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去る2026年5月14日の衆議院憲法審査会で、憲法を改正して「緊急事態条項」を創設するイメージ案が提示されました。作成したのは衆議院法制局と衆議院憲法審査会事務局。岩波ブックレット『憲法に緊急事態条項は必要か』の著者・永井幸寿氏がこのイメージ案を徹底検証。問題点を指摘しました。 1 衆議院法制局法制局と憲法審査会事務局の案 現在、衆議院の憲法審査会ではかつてないことが行われている。本年5月14日に、衆議院法制局と、憲法審査会事務局が、緊急事態(大規模自然災害、感染症の大規模なまん延、内乱などの社会秩序の混乱、外部からの武力攻撃、その他これらに匹敵する事態)における、緊急事態条項と議員の任期延長についての「イメージ案」を提示した(以下、「法制局等案」)。これについては、従前の討論を踏まえて、「中立的かつ専門的な立場から整理・作成した」と注記がある。 しかし、緊急事態条項についても、議員任期延
「理解できない」を楽しむ エイモス・チュツオーラ『やし酒飲み』 エイモス・チュツオーラ 作、 土屋哲 訳 赤801-1、2012年刊 ふだん岩波文庫を読まない人は、岩波文庫にどのようなイメージを持っているだろうか。「世界中の名著が集まった由緒正しい文庫」という人もいるだろうし、「本屋の奥に行くといっぱいおいてある肌色の文庫」という人もいるだろう。 かつての僕は「冗談が通じない堅物の学年主任」みたいなイメージを持っていた。「マジで?」と口にすると「そんな汚い日本語を使ってはいけません」と怒られ、ジャンル小説を読もうとすると「そんなものは文学ではありません」と取り上げられる。表紙に大きな絵を描こうものならチャラチャラしていると釘を刺され、裏表紙のあらすじやカバーのそでの著者略歴なんて下品なので、真っ白な余白を残しておきなさいと言われる──みたいな感じだ。 実のところそのイメージには合っている部
森羅万象を原子と空虚で説明したローマ共和政末期の長篇詩。合理的精神と詩の想像力をもって、人間の感覚や恋愛から、天体の運行、生命の起源、文明の興亡、雷・地震・噴火までもが説明されていきます。エピクロスの哲学を後世に伝え、近代科学に絶大な影響を及ぼした無二の古典です。訳者の瀬口昌久先生による「解説」(下巻に収録)の冒頭部を掲載します。 ティトゥス・ルクレティウス・カルス(Titus Lucretius Carus, 前99/94年頃―前55/50年頃)について、知られうることはかぎられている。確実に知られることは、他のどのラテン詩人よりも少ない。暴力や殺人が横行し、権力闘争が激化したローマ共和政末期に、『事物の本性について』(De Rerum Natura)の一作品だけを残して、40代の若さで死んだこと以外に確かなことはわからない。ギリシア哲学や文学に深い知識と教養をもっていたので、幼い頃から
本を読む、古典を読むとはどういう行為なのか。AIの時代にアナログな形での読書にはどんな意義があるのか。『書物の航海へ——いまを生きるための古典』(小社刊、2026)の著者・石井洋二郎さんと、『いつもそばには本があった。』(互盛央さんと共著、2019、講談社選書メチエ)という著書もある國分功一郎さんのお二人に語り合っていただきました。 知への恐れ 國分 『書物の航海へ』の本の帯を書いた時、ぼくはなぜか、坂本龍一の『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(新潮社、2023)という言葉を思い出しました。そして素直に、「ぼくはあと何冊、本を読むだろう」と思いました。「國分さんはいわばプロの学生だね」ってたまに言われるんですが、ぼくの中には子供のように、読めるならたくさん読みたい、いろんなことを知りたい、驚きたい、教えてもらいたいって気持ちがあるんです。 國分功一郎氏 他方で、この本には恐れをなす人もい
