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レビュー 南鳥島沖のレアアース、半分以上が貴重な元素類 国産化には課題も山積 2026.08.18 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト 地球 材料・産業 日本最東端の南鳥島沖の深海底から回収したレアアースについて、総量の半分以上がハイテク製品などに有用で貴重な元素類の「中重(ちゅうじゅう)レアアース」であることが確認された。内閣府と海洋研究開発機構(JAMSTEC)が7月24日、地球深部探査船「ちきゅう」による採鉱試験での回収物の分析結果として発表した。今回の中重レアアースはイットリウムなどで、回収した総量は明らかにされていない。2027年2月から同じ海域で本格的な採鉱試験を実施する予定という。 日本はレアアースの供給の多くを中国に依存しているため、より安定した供給元の確保が経済安全保障上の重要課題となっている。今回の試験結果を受けて国産化への期待が膨らむが、商業ベースで採算に乗せるには大量
沖縄の深海熱水噴出孔の近くで生息する微生物が、電気エネルギーを用いて二酸化炭素(CO2)から有機物を作り出して増殖することを、海洋研究開発機構(JAMSTEC)などのグループが実証した。「光合成」の「光」を「電気」に置き換えたような合成反応であり、光や有機物が少ない環境でも微弱な電気を利用すれば、生命活動を維持できることを意味しているという。 地球を覆う岩盤であるプレートの境界がある深い海底には、しみこんだ海水が地熱によって温められ、高温の水となって噴き出す熱水噴出孔が存在する。噴出孔の周りには、冷えて析出した沈殿物が煙突状に堆積した「チムニー(煙突)」ができる。 実験室で培養している微生物には、細胞内に取り込んだ電気をエネルギーとして、CO2から有機物を「電気合成」するものがいることが分かっている。ただ、自然環境で電気合成をしている微生物がいるのかははっきりしていなかった。 JAMSTE
ニュース 伊豆諸島「鳥島」のアホウドリ、絶滅の危機から1万羽まで回復 山階鳥類研究所 2026.06.25 生物 乱獲によって戦後に一度は絶滅宣言された、東京から約600キロメートル南にある伊豆諸島「鳥島」のアホウドリが、保全活動によって今繁殖期(2025-26年)に1万羽を超えるまで個体数が回復したと山階鳥類研究所が発表した。ほかの島の繁殖地での個体数を増やしていければ、絶滅の危機から脱して、環境省レッドリストで選定されている絶滅危惧II類から準絶滅危惧種へ移行する可能性があるという。 アホウドリは、成鳥が両翼を広げた長さが2メートルを超え、体重は4~5キロある。日本では最大級の海鳥だ。夏の間はずっと海の上で生活しているが、秋になると繁殖地に戻って冬に集団で子育てをする。地上での動きの鈍重さや警戒心が薄く人にすぐ捕まってしまうことから、アホウドリと呼ばれるようになったという説がある。 1
レビュー 過去最多のクマ被害で国や自治体が対策強化 人間との共存探る新たな知恵を 2026.06.08 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト 生物 クマ被害が深刻なレベルになり社会問題となっている。これまで人間が遭遇するとしても山奥などに限られ、ぬいぐるみの「テディベア」やキャラクター「くまのプーさん」などに代表される親しみやすいイメージもあった。その野生動物のクマが、登山客らが行き来する山道ばかりでなく、住宅地や学校周辺、観光地などでも目撃されるようになった。人間との遭遇機会が増えただけでなく、人身被害は過去最多、死亡例も最悪水準で報告されている。 事態を重視した環境省や自治体などは住民らの安全対策などを強化し、被害を減らすためにクマの個体数管理に乗り出した。出没急増の背景としてクマの生息域の拡大などいくつかの要因が指摘されているが、人間とクマの適切な距離をどのように「棲み分ける」か、新たな
