注目を特に集めている項目がある。 それは「APAC(アジア太平洋)とAmericas(南北アメリカ)における、複数地域にまたがるリーグの変更計画」だ。 これについて『LoL』プレイヤーや配信者などから、日本の『LoL』の競技シーンの行く末を危惧するものをはじめ、様々な意見が飛び交っている。 「LoL Esports」の新計画などRiot Gamesの発表 APAC(アジア太平洋)の国際リーグが新設する「LoL Esports」 「LoL Esports」は2025年、日本も所属するAPAC地域に、昇
イラスト評論「ネット絵学」プロジェクトを推進してきたイラストレーター・虎硬がおくる新連載「令和のネット絵学」。 今回は、イラストレーターが食っていくために必要なスキルについて。 SNS上ではしばしば、営業力やコミュニケーション能力などが取り沙汰されますが、筆者は断言しています。 結局は画力が全てである。 目次結局は画力が全てである迂回手段としての”コミュニケーション能力”画力不足は、あらゆる地獄を引き寄せる発注側の見極めスキルも求められる画力と同等に重要なものがあるとしたら、メンタルコントロール企画ができる絵描きはめちゃくちゃ強いコミュ力は画力には敵わない 結局は画力が全てである 職業イラストレーターにとっての必要なスキルは、尽きない話題の一つです。 SNSなどでは、職業イラストレーターに必要なスキルとして営業力、コミュニケーション能力や契約書の読み方がよく取り上げられます。もちろんこれら
大手事務所の話題が華々しく飛び交うVTuber業界にも、時折、思わぬ方角から「期待の新星」がやってくる。「ミリプロ」所属VTuber・甘狼このみも、その一人だろう。 イラストレーターとしてのスキルを活かしたショート動画が好評を博し、2022年デビューの個人勢ながら、現在のチャンネル登録者数は50万人超。2023年にはVTuber事務所「ミリプロ」を立ち上げ、今年に入ってからは法人化に踏み込むなど、積極的な活動を続けている。 そして、小学館『ちゃお』が実施した「好きなVTuberアンケート」にて、彼女は2位にランクインした。1位はホロライブの兎田ぺこら、3位も同じくホロライブの宝鐘マリン。国内でもトップクラスの強豪に挟まれた新星の名に、多くの人が驚かされたことだろうし、こうも感じただろう──「何者なのだ?」と。 そこで今回、様々な方角から注目を集める甘狼このみへ、ロングインタビューを実施した
イラスト評論「ネット絵学」プロジェクトを推進してきたイラストレーター・虎硬がおくる新連載「令和のネット絵学」。 今回は日本の美術教育について、受験生、大学生、そして教員と運営目線で、現状を分析する。 美大受験と言えば、近年では、美大生のリアルな姿を描いた漫画『ブルーピリオド』も話題になったが、コロナ禍で学生の数は減り、そしてまた増えてきている。東京藝大では実は、2024年度の志望者数は過去10年でも最多級となっている。 こういった現状を踏まえて、現場目線の分析を展開する。 目次高まる美大人気、その背景は?美大卒のクリエイター、実はこんなにいるそもそも美大ってなに? 美大原理主義とは?予備校なくして合格なし? お金に時間に、美大受験の高い壁大学教育は放置が基本 では「美大ってなんのために行くの?」『ブルーピリオド』が描いてみせた”泥臭い格好良さ”美大で学べるものの本質コロナ渦以降、フィジカル
段々と日が落ちてきた。周りが薄暗くなり、ralphの鋭い眼球が暗闇の中で光る。通常、アーティストへのインタビューというのは1時間程度で行なわれることが多いが、今回は3時間にも及んだ。普通であれば話さないようなことも、徐々に空気がほぐされていくことで少しずつ口を開いてくれる。 そうなってくると、次に訊きたいテーマとしてはやはり楽曲制作についてだろう。どのようにリリックが書かれているのか、超絶的なラップスキルはいかにして生まれているのか。“硬い”日本語に見出す楽しさとフロウへの洞察、ラップの語彙における“軽重”の層、脈絡を超える「絵画的」な言語と「小説的」な自身の言語の違い、文脈を紡ぐ楽曲とパフォーマンスの映画的なストーリーテリング──。謎に包まれた曲づくりの詳細に踏み込んでいくと、自身を「言語に頼るラッパー」と位置付け、音と言語の構造分析を好むという、ralphならではの論理と感覚の絶妙なバ
