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天皇制のルールブックである皇室典範の初改正が現実味を帯びてきた。ただし、改正趣旨は皇位継承の「安定化策」ではなく、皇族の「人数確保」にとどまる。背景にあるのは「女性や女系の天皇は絶対に認めない」という頑迷な「女人禁制」思想だ。その成り立ちに迫る。 本質を素通りしたままの「立法府の総意」作り 日本国憲法と同じ日(1947年5月3日)に施行された皇室典範は、実質的な改正が一度も行われていない。ところが、今年2月総選挙での自民党圧勝は、典範改正に向けた推進エンジンになった。 衆参両院の正副議長の呼びかけで4月に与野党にまたがる13党・会派代表者の協議が1年ぶりに再開され、5月までに全党・会派の見解が出そろった。これを受け、衆参の正副議長は6月前半にも「立法府の総意」案を取りまとめて政府に提出。政府はこれに沿った典範の改正案を国会に提出し、7月17日までの国会会期中に成立させる段取りを描いている。
中国の人民解放軍で高位の軍人が次々と姿を消している。ライバルの米軍に追いつくべく増強を重ねてきた巨大組織の内部で何が起きているのか。中国の党軍関係に詳しい筆者が「異変」の構造を考察する(文中敬称略)。 軍首脳部は解体に近い状態に 中国人民解放軍で、文化大革命以来ともいえる大規模な粛清が行われている。失脚した幹部のリストには、軍の制服組トップだった張又侠(Zhang Youxia、中央軍事委員会副主席)、同じく副主席の何衛東(He Weidong)、国防部長の李尚福(Li Shangfu)、政治工作部主任の苗華(Miao Hua)をはじめ、各戦区の司令員や政治委員が含まれている。 これにより軍首脳部はほとんど解体に近い状況となった。米国のシンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)のレポートによると、粛清の規模はさらに大きい可能性がある。同レポートは、2022年以降、実質的に全軍のあらゆる領
スマートフォンに先駆けて、携帯電話でインターネットの利用を可能にしたNTTドコモのネットサービス「iモード」。3月末でサービスを終了するが、「絵文字(emoji)」という世界共通語を生んだことも見過ごせない。 ケータイで銀行に振り込み、電車に乗れるように NTTドコモは2026年3月31日、第3世代携帯電話(3G)とiモードのサービスを終了させる。1999年2月22日にサービスを開始したiモードは、27年の歴史に幕を閉じることになる。 iモードは誕生当時、画期的なサービスであった。それまでインターネットを使うにはパソコン(PC)が必要だったが、ケータイ単体でネットを使える点が大きな特徴だった。しかし、成功した理由はそれだけではない。 ドコモでiモード事業を立ち上げた夏野剛氏(現KADOKAWA社長)が、一般企業の参画しやすさに徹底的にこだわったからだ。 当時、ケータイ向けウェブサイト用には
公立ながら外国にルーツがある生徒が全校の6割以上を占める教育の場がある。岐阜県立東濃(とうのう)高校だ。就職や日常生活に役立つ日本語を演劇を通して学ぶといった実践を重視し、希望にかなった進路実績を出している。独自の教育環境を探った。 社会的な自立を目指す授業 教室内では日本語のほか、英語、タガログ語、ポルトガル語など、さまざまな言語が飛び交っていた。 「雪女のアレンジバージョンです。雪女のストーリーなので、男の人が1人最初に死にます。この人が最終的にゾンビに復活する話です」 「『桃太郎』と『シンデレラ』の組み合わせです。エンディングを作るのが難しいですね」 東濃高校で、日本語指導を必要とする2年生が学ぶ「日本語Ⅱ」の授業。テーマは「多読演劇」。グループごとに脚本を作っている最中だった。 東濃高校の外国人の生徒が作った脚本 生徒は1、2年生の日本語の授業で読んだ昔話や小説をベースに物語を再構
