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ノーベル賞
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どちらも自分として書きたいことが書けた記事なので、もしよければ読んでみてくだされ bunshun.jp bunshun.jp
[ネタバレあり]草彅剛主演『ミッドナイトスワン』見てきました。誰もが認めるであろうことを最初に言うと、俳優陣がまず圧倒的に素晴らしい。僕も過去に何度か書いてきた草彅剛のズバ抜けた演技力は今作でも発揮されているし、クラシックバレエで輝かしい成績を持つものの演技は未経験の14歳、服部樹咲を「ほとんど喋らせない」と言う演出で上手く使い、視線と表情の演技だけで宮崎あおいの再来のような存在感を出している(もともとクラシックバレエが世界レベルで上手い子を、逆回しのように「上達していく」ように見せる演出も素晴らしい)。水川あさみら他のキャストも全て目を見張るような演技を見せている。演出も前半は無駄がなくそれでいて繊細で、クラシックバレエとストリップショーを交差させた名作『フラッシュダンス』を彷彿とさせつつ、『万引き家族』のトランスジェンダー版ともいえる構造を描き、これは世界レベルでも勝負できる日本映画な
松岡茉優の挑戦をアシストしたのは山﨑賢人の衛星的演技だと思う デジタルフライデー様で映画『劇場』について書かせていただきました。 friday.kodansha.co.jp 「原作と読み比べた差異で初めて見えてくる映画版の意図がある」ということは色んな場面であって、「ここ変えたんだ」「ここカットしちゃったの?」というのはそのまま映画の演出や脚本への賛否につながる。そういう意味ではこの『劇場』という映画、単体で見たら「永田くんクズだなあ」という所だけに目がいってしまうところがあるんですけど、又吉直樹の原作を読むと「あっ、こんなに変えたんだ、これは沙希の映画になってるなあ」とすごく思う。 原作の永田って、もっと雄弁なんですね。ダメ男はダメ男なんだけど関西弁で演劇論、芸術論をまくしたてる男で、良くも悪くも情念が濃くて押しが強い。又吉直樹の小説というのは『火花』もそうなんだけど、そうしたアウトサイ
延期になったドラえもんとしまじろうの席割りを『初恋』にわけてくれ! どうしても今、この瞬間に全力で薦めたい映画というものがある。たとえその映画が冒頭から生首が切り落とされる暴力描写でPG12にレートされていても。たとえ世界を覆うコロナウィルス騒動の影響で、映画館の出足が壊滅し、興行的に苦戦していても。台風の直撃で初週が壊滅してしまったアニメ映画『空の青さを知る人よ』がそうだったし、三池崇史監督の最新作『初恋』もそういう映画である。「ああ、三池監督のそれ系の映画ね」とあなたは思うかもしれない。でもこの映画には、「三池崇史監督の振り切れた快作で、ベッキーの振り切れた怪演がみどころでうんぬん」と言ったありきたりの説明の十倍くらいの情報と構造が詰め込まれている。脚本の中村雅氏の力が圧倒的だと思う。 脳腫瘍で引退を宣告されたボクサーとヤクザに追われる少女、という予告編の映像の切れ味から、ある程度出来
16人だった。ちゃんと数えた。『バイバイ、ヴァンプ』公開3日目の日曜日の夜、ユナイテッドシネマお台場のスクリーン5、114席である。ただの16人ではない。人口1000万人の東京都でこの映画を上映しているのは、このユナイテッドシネマお台場のスクリーン5だけなのである。なのに114席に対して16人なのだ。その前日土曜日に見た観客からは、12人だったという報告もあった。岩波ホールで単館上映している中東ドキュメンタリー映画より客がいねえ。しかもその16人のうち、女性はたった2人だった。残りの14人は僕も含め、お互いをハンドルネームで呼んだり、映画を見ながら手もとにメモしているような明らかに映画ブロガーやらツイッタラーやらのネタ拾い、たった2人だけの女性も彼らとなんらかの知り合いで、出演者のファンの女子ではないように見えた。一人一人聞いたわけじゃないのでちがったらごめんだけど。 この映画に出演してい