業界に名を馳せる個性的なタレントを輩出しつつも、その全員が活動を終了し、“失敗したVTuber事務所”となったライヴラリ。その運営企業である株式会社ゆにクリエイトの代表取締役・望月陽光氏への独占取材記事となる。 前編からの繰り返しとなるが、成功から得られる知見と同等かそれ以上に、失敗から学べることも多い。 なぜVTuber事務所「ライヴラリ」は崩壊した? 代表自ら語るその経緯 『ライヴラリ』というVTuber事務所がある──いや“あった”と書くほうが、実態には即しているだろうか。「今日は何の日」という動… そして、得てして失敗談は語られず粛々と藪の中に溶けていくものだが、今も生き残っている当事者が存在する成功談よりも、本来は失敗談こそが残されるべきである。それは、VTuberファンのためというよりも、業界の健全な未来について考えるためにだ。 前編では、ゆにクリエイトと『ライヴラリ』の立ち上
芸術活動を支援する「骨董通り法律事務所」に所属する寺内康介弁護士の協力のもと、連載中の「ポップカルチャー×法律 Q&A」シリーズ。 第4回は、音楽、とりわけヒップホップでよく耳にする(そして争点のもとにもなりがちな)制作手法である「サンプリング」をテーマに取り上げる。 サンプリングは、他者の音源やメロディを借用して新たな楽曲を生み出す手法として、ヒップホップ文化に欠かせない。だが、法的には複雑な問題を孕んでいるのも実情だ。「サンプリング」「オマージュ」「パクリ」……ラッパー同士の衝突、あるいはファン同士の感想戦でも、各人が己の定義のもとに語り合っている。 日本のヒップホップシーンにおいては、近年では「パクリ」疑惑に端を発するディスからビーフ(互いに曲で批判すること)に発展したBAD HOPと舐達麻の騒動も記憶に新しい(参考)。あるいは、ロックバンド・Novelbrightのボーカルをつとめ
イラスト評論「ネット絵学」プロジェクトを推進してきたイラストレーター・虎硬がおくる連載「令和のネット絵学」。 第4章では創作物の持つ、思想やその変遷を追いかけていこう。 社会の中でイラストを受容するためにはルールが必要で、創造者に敬意を払われる必要がある。一方でクリエイティブが批判の対象になることもあり、その見方も時代によって大きく異なる。 目次思想とミーム──私たちは自分と同じ考えを持つ人間を増やしたいキリ番に相互リンク、掲示板での挨拶……個人サイトでの古のルール整備毒吐きネットマナーの登場──荒らしへの対処法、皮肉な結末「絵を数字化」することの功罪イラストと嫌儲思想 2ch発の、インターネットの空気感収益化の安全性──つい10年前まで、投げ銭も嫌われていた止むことがないトレパク騒動 冤罪を助長する被害者感情10年前では考えられなかった、中国、韓国クリエイティブへの評価ミームを遡って、歴
『ライヴラリ』というVTuber事務所がある──いや“あった”と書くほうが、実態には即しているだろうか。 「今日は何の日」という動画でVTuber黎明期を彩った赤月ゆに。アダルトゲームや下ネタを臆せずくり出し話題をさらった餅月ひまり。「ものづくり」という特技が輝いた図月つくる。オカルト関連のトピックを仕掛けていった無月めもり──個性豊かで、今では珍しい動画中心の活動を展開していた所属タレントは、全員姿を消した。 そこに至るまでの道程は平坦とは言い難い。特に餅月ひまりは、クラウドファンディングの行く末が不安視され、ファンの中には返金をめぐって訴訟を計画する者まで現れるほどだ。公式声明も的確に発信されたとは言えず、混迷を極めた末に、ライヴラリはもぬけの殻となった。 客観的に見ても、まさに「VTuber運営の失敗例」である。ファンでなくとも、批判の矛先を向けるのも致し方ないだろう。 だが、失敗の
スマートフォンゲームの中には、社会問題をモチーフとした作品がある。そしてそれは『リバース:1999』も例外ではない。 そのテーマを語ることはリスクを伴う。どのようなリスクが存在するのか。読みさえすれば納得していただけると思う。 まず最初に香港製作のSF映画『未来戦記』の話をさせてほしい。香港の会社、香港のVFXスタジオでつくられたSF超大作である本作は、作中に出てくる「共産主義の脅威をメタファーとして描いた50年代のSFホラー映画」に対し、香港の名優ラウ・チンワンが「結末は自分たちで決める!」と啖呵を切る。 これは、香港の未来は自分たちで決めるという決意に他ならない。この話は、今からする『リバース:1999』の話と無関係ではない。 『リバース:1999』はスマートフォンおよびPC向けに配信されている世紀末タイムリバースRPGである。開発・運営は中国広東省広州市に拠点を置くBLUEPOCH。