有効で根本的な治療法がない慢性期の脳性まひでも、乳歯の幹細胞を使うと改善が見られることを、名古屋大学などの研究グループがラットモデルでの実験で明らかにした。現在、同大医学部附属病院での臨床試験に移行している。乳歯は永久歯に生えかわる際に抜けるため、体への負担が小さく、1本の歯から多くの幹細胞が培養できる利点もある。幹細胞自体に免疫調整能力があるため免疫拒絶が起こりにくく、免疫抑制剤を使わなくても良いため、医療経済の面からも期待される。 名大病院総合周産期母子医療センターの佐藤義朗センター長(小児科学・新生児学)らの研究グループは、赤ちゃんが産まれる前後に低酸素脳症になることで引き起こされる、脳性まひの治療法についての研究を進めてきた。脳性まひになると、歩行に障害が起こったり、食事の際に噛んで飲み込むのが困難になったりと、様々な症状が生じる。国内では500人に1人ほどが発症すると見積もられて
レビュー 日本で珍しく増え続けるクマ、実はヒトを避けて暮らしている? 2026.05.21 滝山展代 / サイエンスポータル編集部 生物 科学と社会 クマによる人身や農地への被害が相次いでいる。クマとヒトの生活圏は本来であれば重なりがなく、世界の流れで見るとクマは減少傾向にある。しかし、日本では珍しく個体数が増え続け、ヒトがクマに襲われるニュースが流れる。いま、国内のクマはどのような生態なのだろうか。最新のツキノワグマ・ヒグマのクマ研究から見えてきたのは、実際にはクマはヒトを避けるようにして暮らしている実態だった。 ツキノワグマにGPSを付けて個体の動きを観察 「一般的にクマは人間を避けて行動していました。クマがヒトをエサにするなら、道路を避ける行動の説明が付きません」。こう話すのは、東京農工大学でクマの生態を研究しているペク・スンユン特任助教(野生動物生態学)だ。ペクさんは現在、銅山で知
ニュース テーブル状サンゴが横須賀で生息、北限記録を30キロ更新 立教大などが調査 2026.02.05 神奈川県横須賀市の佐島漁港でテーブル状サンゴが発見され、立教大学などの調査で日本国内の生息地の北限記録を約30キロメートル更新したことが分かった。これまでこの種類は、太平洋側では房総半島の先端(千葉県)、日本海側では対馬(長崎県)が北限だった。テーブル状サンゴは通常、台湾や沖縄の海域に生息しており、研究者は「ストレスに強い個体が北上しているのではないか。サンゴに共生する植物プランクトンの褐虫藻が強いのか、サンゴ自体が強いのか調べたい」と話している。 立教大学環境学部開設準備室の大久保奈弥教授(サンゴの生物学)は、藤沢市にある行きつけの寿司屋で、「漁師がサンゴらしきものを発見した」と聞き、調査を始めることにした。漁師らは「4、5年前からサンゴが増えてきた」と話しているという。 佐島漁港か
レポート 誕生から100年、未来を変える「量子科学」 理研講演会で研究の魅力を紹介 2026.01.19 池田亜希子 / サイエンスライター 理化学研究所(理研)は「世界が抱える課題の解決には科学・技術の力がますます重要になる」と考え、毎年、中高大学生を対象にした科学講演会を催している。47回目となった昨年は、国連が2025年を「国際量子科学技術年」に定めたのに合わせ、「No 量子,No Life!」をテーマに掲げた。私たちの生活にも生かされつつある量子科学は、今後も多くの技術につながると期待される。量子コンピューターをはじめとする理研の専門家が最先端の研究を紹介した(25年9月7日、東京・お台場の日本科学未来館で開催)。 ミクロの世界の現象を説明する「量子力学」 リンゴが木から落ちる、太陽の周りを惑星が回る――。私たちが日常的に目にする現象は、ニュートン力学(古典力学)によって説明できる