マスメディアからネットへとメディアシフトが加速し、政治にもネット世論が大きな影響を及ぼす時代になった。その結果生じているのが「敵対的メディア認知」の急拡大だ。 敵対的メディア認知とは、自分の意見に反するメディアの報道は偏向していると思い込む心理的傾向(バイアス)のことだ。JX通信社と選挙ドットコムが毎月行っている世論調査で「テレビや新聞が発信する情報は、おおむね信用できない」という意見に共感するか否かを有権者に聞いたところ、今年2月の調査では実に52%が「強くそう思う」もしくは「どちらかと言えばそう思う」と答えた。 この意見に共感する人は敵対的メディア認知の傾向を持っていると考えられるが、数年前はこうした意見に共感を示す有権者の割合はおおむね3割台から4割程度にとどまっていた。それが今や5割を超えるまでに増えているわけだ。 背景には、SNSやYouTubeで発信力の強いインフルエンサーや政
外国人政策の厳格化や、政治家が外国人を否定的に語ることは、社会にどういった帰結をもたらすのだろうか。移民や外国人への差別や排外主義に詳しい大阪大学大学院人間科学研究科の五十嵐彰准教授に、海外や日本の現状を考察してもらった。 急変した外国人めぐる環境 2025年7月の参院選から、日本では外国人を取り巻く環境が急速に悪化した。選挙戦では外国人問題が争点化し、外国人に関する根拠の乏しい主張を掲げる候補者が当選した。例えば参政党の神谷宗幣代表は参院選の期間中、「仕事に就けなかった外国人がどっかに逃げちゃうわけです。そして集団をつくって万引きとかして大きな犯罪が生まれている」(※1)などと発言。参政党は参院の議席を大きく伸ばした。 参政党躍進などの影響を受け、自民党を含む主要政党も外国人政策に関する主張を相次いで強めていった。実際に外国人に関する政策の議論が急ピッチで進められ、永住許可や国籍取得の要
高市早苗首相は3月、就任後初めて訪米する。米トランプ政権が行動の不確実性を増す中、日米は「揺るぎない同盟」を世界にアピールできるのか。筆者は、現状の日本は結果的に「特別な立ち位置を得ている」とし、現実的な外交を貫くべきだと指摘する。 大きく変化する安全保障政策 2026年2月の衆議院選挙で、高市早苗首相率いる自民党と日本維新の会は465議席中352議席を獲得し、地滑り的勝利を収めた。自民党は公示前から大幅に議席を伸ばし、高市首相が掲げた「首相選択選挙」という位置づけは、事実上の信任投票として機能した。 果たして、これほどの議席の力を得た高市首相はこれから何を行うのだろうか。参議院では依然として少数与党だが、衆議院では参議院で否決された場合でも法律案を再可決できる3分の2を優に超える多数を有している。英誌エコノミストが高市首相を「最もパワフルな女性」と評したことは、国内政治基盤の強さが国際的
ここ数年、フランスで最も注目を浴びた漫画の一つ『未来のアラブ人』。世界各国へと広がり、ついに日本でも刊行されると、文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞するなど、高い評価を受けている。このたび順調に日本での第2巻がリリース。さらなる快進撃が期待される。昨年秋に来日した際、作者リアド・サトゥフに話を聞いた。 リアド・サトゥフ Riad SATTOUF コミック作家、映画監督。1978年フランス・パリ生まれ。シリア人の父とフランス人の母の間に生まれ、幼少期をリビア、シリア、フランスで過ごす。2010年に『Pascal Brutal』第3巻でアングレーム国際漫画祭・年間最優秀作品賞を受賞。15年に同賞を『未来のアラブ人―中東の子ども時代(1978‐1984)』で2度目の受賞。自ら脚本・監督を担当した映画『Les Beaux Gosses(いかしたガキども)』で10年セザール賞・初監督作品賞を受賞。日本
大瀧詠一は、かつて「歌は世につれ」という言葉を、「ヒットは聞く人が作る」との意味だと解説していた。音楽の作り手はあくまで「作品」を作るのであって、「ヒット曲」は聞く人が作るのだ、という。 高市自民党が1党で3分の2を超える議席数を得た衆院総選挙の選挙結果を見て、筆者の頭にはこの「歌は世につれ」という言葉が浮かんだ。永田町の「作曲家」たちの意図と想像を超える選挙結果が現出したからだ。 今回、ヒットを狙いながら最も当てが外れた「作曲家」といえば、やはり中道改革連合の野田佳彦前代表や安住淳前共同幹事長だろう。 自民党が獲得した議席は316議席。史上最多の議席数である。ただし、比例代表における自民党の得票率は36.72%だった。2021年、岸田文雄内閣発足直後の解散・総選挙で自民党が勝利した際の得票率は34.66%だから、今回はそれを上回っている。だが、05年の小泉郵政選挙で記録した38.18%に