『呪術廻戦』(2018–)の主人公・虎杖悠仁はあまり主人公らしくないな、と感じることがある。 あくまで個人的な印象にすぎないと思っていたのだが、試しにインターネットで検索してみると、似たような感想がいくつかヒットする。一部の読者のあいだではある程度共有されている感覚なのだろうか。 もしそうだとしたら、虎杖に“主人公らしさ”が感じられないのはなぜだろうか。いろいろと理由は挙げられるものの、ここでは1980年代以降の少年漫画の主人公類型という観点から考えてみたい。 結論から言うと、虎杖があまり主人公らしく感じられないのは、彼がこれまでの少年漫画のパラダイムから逸脱する“第三世代の原子力少年”だからではないか。 目次“自分では制御しきれない力を秘めた少年”という主人公類型からの逸脱「原子力少年」第一世代の命題と、第二世代が切り拓いた可能性『呪術廻戦』が徹底的に否定する“原子力の平和利用”という成
本稿では、しょぼすけさん発祥の企画『Grand Theft Auto V(グランド・セフト・オートV、以下GTAV)』の「ストリートグラフィティ ロールプレイ」(ストグラ)に関するインタビュー後編をお届けする。 TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)や人狼ゲームの文化がある程度根付いているのに、なぜ日本では『GTAV』のロールプレイは流行っていないのか? こんなに面白いものを、なぜ誰もやっていないのか? 純粋な疑問を抱き、強烈な熱意に後押しされたしょぼすけさん。2022年夏、彼はまっさらの状態から「ストグラ」の立ち上げにたった2人で挑戦した。 特殊なプレイスタイルゆえに生じるコミュニティからの不満。従来のサーバー運営では考えられなかった問題の連続。様々な苦労を乗り越え、しょぼすけさんが実現させた「ストグラ」の到達点に迫る。 目次「ストグラ」には無限の可能性が秘められているMMOR
「comico」や「ピッコマ」「LINEマンガ」などの各種プラットフォームから拡散され、2020年代では日本のポップカルチャーにおいても注目のメディアミックスの資源となった韓国発の漫画形式・Webtoon(ウェブトゥーン)。 2024年初頭から韓国WebToon原作のTVアニメ『俺だけレベルアップな件』『外科医エリーゼ』が絶賛放映中。4月からは同じく人気作の『喧嘩独学』が放映される予定です。 『喧嘩独学』レビュー 金も力も持ってない男が、いじめよりも苦しむ”モノ” 「陰キャがこの子とデート!? だがクラスメイトに絡まれ敗北…」という漫画の広告を見たことがあるだろうか? 一時期… 「陰キャがこの子とデート!? だがクラスメイトに絡まれ敗北…」という漫画の広告を見たことがあるだろうか? 2023年には『彼女が公爵邸に行った理由』『帰還者の魔法は特別です』などが、その前には『神之塔』『ゴッド・オ
プロ・アマ、営利・非営利、ジャンルを問わず、つくり手が「自らが〈文学〉と信じるもの」を自分で販売する場として、規模を拡大し続けている「文学フリマ」。2002年にスタートしたこの展示即売会は、現在は九州〜北海道までの全国8箇所、年間合計9回にわたって開催されている。参加者たちは略して「文フリ」とよく呼ぶ。 出店者・来場者の増加を背景に、2024年5月19日(日)開催の「文学フリマ東京38」からは東京開催時の一般入場を有料化。12月1日(日)開催の「文学フリマ東京39」は東京ビッグサイトでの開催も発表され話題となった。 今、文学フリマは文学を志す人々にとって、作品発表やビジネスにおいて、既存の商業出版だけではない「オルタナティブな場」として機能し始めているのかもしれない──この問いを掘り下げ、文学にまつわる人々にとっての思考の補助線をまとめようと、有料化される前の最後の「文学フリマ東京37」の
しょぼすけさんが立ち上げたのは、『Grand Theft Auto V(グランド・セフト・オートV、以下GTAV)』を題材にした企画「ストリートグラフィティ ロールプレイ」。 通称「ストグラ」と呼ばれるこのサーバーには、ストリーマー、プロゲーマー、TRPGプレイヤーなど、経歴や界隈を問わず様々な活動者が参加。ゲーム内の舞台「ロスサントス」の住人として、役職や各々が設定したキャラクターに見合う”ロールプレイ”に主軸が置かれている。 本稿執筆時点では、Twitchの総フォロワー数が130万人を越えるストリーマー・SHAKAさんや、『呪術廻戦』の「五条悟」役などで知られる声優・中村悠一さんも参加しており、推し参加者の活躍を心待ちにしているファン層に支持され、コミュニティの垣根を越えた一大ムーブメントを形成。 1月6日には、マクドナルド役で知られるライトさんが主催し、ストグラ初となるオフラインイベ
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