ニュース 銀河のようにきらめく尿路結石の結晶、隕石研究の手法でヒトの体内環境を読み解く 2025.11.04 尿路結石を薄片にしたものの偏光顕微鏡像。光の屈折率の違いが色の違いとなる(2023年 NIKON JOICO AWARD 芸術特別賞、大阪大学の丸山美帆子教授提供) 腎臓内で形成された結石が、尿の通り道である尿管を詰まらせる尿路結石。背中などに強烈な痛みを起こす。隕石研究法を応用し、20~30マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルほどの厚みにした結石の表面を研磨し、偏光顕微鏡でのぞくと、まるで宇宙の銀河のようにきらめく像が現れる。 「カラフルなピンクや青の部分は、シュウ酸カルシウム二水和物の結晶で、茶色っぽいところは一水和物じゃないかな」と、尿路結石の形成機序の解明や発症予測について研究を主導する大阪大学工学研究科の丸山美帆子教授が話す。 尿路結石の研究の歴史は古い。1937
織田信長や足利義政などが求め、切り取ったとされる、正倉院に収蔵の「蘭奢待(らんじゃたい)」という香木の香りの成分と、木が生えていた年代が判明した。専門家が大型放射光施設「SPring-8」やガスクロマトグラフィーなど、最新の機器を用いて測定。8世紀後半~9世紀後半の樹木で、ラブダナムという植物の甘い香りをベースに、バニラなど約300種類の成分が混じったものだった。宮内庁正倉院事務所では「今回の研究成果を元に、他の香木についても調べられれば良い」としている。 奈良市にある正倉院には、奈良時代から、天皇の許可で宝物庫の扉の開閉を管理する「勅封制度(ちょくふうせいど)」の下で、多くの宝物(ほうもつ)が大切に保存されている。その中の一つである蘭奢待は、様々な権力者によって切り出された来歴がある香木で、黄熟香(おうじゅくこう)とも呼ばれる。東南アジアの山岳地帯に生える「沈香(じんこう)」という香木の
ニュース 土壌中の放射性セシウム、「食塩」「真空」「800度」で9割除去 原子力機構 2025.08.21 放射性セシウムで汚染された土壌について、塩化ナトリウム(食塩)を加えて真空中で800度に熱すると、短時間で9割のセシウムを除去できることを日本原子力研究開発機構(JAEA)が発見した。高速のイオン交換という新しい現象が関わっていたとみられる。今後2年ほどかけて、10キログラム程度の土壌でも低コストで除去できるかなど、実証実験を進める予定という。 2011年の東日本大震災で被災した東京電力福島第一原子力発電所から出た放射性セシウムは、雨などとともに地上に降った。セシウムは土壌にある粘土鉱物の層状構造中にイオンとして入り込むため、除去が難しい。一方、放射性セシウムの同位体のうち、セシウム137の物理学的半減期は30年で、環境汚染が長く続く。そのため、低コストで効率の良い除染方法の開発が求
インタビュー 地学は大災害から生き延びるための学問 メディアで「伝道師」として活動する、鎌田浩毅さん 2025.08.05 滝山展代 / サイエンスポータル編集部 地学を履修している生徒が減っている。理系進学では物理や化学が重視され、文系では大学入試との兼ね合いでそもそも理系科目を選択しない生徒もいる。しかし、地震や噴火のたびに右往左往し、天体ショーには多くの人が集まり、珍しい化石が見つかれば博物館に来館する。人々の地学への関心は十分に高いのだ。メディアを通して地学の意義を説く火山学者で京都大学名誉教授の鎌田浩毅さんに、災害対策としての学問の重要性を聞いた(取材は7月18日)。 地学の専任教員、在籍は全高校の1割以下 ―地学は選ばれない科目になりました。なぜでしょうか。 結論から言うと、大学受験では物理・化学・生物を科目として指定していることがほとんどだからです。そのため、高校で地学を開講
ニュース 食用のスズメバチ、エサは脊椎動物含む324種 DNA分析で明らかに、神戸大など 2025.07.23 生物 長野県や岐阜県などの郷土料理となる昆虫食「蜂の子」の材料のひとつシダクロスズメバチのエサをDNA分析すると、エサは324種あって昆虫やクモに加えて鳥類や哺乳類などの脊椎動物が含まれることを神戸大学などが明らかにした。ハチを飼育したことのある経験者が、目撃情報などから脊椎動物など多様なエサを与えてきた妥当性を裏付けており、食文化と自然の関係性を探る上での知見となりそうだ。
