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今年の「#文学」
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武蔵大学の北村紗衣氏の映画「猿の惑星」評を見かけてしまったのだが、北村氏の作品理解に疑念があるので指摘したい*1。𝕏/Twitterで「今回は映画のことなので、本気でやっています」と宣言していたが、読解能力に疑念が出てくる作品理解となっている。映画が公開されてから半世紀。多くの人が指摘してきたであろうことを、指摘したい。 猿含めてみんなが英語を話している時点で無粋な突っ込みかもしれないんですが…ただ、こういうストーリー上の矛盾やおかしなところを「プロットホール」といって、そこに注目すると映画を見る際に脚本の問題点などに気づいたりできる…英語の話をしたので、ついでに無粋な突っ込みを続けると「言語の設定」も重要になることがあります…言語でコミュニケーションを取れないことが作品の中で重要になったり…この言語の設定がけっこう英語中心的であることも昔のSFだなぁという感じですね。 と、映画「猿の惑
武蔵大学の北村紗衣氏の映画「ダーティハリー」評*1が𝕏/Twitterの映画ファンから批判されている。見かけた範囲ではニュー・シネマの特徴とされる要素が無いのに、ニュー・シネマ的にどうなのか議論されていて、ニュー・シネマの議論としてどうなのかと言う批判があった*2のだが、他に北村氏の作品理解に疑念があるので指摘したい。他の人が指摘してくれるかと思っていたのだが、ツッコミを見かけなかったので。 ミランダ警告とは、取調べの前に被疑者の法的権利を通告する警察官や検察官などの法執行官が負っている義務だ。映画やドラマなどで、逮捕時に「あなたには黙秘権がある。あなたの供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる場合がある。あなたは弁護士の立会いを求める権利がある。あなたは弁護士の立会いを求める権利がある。あなたはいつでもこの権利を用いることができ、質問に答えず、また供述をしないことができる。」と
しまむら×加賀美健のコラボ商品の「パパはいつも寝てる」「パパは全然面倒みてくれない」と言うメッセージが書かれた靴下がSNSで男性蔑視だと非難され販売中止になり*1、書店受けの『エルフ先生のトイレはどこですか?①』のポップが女性蔑視や性的倒錯と言うような非難を受けて撤去された*2。 行政指導があったわけではなく、ボイコットのような社会圧もなく、企業の自主的な判断だ。表現の自由と言う観点から大きな問題はない。マンガやアニメなどの表現物への非難を批判してきた表現の自由戦士が、「極めて愚かな行為」「「女上げ男サゲだったら許されてるだろーがw」という反論はキャンセルに抵抗する「男性向け表現」にとって武器だったが、それが使えなくなる」「キャンセルしようとする連中に「このやり方で嫌いな表現を追い出せるんだ!」と学習させ自信をつけさせるな」と批判しているが、これまで男女の公平性という脆弱な観点から反論して
現在の日本には難民申請中・退去手続き中(仮放免)のクルド人が数千人はいて、埼玉県川口市を中心に居住しており、社会問題になっている。昨年7月4日のクルド人同士の乱闘事件からの騒動による病院の緊急搬送受け入れ停止で、全国的に注目されることになった。 日本の難民申請の基準は厳しく、今までクルド人も1万人ほど申請して1名しか許可されていないが、行政は申請を棄却しても強制退去を執行しない*1一方、施設不足から収容もしないためだ*2。出身国での身の危険を感じて難民申請している人々が自発的に帰るわけがなく、現在に至る。 1. SNSで騒がれている問題は起きていない 在日クルド人集団による治安の悪化を吹聴している人々もいるのだが、根拠に欠ける。在日クルド人集団は、今のところ他の在日外国人の集団と比較して大きな問題を引き起こしていない。現状、統計上は目だって川口市の治安が悪化していたりはしない。ここ1年間の