ナウシカ歌舞伎を映画館で見てきた。1週間限定で、前後編のうち前編である。4300円。破格の値段だ。しかも3時間15分ある。前編だけで3時間である。途中に15分の休憩がある。インド映画みたいである。 しかしこれがめちゃめちゃ面白かったのである。4300円、小劇場で演劇を見るくらいの値段だがまったく高くなかった。 僕は歌舞伎を見たことはない。漫画やCMなどのサブカルチャー内での戯画化された歌舞伎、隈取の俳優が「いよぉ〜」と見栄を切る歌舞伎のパロディなら見たことはある。正直それらの歌舞伎パロディを見て「カッコいい」「魅力的だ」と思ったことはなかった。教養高い人物好きなたちが高い金を払って見に行く伝統芸能。美術館に所蔵された江戸時代の骨董品。そういうイメージであった。 しかし本物、超一流の歌舞伎役者が演じる「風の谷のナウシカ」はやっぱりものすごかったのである。それは超一流の噺家の落語がそのへんのバ
毎回毎回叩かれてる映画のことばっかり書いてる気がするが、映画『ヲタクに恋は難しい』が袋叩きになっている。ツイッターの批判ツイートのRT数は2.8万。(追記:その後削除された。別に消さなくてもいいと思うがバズりすぎたのが理由とのことである)比較に出すのもなんだが、あの『ドラゴンクエストユアストーリー』より叩かれている。3万RT近いトップツイートの批判は、『「オタクは気色悪い」という作り手の偏見や蔑視がビンビン伝わる』という内容だった。ツイッター、というかSNS全体のメインエンジンは今や疑いもなくオタクである。「実写映画の連中が俺たちをバカにしているらしい」というストーリーに火がつくとここまでバズってしまうわけだ。 うーん。 そうか? 別に逆張りとかではなく、公開金曜日の初日に「ヲタ恋」を見た僕には映画がオタクへの偏見や蔑視で作られているとは思えなかった。 実際問題、原作からはかなり変えている
普通に面白い。配給は洋ケモナー映画として細田守監督に推薦をもらうべき 劇場映画『CATS』がバカにされまくっている。何しろ欧米でも酷評大喜利みたいなのをやっているらしく、我らが欧米崇拝ジャポンも本家があれだけバカにしているのだから、と安心してバカにできるわけである。というわけでみんなバカにしている。なにしろビジュアルがキモいという小学生にもわかるような特徴があるのでバカにするのにエスプリだなんだという手間がかからないのである。 でも本当か? 今日見て来たけど、すげー面白かったぞ「CATS」。 いや、確かにとっつきは悪かった。CG着ぐるみはなんだか八頭身ドラえもんみたいでキモかったし、やたらグラグラとカメラを揺らすので映画酔いした。 でもそれを帳消しにしてあまりあるくらい面白かったと思う。 これは僕がミュージカルの『CATS』を今まで見たことがなく、「キャッツという物語はこういうことだったの
僕の映画感想は橋本環奈ちゃんの『セーラー服と機関銃』をツイッターで絶賛したところから始まっている。これである↓ twitter.com 『セーラー服と機関銃』は興行的にはあまりヒットせずいろいろ言われたりしたものの、その後の橋本環奈ちゃんの女優業は高確率で当たり続きだと思う。最近では『キングダム』もよかったし、『銀魂』も大好評だ。とりわけ『かぐや様は告らせたい-天才たちの恋愛頭脳戦-』は監督の演出のリズムもふくめて素晴らしかった。 成功した橋本環奈ちゃんムービーにはある法則がある。アンリアル、非現実的な映画になればなるほど橋本環奈ちゃんは強いのである。とりわけアニメの美少女キャラを実写で演じるということにかけてはもはや日本の映画界で「橋本環奈ちゃん無双」の状態であると言っても過言ではない。理由は言うまでもなく、橋本環奈ちゃんが現実離れして可愛いからである。そして小さい。152cmという身長