インタビュー 【文理融合】「AIと歴史学」〜古文書の「くずし字」を高精度で読み、江戸時代の価値観に迫る 稲葉継陽さん 2025.04.09 一條亜紀枝 / サイエンスライター 情報 災害・防災 科学と社会 【文理融合】の第4回は「AIと歴史学」。2024年、熊本大学とTOPPAN(トッパン)は独自のAI技術を用いて、歴史資料「細川家文書」のうち約90年分の史料の解読とデータベース化に成功した。専門家でも解読が難しい「くずし字」を、高精度で読めるうえに検索機能を備えたAIは、歴史学をどのように変えていくのだろう。歴史学の側から共同研究を率いた稲葉継陽さん(熊本大学永青〈えいせい〉文庫研究センター長、教授)に、今回の研究成果とこれからの歴史学について現地で伺った。 熊本藩の歴史資料「細川家文書」が伝える歴史 ―「細川家文書」とは何ですか。 熊本藩を治めていた肥後細川家に伝わる歴史資料です。その
噴火でできる、気泡が多く黒っぽい岩石「スコリア」の中に、虹色のように美しく鮮やかな色が混じっていることがある。この輝きが表面の微細組織による「構造色」であり、立ち上る噴煙の中で酸化や冷却が急激に起きてできたとみられると、産業技術総合研究所などの研究グループが発表した。伊豆大島・三原山(東京都)の1986年噴火の堆積物を分析した。詳しい研究により、噴火の詳細な過程の理解につながるという。 噴火は地下のマグマが地表に噴出する現象。マグマが冷え固まったり砕けたりして、溶岩や火山灰、礫(れき)などの噴出物が地上に出る。その一種に、多孔質で黒や赤褐色のスコリアがある。玄武岩質や安山岩質のマグマの噴火で多くみられる。スコリアには青や虹色のように美しく輝く部分が混じることがあるが、それができる仕組みは科学的に解明されていなかった。 そこで産総研活断層・火山研究部門大規模噴火研究グループ付の松本恵子氏(火
インタビュー 奄美大島のマングース根絶、多難な道のりと外来生物のこれから 2025.01.06 関本一樹 / サイエンスポータル編集部 2024年9月3日、東シナ海に浮かぶ鹿児島県奄美大島において、生態系に大きな被害をもたらしたフイリマングース(以下「マングース」)の根絶が宣言された。外来種の根絶事例は世界にいくつか存在するがいずれも小規模で、東京23区よりも広い奄美大島全島級は世界初だといわれる。猛毒のハブ駆除のためにわずか30頭程度のマングースが放たれてから、実に45年目の出来事。根絶に至るまでの多難な道のり、そして外来生物問題のこれからを2人のキーパーソンに語ってもらった。 「早くやめたら?」と言われ続けた(阿部愼太郎さん・環境省 奄美群島国立公園管理事務所) ―阿部さんがマングース防除に取り組んだきっかけを教えてください。 大学を卒業し、民間企業に就職した1988年に奄美大島へやっ
インタビュー 【特集:ニッポンAIの明日】第2回 東京はAI開発の世界的拠点になれるか―快進撃のサカナAI創業者、伊藤錬さん 2024.12.16 丸山隆一 / フリーランスライター 2023年に東京で始動したAIスタートアップのSakana AI(サカナAI、東京都港区)。同社が、日本で創業された企業として最速でユニコーン企業(企業価値10億ドル超の未上場企業)となったことは周知の事実だ。オープンソースのAIモデルを進化的な手法で組み合わせる「進化的モデルマージ」や、機械学習分野の研究をアイデア出しから論文執筆に至るまで自動化した「AIサイエンティスト」など、これまでの常識を覆す成果を世に放つ。 異色のスタートアップを創業したのは、金融業界から転身して世界的AI研究者になったデイビッド・ハ最高経営責任者(CEO)、元・米グーグルで大規模言語モデル(LLM)の礎となる論文の8人の著者の一人