訳本『イン・クィア・タイム』の帯を書いた王谷晶氏のツイートにペドフィリアとチャイルドマレスターを混同するペドフィリア蔑視があると*1、本の翻訳者の村上さつき氏らがハッシュタグ「#ペドフィリア差別に反対します」を用いて𝕏/Twitterで王谷氏の非難をはじめ、村上氏と氏に同調した人々がアカウントを凍結された*2。 問題発言は批判するべきで、検閲は避けるべきだと思うが、ペドフィリア差別反対者の議論の前提に色々と問題があるので指摘しておきたい。 ペドフィリアは精神医学で定義された性嗜好障害の一種で*3、(二次性徴を迎える前、操作的には13歳未満と定義される*4)児童と性行為をしたいと思い始め、成人女性との性行為などでは性欲を満たす事ができず、欲求不満で日常生活に支障をきたすか、児童との性行為を試みるような状態。 成人も性的対象になる場合は非排他的なペドフィリアと言うが、成人の方をより好む人々は
野村総合研究所の塩崎氏と広瀬氏の記事*1がまた*2データ分析者に困惑を引き起こしている。「データが欠損している場合は、平均値や中央値で埋め合わせる作業を行います。」とあるのだが、欠損データ処理としてはよくない手法として知られている。 平均代入法は、欠損が完全にランダムに生じている(MCAR)とき以外は推定量にバイアスが入ると説明されることが多いが、MCARでも回帰分析などの推定に用いる場合はバイアスが入る。また、単一代入法になるので、標準誤差が過小推定される*3。名前がついているぐらい一般的なのだが、使ってはいけない過去の遺物だ。 推定前の処理としては、欠損データ列がある行を分析から除くリストワイズ法や、分析に用いる欠損データ列がある行を分析から除くペアワイズ法の方がまだよい*4。サンプルサイズの減少を避けたい場合は、単一代入法でも回帰代入などを使う方が望ましい。最近は、機械学習の前処理と
理工系のラボの統計解析では実験計画をどうするかの方が成果を大きく左右するためか、出てきたデータの統計解析はよく考えずに慣習に沿っている面がある。国内外の理工系ラボの向けの実践ガイドライン(チートペーパー)を見ると、古臭く問題含みの方法を説明していることもある。 古臭いチートペーパーで紹介されていたよろしくない慣習で思いついたところを挙げると、 1. 標本が正規分布に従わないかも知れないのに、F検定をかける 等分散性を調べるF検定は正規分布か同じ尖度の分布でないと機能しない。Levene's test(Rではlawstat::levene.testで行なえる)か、O'Neill (2014)で紹介されている尖度で自由度を補正したF検定を用いる必要がある*1。 2. F検定で等分散性を確認してからスチューデントのt検定とウェルチのt検定を選ぶ 常にウェルチのt検定をかけるのが望ましい。この手順
野村総合研究所データサイエンスラボの偉い人が「令和の「データサイエンティスト」に必要な能力」と言う記事を書いて、その中の「統計学や機械学習における基礎的な知識・スキルを整理してマッピングした…図」が、統計学や機械学習に詳しい人々の困惑を招いている。 データサイエンスの文脈でよく言及されているらしき知識*1を古典的~現代的と基礎的~実践的の二軸で分類しようとしているのだが、概念の整理が不十分で、情報の整理整頓ができていない。課題と解決方法、手法と手法の総称、複数の手法を実装したライブラリ/実装が記入されており、その一部が一貫した意味を持たない矢印でつながれている*2。基礎知識として記入された用語の選び方に規準は見い出せない。中心極限定理があるのに大数の法則はない。 *1スキルと言っているし、大手SIerである野村総合研究所のまわりの案件で技術者募集時によく言及される用語を並べてみたのではない