デュボイス『黒人のたましい』再考 解放としての黒人哲学へ この世界で自分の居場所を得るためには、いわゆる黒人の学者は他者ではなく、自分自身でなければならない。 W・E・B・デュボイス 偉大なるアメリカと黒人哲学研究 アメリカの第二次トランプ政権は、古き良きアメリカや西洋文明を「リベラリズムの蛮行」から救うために、白人至上主義的な保守思想や人種差別的としか捉えられないような選挙中の過激な発言をすぐに実行に移した。就任してまもない2025年1月、アメリカ国内で生まれた「不法移民」の子に自動的に市民権を与える出生地主義が廃止され、翌月19日以降に不法滞在や一時滞在中の親のもとに生まれた子供たちには市民権を付与しないという大統領令を発した。正式な書類を米国大使館や国境で提出せず移住した「不法移民(アンドキュメンテッド)」と呼ばれる人々は、今や当局からは逮捕・収監・強制送還されるべき犯罪者とみなされ
世界史の構造を規定する力を交換様式で読み解いた『定本 力と交換様式』、日本人の無意識に分け入り国際社会への9条贈与論を展開した『憲法の無意識』などの著作活動で知られる柄谷行人さん。近著『私の謎 柄谷行人回想録』も話題です。 憲法公布80年の節目の年に、柄谷行人著「憲法9条を実行する」を公開いたします(岩波書店編集部編『これからどうする──未来のつくり方』2015年より)。 私はずいぶん前から「歴史と反復」について書いてきた。私がいうのは、国家と資本がそれぞれ反復的な構造をもっているということである。たとえば、1990年以後は「新自由主義」と呼ばれているが、それは1870年以後に生じた帝国主義の再版である。帝国主義とは、先進資本主義国で一般的利潤率の低下に追いつめられた資本が海外に向かい、それに伴って国家がその支配圏を広げようとするものである。それが帝国主義戦争に帰結することはいうまでもない
2026年5月3日、日本国憲法の施行から79年が経ちます。そして11月3日には公布から80年の節目を迎えます。憲法のいちばん大切な、肝の部分はなにか。井上ひさしさんの軽妙で深い比喩から一緒に考えてみませんか。『井上ひさしの憲法指南』(岩波現代文庫、2021年)より「いちばん偉いのはどれか」を抜粋掲載いたします。 アンパンの皮に塩漬の桜の花びらをのせようと、シソの葉をあしらおうと、ゴマをふりかけようとアンパンはアンパンだが、中にアンコが入っていなければ、もはやアンパンではない。アンパンがアンパンであることを決めているのはアンコなのだ。中にジャムが入っていたら、ジャムパンになってしまう。つまりアンパンで偉いのはアンコなのである。 また、うどんの上にアブラゲをのせようと、揚げカスをおこうと、テンプラをあしらおうと、うどんはうどんだが、丼(どんぶり)の底にうどんが入っていなければ、もはやうどんでは
ともに岩波書店から出版された『いくつもの武蔵野へ 郊外の記憶と物語』(赤坂憲雄著)『宮本常一――民俗学を超えて』(木村哲也著)の刊行を記念して、著者のお二人によるトークイベントが開催されました。 東北をフィールドとした学際的な研究「東北学」を立ち上げた赤坂さんは、現在は生まれ育った東京に戻り、故郷である武蔵野にあらためて向き合っています。今回の『いくつもの武蔵野へ』のなかで、赤坂さんが武蔵野を考える手がかりのひとつとして掲げているのが、宮本常一です。宮本もまた、武蔵野に長きにわたって暮らし、多くを書き残した人でした。 木村さんは、武蔵野の地の高校で学んだ10代の頃から宮本常一の著作に魅了され、宮本の資料を所蔵する周防大島文化交流センターの学芸員も務められました。 かねてから、ぜひ対談したいと思われていたお二人。互いの新著を契機としながら、宮本常一と武蔵野について縦横無尽にお話しいただいた内
岩波文庫には、文学や哲学をはじめ、異言語から翻訳された本もたくさん入っている。そうした翻訳にはさまざまな苦労話や創意工夫がつきもので、興味ある話題に事欠かない。とりわけ創刊から100年近く続いている岩波文庫の場合、この1世紀のあいだに日本語そのものも姿を変えてきたという経緯もある。この文庫全体が、100年分の日本語の地層を成しているようなものだ。その様子を窺う例として、固有名に注目してみよう。名前をどう扱うかは存外厄介なのだ。 異言語の人名や地名などの名前の翻訳は、いまではたいていの場合、カタカナで音写する。そして同じ名前でもカタカナ表記が複数ありえる。私はこれを勝手に「マキャヴェリ問題」と呼んでいる。ルネサンス期イタリアの思想家、ニッコロ・マキャヴェリ(1469-1527)は『君主論』で現実主義とも評される政治論を展開したことで知られる。「マキャヴェリズム」といえば、政治での目的達成のた