ニュース 反復着床不全で子宮内膜症の患者、歯周病菌を子宮内から高頻度に検出 山梨大など 2024.10.02 医療・医学 難治性不妊症の反復着床不全で子宮内膜症を合併している患者は、子宮内膜症がない患者に比べ、子宮内に歯周病菌が増殖していることが山梨大学と手稲渓仁会病院(札幌市)の研究で分かった。反復着床不全は原因が明らかになるケースが珍しく、今回の研究で歯周病と不妊の関連性が示唆できるとしている。今後、歯周病の治療や予防が着床率の向上に効果があるかどうか、調べるという。 不妊症は妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性生活を送っているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいう。近年は人工授精や体外受精といった数種類の不妊治療が保険診療で受けられる。ただ、体外受精の場合は年齢ごとに、保険診療で胚移植が行える回数に制限が設けられている。胚移植を何度行っても着床しない反復着床不全は医師と患者双
ウミウシに擬態する新種のゴカイ「ケショウシリス」を名古屋大学大学院などの研究グループが発見した。発見場所は三重、和歌山各県と、ベトナムの海域。サンゴの仲間である「ウミトサカ」に共生しているが、なじむような柄ではなく、むしろ目立つ色や形をしていた。同じ海域に住み毒を持つミノウミウシに似せて外敵から身を守ることが考えられるという。今後、ケショウシリスの生態や擬態の詳しい理由について研究を続ける。 名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所の自見直人講師(無脊椎動物系統分類学)の研究グループは、サンゴに生息するゴカイについて研究をしてきた。最初は、三重県鳥羽市にある菅島の漁師から、ウミトサカに「ウミウシのような生き物が付いている」と連絡を受け、譲り受けた。和歌山でもダイビング中のダイバーが見つけた。また、同じ生物をマレーシア、ロシア、フランスの共同研究チームがベトナム海域でダイビング中に発見したと
ニュース アルツハイマー病、原因タンパクの血液検査で発症予測 東大など、早期診断に期待 2024.05.30 医療・医学 認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病の原因とされる2種類のタンパク質を血液検査で測定・分析することで、発症を高い精度で予測できることが分かった、と東京大学などの研究グループが23日発表した。日本人を対象にした大規模な実証研究は初めてで、認知症の早期の診断や治療につながると期待される。 アルツハイマー病は、脳内にまずアミロイドベータ(β)、次にリン酸化タウ217と呼ばれるタンパク質が蓄積。次第に神経細胞が壊れて脳が萎縮することで発症するとされる。特にアミロイドβは発症のかなり前から蓄積することが知られている。 昨年発売された新薬「レカネマブ」はアミロイドβが固まる前の段階で、人工的につくった抗体を結合させて神経細胞が壊れるのを防ぐ。投与対象はアミロイドβが蓄積した軽度
レビュー 全国でPFASの検出相次ぎ、政府が対応策 「水の安全確保」へ実態把握と対策急務 2024.09.06 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員 材料・産業 環境・エネルギー 科学と社会 発がん性など健康への影響が懸念される有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」が全国の河川や地下水などから相次いで検出されており、検出地点付近の住民の不安も高まっている。政府は事態を重視し、環境省を中心に対応策を進めている。同省では現在、PFASに特化した水道水の汚染状況調査を実施中で、専門家会議では水道水の暫定目標値の見直しに向けた議論を始めた。 PFASは人工的に作られた物質で長く身近な製品にも使われてきた。代表的な物質は既に製造と輸入が禁止されているが、自然環境では分解されにくく、過去に廃棄された分が残留している。米国の環境保護局(EPA)が厳しい飲料水基準を設けるなど、欧米で