データサイエンスブームもひと段落しつつあるこの頃であるが、統計解析や機械学習を行なうために、どのプログラミング言語を学習すべきかと言う質問はずっと頻出の質問だ。候補や推奨を見るとPython、R、Matlab、Juliaあたりが人気の候補だが、なぜかRは学習困難な言語と言う話がされることがあり*1、醜悪と言っている人もいる。しかし、人気のプログラミング言語の中ではシンプルな文法を持っているのがRなので、これは違和感のある主張だ。 1. Rの文法はとても簡素 他のプログラミング言語にそこそこ習熟*2してからRの文法を学ぶと、あれも無い、これも無いと、潔さに感服する。 変数が値渡しのみ C/C++で言うポインターや、PythonやJuliaにある参照渡しと値渡しの違い*3に悩む必要がない。 動的型付けのみ あらかじめ型宣言する必要がない。 変数にならないオブジェクトが無い 関数や環境(name
「データサイエンティストになるのにRとPythonのどちらを勉強したら良いですか?」と言う御題が出されて、伝統的な統計解析だとRのライブラリが充実しているが、機械学習だとPythonが充実しており、システム開発ではPythonの一択だが、同僚や共同研究者にあわせないといけないから両方覚えることになると言うような指針が示された上で、それぐらい自分で考えられない人は何者にもなれないと言うような話になっていた*1。 適切な説明だが、RとPythonの違いが気になる人は少なくない。あえてデータ分析の道具として大きな優劣にならない文法面からのRとPythonの違いをもう少し細かく考えてみよう。Pythonはクラス型オブジェクト指向の性質が、Rは関数型の性質が強く出ていることが分かる。つまり、 Pythonはインデントを使ったブロック定義などの可読性をあげるための工夫があるが、Rは関数の最後の評価式が
AV新法の施行を受けて、6月くらいからネット界隈でAV女優と表現の自由戦士からアダルトビデオの撮影がまるで不可能になったかのような主張が声高にされている。 AV女優は当時者だし、業務への影響が大きいと困惑する業界の声も報じられている*1ので無根拠とは言えないが、一部界隈が言うようにAV女優失業法とまで言えるか量的側面からの評価がされていない。 1. AV新法はポルノ作成費用を引き上げる 確かにAV新法は、必ず書面で詳細な契約を義務づける上に、契約をしてから撮影前に1ヶ月間の猶予を置き、撮影後に公表まで4か月の猶予を置き、さらに公表後1年間(施行後2年間は2年間)は出演者の随意で出演契約を解除して公表を停止する努力を要求でき・・・と*2、潜在リスクを含めて製作コストが上昇する内容ではある。製作コストの上昇に耐えかねて、製作を諦めるプロダクションが出てきてもおかしくない。 2. 10月以降の落
安倍元総理が演説中に凶弾に倒れたあと犯人の動機に興味関心が注がれているのだが、安倍総理と統一教会の関係から論じるのを非難する安倍元総理の支持者をぼちぼちと見かける。彼らはテロリストを礼賛(らいさん)し、暗殺が自業自得であったと考えることになると主張しているのだが、テロリストが凶行に及んだ理由を推察するのもテロリズムと言って弾圧しそうな考え方だ。 1. 現時点で想像される動機 現時点までの報道から推察される犯行理由は、新興宗教団体の霊感商法は信者やその家族の人生に大きな負の影響をもたらす犯罪的行為だが、安倍元総理と言う権力者が新興宗教団体と親しいために、(忖度か何かで)新興宗教団体が裁かれたり規制されたりしないので*1、安倍元総理を暗殺する必要があったと言うものだ。確信犯。 2. 完全に荒唐無稽とも言えない 陰謀論? — 確かに安倍元総理がここで言う新興宗教団体、統一教会に行政や立法を通して