今年のハロウィンのコスプレではジョーカーが大人気だった。まるでもうジョーカーの方がスーパーヒーローで、バットマンがヴィラン(悪役)みたいな雰囲気だ。どう見てもアーサーとはかけ離れた社会的に強い立場の人たちを含め、誰もかれもがジョーカーに自分を重ねる。 よくネットでキャラかぶりがネタにされているけど、スティーブン・キングの作り出したペニーワイズというキャラクターはいくつかの面でジョーカーと重なっている。どちらもピエロ(クラウン)だ。映画『IT THE END それが見えたら終わり』は映画『ジョーカー』と同時期に撮影されていて、お互いのスタッフはお互いの作品をまったく見ていないはずなのだが、二つの作品はまるで表と裏のように背中合わせに対応している。まるでお互いがお互いのスピンオフ作品のようだ。不思議な偶然だが、優れたスタッフたちが時代と向き合うとこういうことが起きるのだろう。今作ではペニーワイ
モデル雑誌の表紙を飾る時、写真の中の玉城ティナはいつも完璧な美少女に見える。全芸能界を見回しても二人といないのではないかと思うほど大きく印象的な目。「人形のよう」「絵から抜け出したよう」と観客によく形容されるそのルックスは、彼女をあっという間にトップモデルに押し上げ、女優の道を開いた。 でも映画やドラマで見る玉城ティナには、写真よりも多くの情報が含まれている。そこには声があり、表情から表情への動きがある。心の迷いがあり、繊細で微妙な感情がある。動画で見る玉城ティナは「お人形のように美しい」女優ではなく(それでも他を圧倒する程度には美しいのだが)、人間的な親しみ、曖昧さに満ちている。 言ってしまうと、動画で見る玉城ティナはわりと性格の良さというか人柄の親しみやすさ、「普通にいい子」というのがにじみ出てしまっていて、あんまりミューズ然、ファムファタール然としていないのである。ファムファタールと
最終回によせて、文春オンライン様で『なつぞら』について書かせて頂きました。 bunshun.jp 書きたいことはほぼ上の記事で書いたのですが、文字数的に入らなかったこともあれこれ。 『なつぞら』ってたぶん、視点によって賛否がわかれるドラマだと思います。 例えば「奥山玲子をドラマ化するはずだったのにレジェンドヒロインとかイケメンとか色々出し過ぎてテーマがボケた、東映動画の労働争議も書けてないじゃないか、磯プロデューサーは日和った」という批判はその視点でみれば確かにそうなんですけど、僕の視点は逆で、 「そもそも朝ドラ100回記念作品、広瀬すずが主演しレジェンドヒロインが大挙出演することが最初から決まってる枠に、磯プロデューサーが力業で奥山玲子を(非公式とはいえ)題材にねじこんだドラマ」 という感じなんですよね。 放送前にはアニメファンの間ですら彼女を知らない人って沢山いたと思います。ましてや一
そもそも最初から「つよポン主演」という時点で色々な方面の色々な圧力がアレしてるところにですね、まあ共演Aさんの目下公判中でしかも罪状否認で推定無罪という非常に言及するのも難しい状態の問題が加わっちゃいまして、そんなこんなで延期になってた「台風家族」なんですけど、あなたこれがまさかの大傑作ですよ。見に行け。悪いこと言わないから。こんな面白い映画をいろいろなアレで宣伝が難しい感じにすんじゃねえよまったくもう。 草彅剛さんの演技力についてはもう「クソ野郎と美しき世界」「まく子。」など何回か言及してるんですけど、「新しい地図」の中でダントツなのはもちろん、これ日本の俳優全体でもアウトロー俳優として相当なレベルだと思う。例えば同じ「新しい地図」には香取慎吾がいて、彼と草彅剛は昔から親友だけど、俳優としての方向がちょうど正反対なんですよね。香取慎吾は「凪待ち」で一気に評価をあげたと思うけど、あの体格で