直径1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルに満たない微細な泡(ナノバブル)が気泡ではないことを、九州工業大学などのグループが発見した。重力により水中で沈む様子を顕微鏡で観察し、ナノバブルの正体が非ガス粒子であることを突き止めたという。非ガス粒子は水中の不純物に由来すると推測しており、高いとされるナノバブルの洗浄機能などとの関連を探る。 理論的にはナノバブルは表面張力により内部のガス圧が高まることで収縮して消滅してしまう。しかし、九州工業大学大学院情報工学研究院の植松祐輝准教授(物理学)によると、2000年代に長時間安定するナノバブルが実験で観測されたとする発表が相次いだ。ただ、2018年と2019年には海外の研究グループがナノバブルの質量を計測し、気泡ではなく、固体か液体の微粒子である可能性があると指摘している。 植松准教授は3年ほど前からナノバブルの研究を始めている。100年以上
レビュー 日本人祖先の「3系統説」、従来の定説に修正迫る ゲノム解析で進化人類学は「人類、日本人の本質」を探究 2024.07.24 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員 「日本人の祖先はどこからやってきたのか」。このロマンに満ちた問いに対しては、祖先は縄文人と大陸から渡来した弥生人が混血したとする「二重構造モデル」が長くほぼ定説となっていた。そこに日本人のゲノム(全遺伝情報)を解析する技術を駆使した研究が盛んになり、最近の、また近年の研究がその説を修正しつつある。 日本人3000人以上のゲノムを解析した結果、日本人の祖先は3つの系統に分けられる可能性が高いことが分かったと理化学研究所(理研)などの研究グループが4月に発表した。この研究とは別に金沢大学などの研究グループは遺跡から出土した人骨のゲノム解析から「現代日本人は大陸から渡ってきた3つの集団を祖先に持つ」と発表し、
蛇口からでる水道水に含まれるミネラルなどの無機成分を、東京大学のグループが2019~24年に47都道府県1564地点で測定した。日本の水は世界保健機関(WHO)でミネラル分の少ない軟水に分類されるが、関東地方でカルシウム(Ca)やナトリウム(Na)など7つの主要無機成分の濃度が高めとなるなど各地で異なることが分かった。微量金属成分の含有に地域的特徴はなく、供給配管や蛇口設備などのインフラに依存しているとみられる。 1564地点の調査で分かった都道府県ごとの蛇口からでてくる水道水の硬度。硬度は水に含まれるカルシウムとマグネシウムの濃度から算出する(東京大学堀まゆみ特任助教提供) 主に分析を担った東京大学教養学部附属教養教育高度化機構の堀まゆみ特任助教(環境分析化学)は、2015、16年に六価クロムの地下水や土壌の汚染、その無害化プロセスを研究していた。研究で使う背景データとして水道水に含まれ
ニュース 複層ナノチューブに光照射すると電子の抜け道ができることを発見、筑波大など 2024.07.03 窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の中にカーボンナノチューブ(CNT)が入った複層の構造体に光を照射すると、電子の抜け道ができてチューブ全体が速く振動する現象を、筑波大学などのグループが発見した。単独のBNNTに照射するより低いエネルギーの光で起き、電子のエネルギーが速やかに熱へと変わっていた。将来的には電子デバイスのスイッチングや排熱での応用が期待できる。 グラフェンやCNTに代表される1原子ほどの厚さしかない材料を層状、筒状に重ねた物質を「ファンデルワールスヘテロ構造体」と呼ぶ。筑波大学数理物質系の羽田真毅准教授(物理工学)によると、同構造体は半導体になったり超伝導体になったりすることが注目され、ここ10年ほどは機能の発現メカニズムを原子や電子レベルで解明する研究が増えているという