奈良県西大寺駅前ロータリーで演説中の安倍元総理が手製の銃で暗殺された事が驚きをもって受け止められている。確かに驚いたのだが、要素分解すると日本では前代未聞の珍事ではない。安倍元総理が殺害されたことをもって、日本が危険になったと言う話をちらほら見かけるのだが、早計だ。 政治家が襲われることはよくある。安倍元総理も2000年6月から8月にかけて土地ブローカー及び、それと共謀した暴力団員に自宅や地元事務所に火炎瓶が投げ込まれている(安倍晋三宅火炎瓶投擲事件)。 政治家が銃撃されたことも何回もある。平成に入ってからでも、1990年本島等長崎市長、1992年に金丸信自民党副総裁、1994年に細川護煕元総理大臣、2007年に伊藤一長長崎市長が銃撃されている。伊藤市長は死亡。30余年で5件ではあるが、日本の1年間の発砲事件は十数件に過ぎない。 手製の銃器は珍しいが、手製の爆弾やロケット弾を過激派はよく使
国外の女性表現の是非の議論では、男子にではなく女子の振る舞いへの影響が危惧されていて、ちょっと昔のアメリカ心理学会(APA)のセクシー化された女子に関するタスクフォースのレポート*1では、女子の学業への悪影響が挙げられている。 APAのレポートは多岐な議論が紹介されているのだが、女は容姿と愛嬌と理解して熱心に勉強しなくなると言う話の他、真似をしてエロ可愛い格好をするようになると勉強に集中できなくなる説が紹介されている。ネット界隈の議論では女性心理への悪影響を見落としがちだし、特に認識力への悪影響は無視されがちなので紹介しておきたい。 1. セクシー化を拒絶できない女子がいる 勉強に集中できなくなるのであれば、勉強するときはエロ可愛い格好をしないのではないかと思うわけだが、APAのレポートでは、 Keen observers of how social processes operate,
マンガ家の参院選候補者の赤松健氏が「外圧や行き過ぎたジェンダー論など議論の中心に当事者がいないのはおかしい。」とツイートして、ジェンダー社会学者やフェミニストから学問の自由の観点から非難されている。 ジェンダー論(gender studies)に基づくマンガに関わる表現規制の議論に、マンガ家が参加していないのはおかしいと言っているだけだし、学問としてジェンダー論を学んだり研究したりすることを非難しているわけではないので批判の多くは失当だが、「行き過ぎたジェンダー論」と言う表現は確かに奇妙だ。何を基準に行き過ぎと言うのであろうか? 学問に対して「行き過ぎ」と批判すべき事はほとんど無い。グアテマラ人体実験は行き過ぎた実験至上主義と非難できるかもだが、それぐらいだ。ネット界隈に伝わってくるジェンダー〇〇学者の議論は、意味不明な用語を振り回しているとか、実証的エヴィデンスが不足しすぎているとか、参
某氏がKendall (2007)を不用意に紹介して強く非難される中で、インターネットのブロードバンド接続の普及により、ノルウェーではポルノ視聴が性犯罪を増やしたことを主張する論文Bhuller, Havnes, Leuven and Mogstad (2013)が言及された流れで、Bhuller et al. (2013)と同様の分析をドイツで行った論文Diegmann (2019)*1が紹介されていたので拝読してみた。Kendall (2007)が主張し、Bhuller et al. (2013)が否定した、ポルノと性犯罪の代替効果が部分的にしろ観測されている。 1. 踏襲される分析方法 似たような分析と言うのは、性犯罪(もしくは性犯罪を誘発する未知の要因)がブロードバンド接続の普及に与える因果の可能性を排除するために操作変数を用いて因果効果を測定していること、年次ダミーが入った地方自