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)による「家庭崩壊」と、政界を震撼(しんかん)させた安倍晋三元首相銃撃事件(2022年7月)とはどんな関係にあり、社会はどう受け止めるべきか。事件の1審判決を受けて、統一教会問題やカルト被害に詳しい紀藤正樹弁護士が考察する。 検察の求刑どおり、「無期懲役」の判決 1月21日、銃撃事件から約3年半を経て、山上徹也被告に下された奈良地裁の判決は、求刑どおりの無期懲役となった。刑事裁判実務では、実刑判決を選択する場合に求刑どおりの判決となることは珍しいが、無期懲役が維持されたのには、それなりの理由があるように思う。 1つは、複数の罪の認定がある。被告には殺人罪のほか、銃刀法違反(発射罪)、武器等製造法違反、火薬類取締法違反、建造物損壊罪の複数の罪に問われていたが、弁護団は、被告が作った銃は、銃刀法や武器等製造法でいう「拳銃」にも「砲」にも当たらないから発射罪は成立
「存立危機事態」をめぐる高市早苗首相の国会答弁が、中国の強い反発を生んでいる。その内容を正確に読み解くために、日本が外交の場で歴史的に自らの安全保障と台湾問題の位置付けをどのように捉えてきたのか、改めて確認しておきたい。 高市早苗首相の衆議院予算委員会における11月7日発言はどのようなものであったのか。それは、「台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。それは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それから偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれない」とした上で、「それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースである」というものであった。 台湾、あるいは台湾海峡で「武力行使」がなされると、それがどうして「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利
戦時下の思想や言論を統制した治安維持法。その中で、日常生活を絵に描いただけなのに学生らが投獄される事件が北海道・旭川で起きた。次々と摘発の対象を広げた法の暴走の結果だ。同法制定から100年の今年、104歳の「最後の生き証人」菱谷良一さんに証言してもらった。 菱谷 良一 HISHIYA Ryōichi 1921年旭川市生まれ。旭川師範学校(現北海道教育大学旭川校)の美術部員だった41年、治安維持法違反で逮捕(生活図画事件)。43年には懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決となる。戦後、名誉回復に向け、国家賠償の請求活動を続ける。2025年11月で104歳。治安維持法に関する「最後の生き証人」と言われる。 先生の逮捕 「まあ、しかし、嫌な事件だったなあ。まともに行けば学校を出て、(美術の)先生をやれたのになあ」。菱谷良一さんは84年前の1941年、19歳だった自分の身に起きた「事件」について、
ポップカルチャーは世界をめぐる 「AIにやらせたらもったいない!」ゲーム音楽界のレジェンド、TAMAYOが語る創作の喜び 音楽 2025.12.11 長年にわたりビデオゲームミュージック界をけん引してきたTAMAYO。単なるBGMから音楽作品へと引き上げた立役者の1人だ。クラシック音楽の教育を受け、YMOに熱中した少女がどうやってこの道に進んだか。本人に振り返ってもらった。 TAMAYO(河本圭代) KAWAMOTO Tamayo 1984年、音楽大学の作曲科を卒業しカプコンに入社。『大魔界村』など数々のアーケードゲーム向けに作曲を担当。90年、タイトーに移籍しサウンド開発部門「ZUNTATA」に所属。94年に『レイフォース』の音楽を手掛け、大ヒットを記録。2000年代半ばにタイトーを退社。以降はフリーランスとして、ゲームのほかアニメや映画の劇伴や、音楽ユニット「BETTA FLASH」な