進化学や生態学を専門とする深野祐也さんは、昨年6月に『世界は進化に満ちている』を刊行されました。本書をめぐって、東京オリンピックのボクシング金メダリストで、現在はカエルの進化生態の研究をしている入江聖奈さんをお迎えし、都市の生きものやカエル、その進化や未来についてお話しいただきました。 深野 私は千葉大学の園芸学部で進化の研究をしています。最近は、企業と連携して環境保全にも関わるようになりました。私たちの生活からすごく遠いものとして感じてしまいがちな「進化」について、実はとっても身近なんだよということを伝えたくて『世界は進化に満ちている』を書きました。進化のレンズで世界を眺める楽しみを、ぜひ感じてほしいです。今日はよろしくお願いします。 深野祐也氏 入江 都会は人間と生物の相互作用が直に感じられる新たな生態系ですね。深野先生の本は、そんな都会の様子について誰でも楽しく知れる内容だと思いまし
土から読み解くナウシカの謎 私たちは今、『風の谷のナウシカ』で巨神兵たちが世界を焼き尽くした「火の七日間」の前夜にいる。火の七日間は、おそらく核戦争か何か、大災害のメタファーだろう。その1000年後、廃墟となった世界に広がる異形の生態系が腐海だ。自然科学者として、腐海は私の興味をひいてやまない。風の谷のナウシカのイメージボードと高度文明を支える科学的知見とをもとに想像をたくましくして、腐海という生態系を掘り下げてみたい。 錆とセラミック片に覆われた1000年後の廃墟に暮らす姿はペジテの工房都市が象徴的だが、その予備軍を私たちは目の当たりにしている。東京やニューヨークなどの大都市だ。建築家たちはそういった危機感を覚えている。巨大な都市を造ったまではいいが、これをどう循環させていくのか。その現実的な方法を思いつかないままに、コンクリートの材料である砂資源の枯渇に慌てている。砂の供給速度は岩石の
思想の言葉 佐藤卓己 虚構的なものと合理的なもの ──三木清と未来の技術哲学について ユク・ホイ/中村徳仁訳 スピノザの特異な体系 ──離接的総合の可能性 上野 修 戦後日本における植民地主義批判の生成 ──鶴見俊輔と鈴木道彦の場合 米谷匡史 近代日本における「学生」の誕生 ──第一高等中学校「籠城主義」をめぐって 高原智史 ブルーノ・ラトゥールにおける大地の政治 ──「世界の終末」と庶民の「月末」の対立をこえて 太田悠介 アリストテレスの祝福の倫理学 ──あらゆる境遇に「輝き続ける」高邁な人 千葉 惠 20世紀の女性と思想史 ──第一部:合衆国思想史の「起源」の再考 ソフィー・スミス/宇都宮 有+上村 剛訳 二〇二六年一月一五日、拙著『流言のメディア史』(岩波新書、二〇一九年)の中国語版『流言的伝媒史』(浙江大学出版社)が発売された。検閲や言論統制なども批判的に論じる翻訳書がいま中国で公
思想の言葉 松沢裕作 加速・疎外・共鳴 ──近代に関する新しい批判理論 ハルトムート・ローザ/出口剛司 訳 政治思想史研究の30年を振り返る ──共和主義史観・作為の論理・解釈学・歴史哲学 権左武志 階級闘争の超克としてのロールズの正義の諸原理 エリザベス・アンダーソン/奥田淳平訳 カント認識論の普遍性とその周縁 ──視覚障害の事例をめぐって 繁田 歩 熊十力「新唯識論」の哲学的展開 ──主客対立をめぐる現代新儒家からの応答 胡 婧 欲動の主体とその変遷 ──リズムの精神分析(4) 十川幸司 概念史,認識論的歴史,日本の近代化 ──世界の近代化と前近代世界の概念体系(5):「宗教」概念の成立と展開 彌永信美 日本語で歴史学について述べる際に、語「実証」は頻出である。歴史学とは「史料」にもとづいて「実証」することだ、という説明は、とりわけ初学者向けの説明にはしばしばみられる。「実証主義的歴史
「隠喩と神話は人を殺す」──『隠喩としての病い』は、自らの癌体験を契機に書き下ろされた、アメリカの作家・批評家スーザン・ソンタグ(1933-2004)の代表作の一つです。COVID-19の世界的流行を経験した私たちにとって改めて鮮烈な『エイズとその隠喩』とともに、今回初めての文庫化が実現しました。以下、本文庫のために都甲幸治先生に書き下ろしていただいた解説の冒頭部分を抜粋いたします。 病気には意味などない。たとえばあなたが癌になったとする。ならば、とにかく腕のいい医者を探し、現時点で最も効果的な治療法を試して、ベストを尽くせばいい。そのことについて悩む必要など全くない。これが『隠喩としての病い』でソンタグが言いたいことの全てで、これ以上でも以下でもない。だが物事はそうすんなりとはいかない。なぜか。 癌のように、時に人の命を奪うとされる病いには、歴史的にびっしりと意味の束が付着しているからだ