一晩考えましたが、要するにこういうことじゃないかと思うんですよね どうも一昨夜は取り乱しまして失礼しました。↓ www.cinema2d.net 書いた記事に嘘はないものの、どうも映画を見た人同士の共有や反論ではなく「見てないけどこういう内容なら見なくていいな」という方向でバズっている節があり、これは意図するところではないんですね。どんな映画も、見ないで切るべきではないと思う。ちょいちょい念を押してはいるものの、やっぱり文章全体の勢いで「とにかく最初から最後までクソ映画らしい」という文脈で読まれてしまっているらしいのですが、 最後を除いては映画としてかなり良い ことを力説しておきたいんですね。なんかもう「あなたの記事を読んで見に行かないことを決めました!ありがとう!」みたいなコメントがバンバン来るからさ。そういうことが言いたかったんじゃないんですよ。あの、見た人と共有するために書いてるんで
僕は基本的に駄作をいじって笑う、とか、失敗作をみんなでボコボコに叩くというノリがあんまり好きではない。創作なんて基本的に嘘っぱちなんで、ぶっ壊そうと思えばどんな名作だってグチャグチャに批判できるわけである。誰かが必死に書いて震える手で差し出したラブレターを目の前でビリビリと破けば、そりゃ確かに告白してきた相手よりは優位に立って見下すことができるだろうけど、基本的には僕は誰かに向けて下手くそなラブレターを書いて恥をかく側にいたいと思っている人間である。その方が人生が楽しそうだし。 だからこの『ドラゴンクエスト ユアストーリー』が2019年8月2日に封切られるやいなやあらゆる人からボロクソに言われているのを見て「ああまたか」と思ったし、「もしかしたらCGクオリティが低かったり、原作のゲームとは違うラストだったりして不評なのかな、でもそういう中でも作り手の意図とか思いが読み落とされていたりするか
たぶん国民が見たかったのは『ラピュタ』みたいなやつだよ!でも名作 『天気の子』のネタバレを含みます。タイトルがネタバレっぽかったので直した。 リアルサウンド映画部様で『天気の子』の記事を書かせていただきました。まずはこれ、正直にポジティブな感想なのでリンク先の記事を読んで頂きたい。良い映画だと思います。ここまで良くなってるとは思わなかった。 realsound.jp 『天気の子』そのものについての評価は上の記事の中で書きたいことは書いてしまった感があるんだけど、わりと今回、僕マジで新海誠監督の実力をあらためて見直した部分があります。『君の名は。』は東宝がシナリオチームを組んで間口の広いエンタメに仕上げた部分があって、大ヒットして新海誠監督の権限が強くなったら悪い部分出ちゃうんじゃないかな?ラストでいつものあの感じになって家族連れがドン引いちゃうんじゃないかな?という危惧はいろんな人が出して
6月28日の公開からずっと、映画『凪待ち』に主演した香取慎吾への絶賛が続いている。最初から興行規模は大きくなく、内容も家族連れやカップルが喜ぶような楽しいものではないにも関わらず、観客動員も好成績を上げている。本来『凪待ち』は単館やミニシアターを中心に公開されるジャンルだと思う。それが大手シネコン系列で公開され、アニメやファミリームービーと名を連ねて観客を動員するのは言うまでもなく主演の香取慎吾のネームバリューが大きく、彼は演技に対する評価だけではなく、映画の公開規模をワンランク上に引き上げてしまうスター性もあらためて証明したことになる。実際、俳優として香取慎吾の将来は明るいと思う。この映画を見て香取慎吾を俺の映画に欲しいと思う映画監督は引きも切らないだろう。それほど『凪待ち』の彼は素晴らしいと思う。光がすぐそこに見えているのに足元に口を開ける心の暗闇に引きずり込まれていく、その悪夢のよう