ポルノ視聴の悪影響は心理学の実験から社会統計の解析まで幅広く行われているが、手堅く分析しているものは少ないし、手堅く分析するほど観察される影響が小さくなる傾向がある*1。しかし、手堅く分析している分析でも、ポルノ視聴の悪影響を示唆するものもある。 Bhuller, Havnes, Leuven and Mogstad (2013)*2は、ノルウェーでのブロードバンドのインターネット接続普及が性犯罪を悪化させ、さらにそれがポルノ視聴を通じての効果であったことを主張する研究だ。この手の論文の多くは相関を見ているだけで因果効果の測定まで行かないことがあるが、因果効果の測定をしている。 1. ネット利用の性犯罪への因果効果の推定を行っている この研究は、基本的な分析として、ブロードバンドのサービスエリアに入っている家計の数を操作変数(IV)に使い、インターネット利用率が性犯罪率に与えた局所的平均処
ポルノ利用が性犯罪を減らす可能性はそこそこ高い。ここ何十年間で世界中でポルノ視聴は容易になり、ポルノの製作数も飛躍的に増えている一方、性犯罪は劇的に減っている。しかし、時系列のデータなので、ポルノ視聴が影響したのか、他の要素が影響したのか統計的に判別することは容易ではない。相関を示すことができても、因果を示すのは大変だ。相関を示すことすら、上手くできないこともある。 1. なぜか信頼できると誤認されていた ある気鋭のネット論客が「めちゃくちゃ念入り」としている論文Kendall (2007) "Pornography, Rape, and the Internet"も粗が多い残念な分析になっていた。この論文はディスカッションペーパーで、上手く研究が進めばどこかの学術雑誌に掲載されているはずだが、そこまで行けなかったようだ*1。既にネット論客の人とはディスカッションをしたのだけれども、だらだ
SNSの表現規制派フェミニストを非難してきたネット論客の青識亜論氏のTwitterアカウントが永久停止された。今までも不明瞭な理由でアカウント停止された人々がいるし、青識亜論氏に誹謗中傷あたるような発言は無かったようなので、凍結自体はお気の毒で終了する話だ。 ところが事態はこれで終わらなかった。青識亜論氏は、即座に今まで隠していたサブアカウントを名称改変し、青識亜論氏として利用を開始したのだが、名称改変前のサブアカウントの過去の言動が特定されることになった*1。この過去の言動が、青識亜論氏の主張と真っ向から対立するものなので、非難を浴びている。 そのサブアカウントは表現規制派フェミニストとして振る舞っており、表現規制派フェミニストたちに賛意を寄せつつ表現物を非難し、さらに表現規制派フェミニストを非難している他の表現の自由戦士たちに反論を行っていた。表現規制派フェミニストを観察するためであれ
経済学者の北村周平氏がまん延防止等重点措置(通称、まん防)に対して、差分の差分法(DID)と呼ばれる統計的因果推論の方法を用いて分析を行い、効果なしと言う結果を、「専門家のみならず、一般の方々にもご理解していただけるように解説」を試みた*1のだが、分析および解釈がよろしくないと統計学と経済学の2つのPh.Dを持つ統計学者に批判されている。 擁護者も出てきて論争しているのだが、「批判するだけではなくて、やってみろ」と言うものもあった。代わりに分析してみよう。 1. 分析方法 分析方法としては、2022年1月からのサンプルに絞って、合成対照法(SCM)を用いて、長めの期間でまん防の効果を評価する。また、被説明変数は累積陽性者数の昨週比*2とする。 疫学者と共著にしたほうが…と話が出ていたが、上記の方針は疫学方面の議論をある程度は参照して決めた。 感染者数がだんだんと増えてまん防になるだけなら簡
ネット界隈に限らず、安倍元総理のような有力政治家の中にも、ウクライナ侵攻についてロシア政府の主張を請け売りする人々が多いので、一応、5点に絞って問題点を整理しておこう。言い分の対義語は奇数などと言う駄洒落に負けてはいけない。 NATO加盟国の東方拡大がロシアの安全保障を脅かしていると言う主張は、(1)独立国の条約加盟は独立国の自由であるし、(2)ロシアは1997年のNATO・ロシア基本文書でNATOへの新規加盟条件に合意し、1999年からの東欧諸国のNATO加盟を認めてきている。(3)ベーカー=ゴルバチョフ会談におけるベーカー国務長官の発言*1は、書面の覚書が無いベーカー国務長官の個人的意見に過ぎないし、既にソ連が消滅しており、1997年の基本文書の合意と合致しないので、何者も拘束しない。 ウクライナ政府がミンスク合意を守っていないと言う主張は、ウクライナ議会が特別地位法を立法するなど合意