『機動戦士ガンダム』の生みの親の一人にして、いまなお精力的に活動を続けられている、漫画家・安彦良和さん。 11月からは渋谷の松濤美術館に移った、ご自身の活動の半生を回顧する「描く人、安彦良和」展や、本年9月に小社より刊行された『原点 THE ORIGIN』(岩波現代文庫)では、その活動の「原点」が、弘前大学時代の学生運動にあると語られています。 そこで重要な役割を果たしたのが、カール・マルクス。昨今、新たな角度から取り上げられるマルクス思想に対して、ご自身の感じた「気の滅入り」を綴ります。 遅まきながら斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』(集英社新書、二〇二〇年)を読んだ。読んで気が滅入った。そのことから、すこしばかり「思想」と「主義」について書く。 僕は人並みに若かった一時期「マルクス主義者」だった。正確には「マルクス主義者になろうとしていた一時期」が、若い頃にあった。しかしなりきれず、こ
映画というものを本格的に擁護したい 『日本映画のために』をめぐって photo:©井上佐由紀 内田吐夢とラオール・ウォルシュ ──今日は新著『日本映画のために』をめぐって著者の蓮實重彥さんにお話を伺います。本書は企画から約30年の時を経て刊行されました。蓮實さんは近年では『ショットとは何か』三部作(講談社)や『ジョン・フォード論』(文藝春秋)など映画ファンを魅了する著作を発表されていますが、初の日本映画論集となる本書刊行の経緯からお聞かせください。 蓮實 ご紹介のように企画そのものはかなり以前に遡るわけですが、一冊の書物として出すにあたり、わたくしがどうしても必要だと考えていたものが内田吐夢論だったのです。今回の内田吐夢論(「内田吐夢論──またはその画面を彩る慎ましい顕在性をめぐって」)は、ある意味、わたくしの晩年の仕事といってよいものです。それは、『ショットとは何か 歴史編』に収められて
以下は韓国語で書いた書簡を日本語に訳したものです。原文は韓国語の「하오체・ハオ体」という文体で書かれていて、格式的にタメ口と敬語の間の、相手と距離を置く中称の待遇表現となります。日本語にはそのニュアンスを的確に伝えられる文体がないため、任意でありながらタメ口に近い文体に訳して書きます。 暴力的・トラウマ喚起的な表現を含みます。 まず以下のことをはっきりしておこう。 1. 俺は2019年から2022年まで、家族に嘘をついていた。大学院進学の代わりに、あなたが好きそうな、または納得できそうな会社を選んで、そこに入社して働いていると、研究のことはもちろん音楽活動やその他のことについても一切話さなかった。架空の人物と出来事まででっち上げて長い間、嘘をついていた。そして2022年、このままではどうしても家族として一緒に生きていけないと思い、あなたと母、弟にそれぞれ手紙を書いて、事実を告白して許しを請
【特集】哲学教育/哲学対話 思想の言葉 寺田俊郎 〈座談会〉哲学教育を考える 阿部ふく子、池田 喬、神戸和佳子、土屋陽介 ──哲学教育の現在── 哲学者は学校教育に貢献できるのか ──教育基本法と知的徳の観点から 山田圭一 ドイツの哲学教育 ──「哲学教授法」の批判的次元 阿部ふく子 フランスの哲学教育 ──エリート選抜と教育の大衆化の結節点としてのバカロレア 坂本尚志 ──方法としての哲学対話── elephant in the room ──分断された社会における「無知」と哲学対話 西山 渓 ソクラティク・ダイアローグの展開 ──レオナルド・ネルゾンとグスタフ・ヘックマン 太田 明 道徳教育と哲学対話 林 泰成 ──実践の現場から── 教室で“てつがくする”ということ ──それぞれの現れが教室の文化を創る 岡田博元 道徳の授業に哲学対話を取り入れる 剱 仁美 哲学対話と嫌いな先生、ある