映画には清水尋也、間宮祥太郎、板垣瑞生の三人のハンサムな俳優が出演し、主人公は原作少女漫画の物語をなぞりその三人の間を揺れ動くのだけど、でもこれはスクリーンには一度も登場しない、山戸結希監督と堀未央奈の二人きりの相棒映画、バディフィルムなんだと思う。豊洲の公団住宅周辺の風景から始まり、関東から出ることなく公団住宅で終わっていくこの映画をロードムービーと呼ぶのは映画の定義上たぶん間違っているんだろう。でも堀未央奈が演じる成田初は、映画の中で長い長い心の距離を旅する。これは移動の映画である。 相原実貴による原作少女漫画『ホットギミック』は2000-2005の間に連載され、累計450万部を売り上げた大ヒット作である。王子系、ドS系、呼び方はともかく、「お前、おれの奴隷になれ」という橘亮輝:清水尋也のセリフが象徴するように、内向的で自己肯定感の薄い少女が華やかで横暴で美しい少年たちに欲望される、少
まあ正直言うと、僕もさすがに砂川に向井理はねえだろと思っていた。原作を読んでない人に説明すると、砂川というのは東国原やモト冬樹くらい禿げたゲスな中年ヤクザである。向井理が『ゲゲゲの女房』で水木しげる先生を演じた時はまだしも「あっそういえば水木しげる先生、向井理に似てるとこけっこうありますわ!同じ霊長目だし!」といった擁護もあったが、今回はキャスト発表の段階から叩かれまくっていたと思う。しかしこれがいいのである。向井理の「どことはなくヤバい感じ」、端正な顔の下に抑圧された暴力性みたいなものがにじみ出ている。もちろん実際には国仲涼子さんに手を上げたりすることは一切ない向井理さんなわけであるが、映画の中では女でも平気で殴りそうなヤバいヤクザの空気が漂っているのである。神奈川県出身なのに関西弁もなかなかのものである。もちろんネイティブの関西人からみれば「綺麗にイントネーションをコピーしてもやはりイ
時々、「人間の描く絵はあと何年生き残るのだろうか」と考えることがある。ハリウッドが猛烈な勢いで蓄積するCG技術の累積は、手書きアニメどころか生身の俳優すら駆逐しかねない勢いで進歩していく。ユーザーのパーツ選択によって萌えキャラを自動生成する3Dアバター作成ソフトのレベル向上は、絵師を必要としない世界を作り出しはじめているように見える。最終的にポップカルチャーは作家ではなく、企業が所有する巨大なデータベースに集約され、人工知能によって洗練されていくのかもしれない。 『海獣の子供』は五十嵐大介という極めて個人主義的で作家性の強い漫画家の作品をアニメ化した劇場映画である。普通、アニメーションはこうした、線に強烈な個性のある漫画作品を苦手とする。動画1枚ごとに絵柄やテイストをコピーするのに膨大な手間と技術が必要になるからだ。しかし過去に映画版『鉄コン筋クリート』で松本大洋という日本有数の作家の絵を
まず最初に言っておくと、小松菜奈と門脇麦の歌はめちゃくちゃ上手かった。ハルとレオで『ハルレオ』というのが劇中のデュオの名前なんだけど、このままデビューしても全然いけてしまうと思いました。『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』での吉岡里帆のロックボーカルもすごかったんだけど、小松菜奈と門脇麦という2人からもこんなクオリティのボーカルが飛び出してくるとは思いもせず、正直この二人の歌を聴くだけで映画チケット分の料金はお釣りが来ると思う。小松菜奈の透き通った声は「いったい天は小松菜奈に何物を与えてるんだよ」という感じだし、門脇麦は本物のシンガーソングライターの女性ボーカルのように、海の底のような深い世界観をたたえた声で歌っている。 パンフレットを読むとこの映画を主導したプロデューサーはエイベックス・ピクチャーの瀬戸麻理子氏で、門脇麦・小松菜奈の二人と十代から仕事をしてきた女