恐怖マンガの元祖、楳図かずおの死去から1年が過ぎた。海外も含め再び注⽬を集める楳図作品は、⼿塚治⾍が描いた“明るい未来”と対をなし、暗く深い森のような独特の存在感を放つ。⼿塚の批判者として知られる楳図が、マンガ家を志したきっかけは⼿塚作品との出会いだった。楳図はマンガの神様から何を受け取り、何を否定したのだろうか。 仕事場に積まれていた手塚作品 楳図かずおは2024年10月28日、療養中のホスピスで88歳の生涯を終えた。筆者は、その少し前に見せてもらった、あるじのいない東京・吉祥寺の仕事場の様子が鮮烈な印象として残っている。床の上に手塚治虫の初期作が5~6冊、無造作に積まれていたからだ。 楳図は手塚に批判的だったことで知られる。代表作の一つ『漂流教室』(1972年)についてインタビューした2022年、こんな言葉を聞いた。 「今振り返ると、手塚治虫さん的な『明るい未来』への反発もあったかもし
クマの大量出没に伴う人的被害の多発が日本社会を揺るがしている。特に北東北3県の被害はパニックを起こすほど深刻だ。国立研究開発法人・森林総合研究所東北支所(盛岡市)で動物生態遺伝チーム長を務める大西尚樹さんは「この秋の状況は災害級」と指摘する。 大西 尚樹 OHNISHI Naoki 森林総合研究所 東北支所 動物生態遺伝担当チーム長。1972年生まれ。北海道大学大学院農学研究科を修了後、森林総合研究所。ツキノワグマなどの野生哺乳類の遺伝進化を研究する。クマの出没に関して多くのメディアで解説している。 人間の生活圏の中核に侵入 ─連日、クマの被害が相次いでいます。今年の特徴を教えてください。 クマと人間が出会う場所は、従来の里山から郊外の住宅地、さらに県庁所在地の市街地といった人間の生活圏の真ん中へと変化しています。この傾向は2023年に顕在化していましたが、今年はさらに生活圏に突っ込んでき
「ひとり」が安心して暮らせる社会は? 高市早苗さんが憲政史上初めて女性の内閣総理大臣に任命された10月21日、私は国会議事堂の衆議院本会議場、傍聴席にいた。別に世紀の瞬間を目撃しようと高揚していたわけではなく、物見遊山で行ってみることにしたのだが、当日は傍聴人の行列ができて立ち見が大勢出るほど。任命の瞬間は場内が拍手に包まれたものの、拍手しない議員たちもいたし、私は狭くて硬い椅子でお尻をもぞもぞさせ、心は冷めまくっていた。 かくいう私は2023年、男女同数議会を20年以上も維持する神奈川県大磯町を取材した本を出版している。女性議員を増やしたい、その参考になればと願ってのことだ。私自身が「中高年シングル女性」で、男性稼ぎ主モデルを土台とし、女性には結婚がセーフティーネットとなるような日本の社会構造からこぼれ落ちてしまう属性にある。だから、切実なのだ。長年、生活困窮や、さまざまな困難に遭い続け
親と来日して日本で暮らす外国の子どもにとって、日本語を自由に使いこなせないことが高校や大学への進学に大きな制約となる。それはやがて彼らの人生に不利益をもたらすかもしれない。日本語教育を通し、外国ルーツの子どものキャリア支援をしている団体「YSCグローバル・スクール」(東京都福生市、NPO法人青少年自立援助センター運営)の代表で、文部科学省中教審臨時委員も務めた田中宝紀(いき)さんは、そう指摘する。 1割が高校進学できず 外国ルーツの子どもたちは、ほとんどが親の就労や生活の都合で日本に来ます。来日直後は母国の友人や親族と別れたばかり。彼らの心の中は寂しさや混乱に占められていて、日本語を学ぶ意欲は必ずしも高くありません。 日本語をある程度学び、生活が落ち着いて周囲の状況が見えてくると、自分の夢を持つ生徒が増えてきます。大学に進学したい、教師になりたい、エンジニアになりたいといった希望を語り始め
多国籍の外国人が集住する埼玉県川口市。一部の政治家などからは中国人やクルド系トルコ人などに対する偏見が語られるが、市内では「隣人を支えよう」と25以上もの民間ボランティア団体が急増する外国人の子どもたちへの支援を続けている。 日本語教室ずらり、40年の歴史 「日本語勉強クラス」「日本語クラブ」「寺子屋日本語教室」……。JR川口駅前の公共施設キュポ・ラの入り口には、外国人が学ぶ日本語教室の開催を知らせるポスターがずらりと並ぶ。民間団体の数は市への登録だけで21、その他のグループなどを含めると25を超える。 市内で最も古い40年の歴史を持つのが「川口自主夜間中学」だ。7月末、JR川口駅前にある市の市民活動スペースで開かれていた教室を訪れると、生徒とボランティアスタッフが机を並べ、学習に取り組んでいた。 参加者の中国系の男子高校生は、「この教室で日本語を覚えて、勉強を続け、高校にも合格できました