【特集】資本主義と民主主義 思想の言葉 松尾隆佑 ──現在の諸相── ヨーロッパにおける政党システムの変容とポピュリスト政党 ──政党政治における資本主義をめぐる対立の周縁化? 中田瑞穂 社会的投資国家における「資本主義と民主主義」の両立 ──マクロ政治分析の観点から 加藤雅俊 フランスの資本主義と民主主義 ──ミッテランからマクロン期まで 吉田 徹 資本主義の変容と新しい「福祉国家の合意」の可能性 藤田菜々子 民主主義の危機とその再生への隘路 ──金融資本主義とポピュリズムの席巻のなかで 千葉 眞 ──過去からの手がかり── 資本主義、文化、民主主義 ──J・ランシエールを手掛かりに 乙部延剛 政治、美学、資本主義 ──現代美術の形式と関係性の解釈をめぐって 五野井郁夫 現代政治思想における資本主義批判の精神史的位置 ──ロールズとアーレントを参照点として 森川輝一 ──未来への展望──
2024年12月3日、戒厳令の夜 「韓国、戒厳令?っていうのが出されたらしいよ」 夜11時半、「寝る前に何の変な冗談いうの」と言う私に、彼女がテレグラム(メッセージアプリ)のチャンネルからロシア語の速報を見せてくれました。頭の中が、はてな、はてな、はてなだらけになり、絶対に北からの攻撃があったと思って、韓国の家族のことを思いながら、大統領の戒厳令宣布の動画をクリックすることで始まった、12月3日の狂気。 韓国大手メディアや独立系メディアが、YouTubeで緊急生中継で映すソウル市内と国会の様子を見ながら、「おかあさん、おかあさん」と焦って韓国の母に電話をしても、向こうは出ず。警察によって封鎖されている国会議事堂の正門と、その警官たちを囲んで抗議する市民たち、そして警察の目が届かない所で塀を越えて国会の中に入っていく国会議員たち。戒厳令を解除できる権限を持った国会を、その戒厳令を使って封鎖し
お陰様で岩波文庫は、2027年7月に創刊百年を迎えます。岩波茂雄が古典的価値のある書目を収めてゆく「永遠の事業」として始めたこのシリーズは、時代の荒波をいくつも越え、古今東西の数千点に及ぶ大文庫に成長しました。 その歴史や魅力を、岩波文庫蒐集家でもある山本貴光さんに、全100話でたっぷり語っていただきます。創刊時のこと、造本のこと、お勧めの読み方、編集部も知らないトリビアなどなど、約1年半にわたり掲載します。ご期待ください! *本連載は、『図書』で全20回(全40話)、「たねをまく」で全60話を並行して掲載しております。
放浪して、さすらってきた 20年前に習い始めた日本語ですが、その学びに終わりはありません。最近は聖書を教材にして毎週新しい言葉に出会っていますが、その中で「さすらう」という言葉に出会いました。今まで気づいていなかったことが、言葉をまとってやっと輪郭を得て自分の前に現れる。自分が今まで「さすらって」きたことが、そのひらがな四文字のおかげで、やっとテーブルの上に置いて触って観察できる形で現れたのです。 全ての韓国語母語話者の日本語の特徴について論じる資格はありませんが、自分に限っていうと、私の日本語にはどうしても漢語が多いのです。「さすらう」を知る前からも「放浪」という言葉は持っていて、それをもとにこの連載のタイトルと方向性を編集者と議論していたのですが、そんな中でちょうど1か月前に「さすらう」に出会ったのは、何かの導きが働いたのかも知れません。自分の日本での人生を「放浪」だけではなく、「さす
1927年に創刊された岩波文庫は、2027年で百年目を迎える。古今東西の古典を収めてきた一大叢書で、総点数は6000以上とも言われる。いまではすっかりお馴染みとなった文庫というかたちを普及させた立役者の一人でもあり、廉価で手にできて、教養を身につけたいと願う人びとの味方でもあった。 と、このように書いてみて、ここにはすでにいくつか、検討や確認が必要そうなことがあると気がつく。岩波文庫はどんなふうに創刊されたのか。そもそも文庫はいつからあるのか。これまで岩波文庫はどんな変遷を辿ってきたのか。古今東西の古典というけれど、古典とはなんなのか。6000点の具体的な内訳はいかに等々、思えば気になることだらけだ。 この連載では、いま挙げたことも含めて、全百話を通じて岩波文庫にまつわるあれこれをご一緒に眺めてみたい。そのうち20回40話は本誌で、残りはウェブでお目にかけるのでお楽しみいただければこれ幸い
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