若きモンスター女優、浜辺美波に人生を賭けて挑んだ福原遥の名演。作品としても超一級 シーズン2までできた人気ドラマシリーズの映画化なんだけど、原作未読、ドラマも見ずに冷やかしで見たこの映画、めちゃくちゃ面白かったです。「カイジ」以降、デスゲームものって難病悲恋映画に匹敵するほど作られまくっていて、「またか」と敬遠してたんですけど、ズバ抜けて面白かった。たぶん何の知識もなくこの映画だけ見てもちゃんと理解できるしめちゃくちゃ面白いと思う。実際僕がそうだったし。 ギャンブルですべての階級が決まる学園で生徒たちがギャンブルをする…「またか」と思うじゃないですか。今回、映画オリジナルの脚本なんですけど、スクールカーストの中で階級闘争的なテーマを描いてるんですよね。ギャンブルに負けて人間扱いされてない生徒たちを救済する「ヴィレッジ」という宗教的な集団が出てくるんですけど、副音声(この映画は映画館内でスマ
冒頭からいきなり『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のネタバレをします。「ギャオーン!どがががーん!ぴろりろりっぴろりろりっ どががががーん!ギャオーン!ドッババキッツ!どーん!モスラ~やモスラ~!がおーん!」以上ネタバレでした。うわ~映画の核心しゃべっちゃったよ。 どうですか『シン・ゴジラ』や『アベンジャーズエンドゲーム』のあのネタバレ戒厳令ムードに対して、この『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の何しゃべってもまったく問題ないというムード。わかっているのに、わかっているからこそ面白いという。 へ~ニューヨークにも寿司屋あるんだな~、カリフォルニア巻きとか食わされるんだろうなあと思って入ったら「へいらっしゃい!これだろ?」とバケツで作った3㎏の巨大なプッチンプリンが出てくる感じ。あるいは3メートルのうまい棒。お湯でゆでたマルシンハンバーグ20キロ。全長15mのダイオウイカで作ったよっ
投じられた破格の予算と俳優の素晴らしい演技、海外進出をにらんだ日本映画だと思う 『キングダム』を見た観客は、「吉沢亮と山﨑賢人って対照的だな」と思ったのではないでしょうか。特に、山﨑賢人を他の映画で見たことがない人は、「吉沢亮はすごく整った顔だけど、山﨑賢人はワイルドな顔だな」と思うかもしれない。 でも実はこの二人、顔立ちはけっこう似ているんですよね。これらの記事の写真を見てほしい。 www.oricon.co.jp mdpr.jp trendnews.yahoo.co.jp そして、映画『キングダム』の宣材写真の山﨑賢人と比較してみてほしい。 lineblog.me www.cinra.net 実は、映画宣伝ポスターでは山﨑賢人は一度も「無表情」になっていない。怒りの表情も笑いの表情もあるけど、それらはすべて顔を大きく歪めて強調されている。これは映画の中でも同じで、山﨑賢人演じる信は常に
人類で初めて『片思いブラックホール』の撮影に成功した、世界の秘密に触れる映画である 映画館で何かが起きていると気がついたのは、ゴールデンウィーク明けだったと思う。アベンジャーズエンドゲームと名探偵コナンとキングダムという、ゴジラモスラキングギドラみたいな組み合わせのブロックバスター映画三大怪獣史上最大の決戦は、劇場で彼ら以外のあらゆる映画を虐殺しまくった。各映画館最大級のホールを占有するだけでは足りず、巨大な肉食獣が獲物を食い殺すような獰猛さと残忍さで、小規模中規模のヒット映画から劇場を奪い去って2ホール同時上映を行い(劇場によっては3作が同時にである)多くの佳作映画が打ち切りに追い込まれていった。 『愛がなんだ』という日本映画の予告編は何度か見ていた。成田凌は良い俳優だし、時間があったら見に行こうかなと考えつつ、なんだか地味そうな恋愛映画だし、何しろコナキンエンドの三大怪獣を見なくてはい