サイエンスクリップ 赤外光を吸収する透明な太陽電池 窓ガラスへの利用に期待、阪大などが開発 2024.07.01 長崎緑子 / サイエンスポータル編集部 太陽から降り注ぐ光エネルギーの半分近くを占める赤外光を吸収して発電する透明な太陽電池の開発を、大阪大学産業科学研究所の坂本雅典教授(光化学)らのグループが進めている。既存の黒い太陽電池が設置できない窓ガラスなどへの利用が期待される。変換効率や大面積化の課題を解決したうえで、2025年に手のひらサイズの電池を試作し、2030年には発電する窓ガラスをサンプル出荷するのが目標という。 見えない光でナノ粒子から電子を取り出す 太陽電池の基本構造には、光を吸収する層や電子を取り出す層、電子を受け取る層があり、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。現在一番普及しているのは、シリコン半導体を用いたシリコン系太陽電池。可視光から電気を生み出
レポート 《JST主催》わが国の論文力なぜ失速 第一線の研究者らシンポで激論白熱 2024.04.30 草下健夫 / サイエンスポータル編集部 科学と社会 日本の科学技術力が心配だといわれて久しい。象徴的に語られるのが、学術論文の地位の低下だ。論文は研究で得た新たな知見を整理して客観的評価を受け、学術の体系に組み込むもので、根本的に重要なはず。人々が科学技術の進展を通じ、知的で豊かに暮らすための基礎ともいえる。失速の背景に何があり、どうすればよいのか。多彩な分野のトップ級の研究者が国内外から集まり、シンポジウムで激論を交わすと、研究の自由度や国際化、若手育成といった基本的な論点があぶり出されてきた。 トップ10%論文、過去最低13位の衝撃 シンポジウムは「緊急シンポジウム 激論 なぜ、我が国の論文の注目度は下がりつつあるのか、我々は何をすべきか?」と題し3月11日、科学技術振興機構(JST
サイエンスウィンドウ 【未来ビジョン】《山極壽一さんインタビュー》ゴリラたちから学ぶ 〜人間の本質と未来の姿〜 2019.09.26 地球 生物 科学と社会 AI(Artificial Intelligence:人工知能)やVR(Virtual Reality:仮想現実)などが身近な存在となりつつあり、私たちの生活が便利になる一方、科学技術がさらに発展することで、未来に不安を感じることもある。 私たちの未来は、どうなってゆくのか。そのとき私たちは、どうあるべきなのか。ゴリラ研究の第一人者として知られ、霊長類の進化の過程から人間社会を見つめてきた京都大学総長の山極壽一さんに、私たち人類が本来持ちうる「人間らしさ」や、未来社会像などについてお話を伺った。 ■科学技術と人間の現在 ~科学技術が進歩するなかで「人間らしさ」は薄れてしまうのか?~ ――現在、AIやVRなど、科学技術は目覚ましい進化を
数学を活用してさまざまな物事を理解する分野「数理」を解説したポスター「世界とつながる“数理”」が完成し、文部科学省が公開した。学習資料として毎年作成する「一家に1枚」シリーズの第20弾。15~21日の科学技術週間に合わせたもので、日常生活の身近な事例から、社会の安全性や利便性の向上、先端科学に至るまで、数理が多彩に役立っていることの認識を深める一枚となっている。 数理は数学とよく似た言葉だが、違うという。ポスターは「数学を道具として使うこと」という基本を、まず中央で説明。人形を倒れないように置くことや、多数決で意見をまとめることなど、数理が暮らしの中で特に意識せずに活用されていることを例示した。 さらに、ふたが落ちないマンホールの形状や、鉄道の経路検索、薬が効き続けるための服用の量や回数、台風の進路予測といった社会への活用、宇宙の年齢の解明、生物由来の放射性炭素による年代測定などの学術への
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