「人をクズ呼ばわりするのに法的な根拠は一切いらない」と断言し「あなたは最低だと思います」「やっぱりキモいオヤジですね」「○○○○はボケクズ」と言うツイートをすることもあった武蔵大学の北村紗衣氏*1らが差出人となって出したオープンレター「女性差別的な文化を脱するために」だが、文面などが不法行為になっている可能性が幾つかあると一部の弁護士から批判されている。 1. 不法行為になりそうな点 はっきりした主張は多くは無いのだが、問題となりうるのは、 オープンレターの趣旨からして不必要なのに、呉座氏の名前を15回も連呼している 呉座氏の過去発言が実際よりも過激なものだと受け取られる恐れがある 呉座氏の行為を不必要かつ長期間にわたりネット上で断罪している*2 賛同者になることを承知していない人物が、賛同者にリストされていた*3 と言うところだ。(1)から(3)については呉座氏が、(4)は賛同者が訴訟を
…と言ってしまっても制裁を受けない社会でないと、民主制度は十分に機能しない。 昨年の秋ごろから、武蔵大学の北村紗衣氏が弁護士を通して多数の人物に、自身や自身が関わった声明に対する言及、批判、誹謗中傷をやめるように要請していることが明らかになって*1、議論を呼んでいる。言及と批判はさておき、侮辱や名誉毀損は違法行為なのでやめるべきと言うのは御尤もなのだが、誹謗中傷もある程度は受忍しないと、主張をするのが窮屈になるだけではなく、人によっては困難で不可能になることを指摘しておきたい。 誰しも誹謗中傷をしてしまうことはある。例えば1年とちょっと前に、草津町の町議リコール騒動を、悪人の町長が他の町民とともに善人の弟を圧迫し孤立させるイプセン『民衆の敵』と言う戯曲と同じとした女性がいるのだが、草津町長と町議のどちらが正しいかなんて分からないわけで*2、草津町長と草津町民を誹謗中傷したことになる。この女
・・・と言うタイトルの短い展望論文*1を、最近、よくタイムラインで見かける表現の自由戦士の手嶋海嶺氏が紹介*2していて拝読したのだが、紹介の仕方がミスリーディングだと思うので指摘しておきたい。 この論文はポルノが性的暴行を増やすと言う主張を否定しているが、ポルノ以外による作用や、性的暴行以外の影響については特に何も言っていない。よく議論されている萌え絵に害がない傍証にはなるが、科学的に決定的な議論にはならない。萌え絵とポルノは同質なのか、男女役割に関する固定観念への影響も無いと言えるか、男性ではなく女性への影響はどうかと検討すべきことが多く残る。 1. 論文に書いてあること Ferguson and Hartley (2009)の内容をざっと紹介すると次のようになる。米国では映画やビデオやネット配信などの新しいメディアが出てくる度に、保守派とフェミニストが結託してポルノ規制を求めてきており
ネット界隈でよく表現の自由戦士に批判されている武蔵大学の北村紗衣氏らが差出人となって、「女性差別的な文化を脱するために」と言うオープンレターを公開している。このオープンレターでSNSでの振る舞いを非難されている人物が歴史学者が、問題のSNSでの振る舞いを理由に不当に任期無し雇用への昇格を取り消されたと所属先を訴えたことで、再注目されているのだが、言論の自由を強く抑圧しようと言う主張になっているので注意したい。 1. 人格攻撃ではなく、自分たちへの主張への批判を咎めている このオープンレターの差出人と賛同者たちは「性差別的な表現に対する女性たちからの批判を「お気持ち」と揶揄する」ことを中傷や差別的発言とした上で*1、発言者*2と「同じ場では仕事をしない」ことを含めて、「中傷や差別的言動を生み出す文化から距離を取ることを呼びかけ」ている。一見するとそれらしいが、言論の自由を著しく抑圧する主張に