佐藤浩市の原文、実は「総理という仕事の過酷さと重要さ」について語っている というわけで、映画『空母いぶき』についての佐藤浩市氏の発言が論争になっている『ビッグコミック』を買ってまいりました。 何の話かわからない方は、まあこちらを読んで下さい。 「佐藤浩市が安倍首相を揶揄した」は言いがかりだ! https://lite-ra.com/2019/05/post-4711.html 佐藤浩市発言 冷静に取る向きも https://news.biglobe.ne.jp/topics/entertainment/0513/10036.html 佐藤浩市の発言炎上、批判する百田尚樹氏は「安倍首相を揶揄」と“曲解”の可能性 https://biz-journal.jp/2019/05/post_27882.html 経緯としてはリテラが文字数をさいてよくまとまっていると思う。 重要なのは、リテラだけでは
いきなり壮絶な話をして悪いが、観客が5人だった。 公開初日の金曜日から3日目である。ゴールデンウィーク最初の日曜日、翌日の月曜は祝日という19時の上映で、100席超の箱に5人だったのである。マジで。あまりにひどいので劇場を出るときに次の最終回の埋まりをチェックしたら2人だった。 最初に内容の話をしておくと、『バースデー・ワンダーランド』は悪い映画ではない。映像クオリティ的には非常に高く、物語も王道を行く佳作だと思う。脚本に細かい欠点はあるし、ここの演出はちょっと滑ったかな、という所はあるが、家族向けエンタメアニメ映画として悪い出来ではない。というか、近年の宮崎アニメや細田守作品のような「これ、ジブリブランドや細田ブランドが確立してるから興収数十億とか行くけど、作家性出し過ぎで子供のこととか何も考えてねえだろ」という大ヒット作に比べたら、『バースデー・ワンダーランド』の方がよっぽど王道、ファ
『松井玲奈リローデッド』的な第二章の幕開けとなったデビュー小説短編集 文春オンラインで松井玲奈『カモフラージュ』の感想を書かせていただきました。 https://bunshun.jp/articles/-/11422 宇多丸師匠がラジオで「度肝を抜かれた」「一作ごとに文体も人称もスタイルも変えている」と舌を巻いた6作の短編集。本当にデビュー作として見事だと思います。松井玲奈さんは短編映画オムニバス『21世紀の女の子』の中の『reborn』に主演しているのだけど、この小説は松井玲奈が出演者ではなく監督になって自分にとっての『21世紀の女の子(+男の子)』を連作短編として書きあげたような感がある。 『リアルタイム・インテンション』で一部だけ三人称が挿入されるんだけど、実はそれが作者の語りではなく、動画配信の固定カメラを表現した無機質な文章だったりという技巧もあって、文章が新人離れしているという
文春オンライン様で、『翔んで埼玉』と高須クリニックのコラボについて書かせて頂きました。↓ bunshun.jp 記事の文字数には入りきらなかったことをとりとめなく書きたいと思います。 映画『翔んで埼玉』を見ながら僕が感じていたのは、なんというかこの映画って1ミリも関ってないのにすごくブルーハーツっぽいな、ということでした。ブルーハーツっぽい、というニュアンスがどういうことなのか、知らない世代に正確に伝わるのか自信がありません。というか同じ世代でもまったく共有なんかされてないのかもしれません。でも僕にとって、ブルーハーツというのはカリスマ的ロックバンドなんかではまったくなく、ある意味においては『翔んで埼玉』的な所のあるバンドでした。それはカッコ悪いがゆえにカッコ良く、ふざけているが故に真摯で、ロックンロールのパロディであるがゆえに正統なロックンロールであるというような込み入った構造、ガラス細
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