シャーレの上では小さな私が寝返りをうったり尻を掻いたりしている。顕微鏡を覗く私は震える声で医師に尋ねた。 「これが、私のお腹の中にいたんですか」 「はい」 「これ小さいですけど私ですよね」 「そう見えますね」 「そんな病気があるんですか」 医師は一呼吸して答えた。 「なぜこんなことをあなたにお伝えしているかわかりますか」 「わかりません」 「あなたはそのうち死ぬ予定ですね」 「死刑になる予定です」 「あなたも既にお分かりだと思いますが、これは新種の病です。あなたが死んでしまうのは実に惜しい。そこで、あなたの死刑を取りやめて、人体実験が出来ないか、上層部に直訴しました」 「そんなことが出来るんですか」 「結論としては出来ないということでした」 「そりゃそうですよね」 期待しなければ絶望もない。私が35年間の人生で唯一学んだことはそれだ。周囲の人間達はありとあらゆる方法で光を投げてくる。強すぎ