ネット界隈では2021年10月31日の第49回衆議院議員総選挙で立憲民主党が公示前から議席を減らしたことに関して、立憲民主党の関係者でもないのに反省会が開かれている。政策にしろ、選挙戦術にしろ、多くは枝野幸男代表に敗因があるとしているのだが、どちらかと言うと、自民党の狡猾さ、菅前総理の辞任と岸田総理の早々の解散を称えるべきだ。 1. 枝野代表の選挙戦術は正解だった 立憲民主党の負けっぷりだが、選挙前ではそこそこ伸ばせそうな世論調査の結果もあったので関係者の落胆が大きいわけだが、歴史的な大敗とは言えない。公示前110議席から小選挙区を16議席失い、比例を2議席増やして、96議席になった。小選挙区は接戦に持ち込めた選挙区が多かったのだが、僅差で敗れたところが多かった。1万票以内で立民・共産が負けた選挙区が32。比例代表は前回選挙よりも票数を減らしているが、議席数が増えたわけで全体としては大きい
ジェンダーギャップ指数はかなり癖がある指標で*1、何かの分析で使うのにはお勧めできないのだが、先進国において「ジェンダーギャップ指数が高い(男女格差が少ない)ほど、出生率は高まる傾向」などと言い出す人々をぽつぽつと見かけるようになった。そんな話を請け売りしている社会学の大学教員もいるのだが、そんな傾向は明らかには観察されないので指摘したい。 1. 内閣府の資料の問題点 冒頭の引用は内閣府政策統括官(経済社会システム担当)作成資料からなのだが、先進国という出生率が低い国を集めたサブサンプルの傾向はただの偶然であることが往々にあるし、そもそも先進国もごく一部ののデータだけで議論していて恣意的な分析になっているし、さらに選んだごく一部の国の傾向すら主張を支持していない。 フランスとイギリスと韓国はジェンダーギャップ指数が上昇したのにもかかわらず合計特殊出生率は下がっているし、日本とデンマークはジ
想定すべき状況を大きく間違えていて、大型旅客機が無用の長物になっている可能性がある。 政府要人の外遊に利用されていることが多い政府専用機だが、イラン・イラク戦争の時に在留邦人の脱出ためのチャーター便を日本航空(JAL)が拒否したことが導入契機になっており*1、航続距離が長い大型旅客機を選定している理由になっている。政府要人を運ぶだけであればBoeing 787で十分で、先代の747-400や現行の777-300ERを採用する必要はなかった。 しかし、海外邦人の救出に、この政府専用機が役立ったことはない。2013年のアルジェリアではテロ行為の犠牲者と生存者、2016年のバングラディッシュでは犠牲者と遺族を運んだが、実際のところ民間航空会社のチャーター便が利用可能な状況であった。2004年4月のイラク、2016年7月の南スーダンではC130輸送機が利用されている。今回のアフガニスタン邦人/現地
人気YoutuberのDaiGo氏が、生活保護に対する歳出はDaiGo氏の利益にならないと言い出して、多くの非難が集中する炎上状態になっている*1。社会保障の専門家も非難しているのだが、観察範囲ではどうも正当化が弱い。天下り式に人権と言われても、その人権が必要な理由は分からない。同じ社会の他の人々への慈愛が無いメンタリストDaiGo氏でも受け入れられるような、生活保護などの弱者保護の必要性の説明を試みたい。 1. 紋切り型の説明は説得力を持たない DaiGo氏に他者への慈愛を持てといっても無理であろう。動物にもある自他融合的な情緒的共感がモラルの起源*2ではあるが、生活保護受給者やホームレスの人々と接していなければそれは無理だし、報道されている餓死者の事例を見るに、困窮者に接していても自己と同一化するのは難しい。 歴史的に社会保障の導入理由となった、暴動抑制から利益を得ているとも言い難い。
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