全国知事会は「外国人の受入と多文化共生社会の実現に向けた提言」を国に提出した。参院選や自民党総裁選で外国人への規制強化が議論される中、日本語支援や子どもの日本語の指導、受入環境の整備などを政府に求めたのはなぜか。知事会で提言の責任者となった静岡県の鈴木康友知事に意図を聞いた。 鈴木 康友 SUZUKI Yasutomo 静岡県知事。1957年静岡県浜松市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、松下政経塾、企画会社経営、政治団体役員等を経て、2000年に衆院静岡8区から初当選。衆院議員を2期務めた後、07年浜松市長選挙で初当選し4期務める。24年の知事選では自民党推薦候補を破って初当選。 基本法と司令塔組織を ─外国人政策をめぐる全国知事会の提言は、政府の責任で外国人政策を充実させるよう指摘しています。具体的にどのような内容ですか。 提言は、政府に対して、日本に住む外国人を「地域の生活者・住民」と
2025年6月、最新作『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』を発表した世界的なゲームクリエイター、小島秀夫。複雑な人間ドラマ、アクション、政治的テーマを融合した壮大なゲーム世界を生み出してきた背景と、作品に込めた強い思いを読み取る。 ステルスゲームの創始者 小島監督は、映画的な演出や、戦争や社会問題、老いや死などの重い主題や物語を黎明期(れいめいき)のゲーム業界に持ち込み、メディアとしての表現の可能性を拡張した。世界中のクリエイターを触発し、ゲームを進化させた革新者だ。 代表作「メタルギア」シリーズは、1987年の第1作以降、全世界で累計販売本数6千万本を突破した。2001年に米誌「Newsweek」で「未来を切り拓く10人」に選ばれ、22年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した史上2人目のゲームクリエイターになるなど、国内外で高い評価を得ている。 具体的に、彼が
日本のアニメ産業は3兆円超の市場規模を誇り、国の「基幹産業」と位置付けられている。一方、国連人権委員会から「労働搾取」と指摘を受けるなど、制作現場の労働環境が問題視されてきた。業界内で近年起きている変化を踏まえつつ、アニメーターの持続可能な働き方を探る。 年収は上昇傾向 アニメ産業の労働問題が表面化したのは、15年ほど前からだ。2009年に「日本アニメーター・演出協会」(JAniCA)が実態調査を基にまとめた「アニメーター労働白書」を契機に、アニメーターの長時間労働や低収入が社会問題として顕在化した。 同白書では、現場の作画担当者(アニメーター)の職種の一つである動画職において、平均年収が約110万円との調査結果が公表され、世間の注目を集めた。筆者は、2013年ごろからアニメ産業の労働現場でフィールドワークを行っている。本稿では、現時点のアニメ産業の働き方の動向と今後の課題について見取り図
国外からの選挙介入があったのではないかと問題にあった7月の参院選。その意図の存在を証明することは難しいが、欧州の情報空間で起きているロシアの情報工作とみられる動きは、日本でも拡大していると筆者は指摘する。 2025年7月20日に投開票が行われた参議院議員選挙に対して、国外アクターの選挙介入があったのではないかと問題になった。選挙期間中の7月15日に情報法制研究所の山本一郎氏が掲載した、「ロシア製偽情報に操られる日本の選挙と参政党」というnoteに端を発する動きであった。ロシア製の「ボット」と呼ばれる自動プログラムが日本の政権を狙った偽情報の拡散や印象操作を行っていると山本氏が指摘し、そこで指摘されたX上のアカウント5件が翌日には凍結された。 選挙後にこの問題が複数のメディアによって取り上げられると、ロシアの政府系メディアであるSputnik日本のコンテンツを拡散していると山本氏に指摘された
千葉市稲毛区に本格的な平壌の冷麺を出すレストラン「ソルヌン」がある。脱北女性の文蓮姫(ムン・ヨニ)さん(34)が2024年3月に開業した。店には連日長い行列ができている。人気の秘密は、本場の味だけではない。自分の出自を隠すことなく、これまでの体験を率直に語る店主の姿にもある。 平壌冷麺の今の味を 店名の「ソルヌン」は「正月の雪」という意味だ。北朝鮮では正月の雪は縁起がいいとされている。店は昨年3月、蓮姫さんが今の本物の平壌冷麺の味を伝えたいと、夫の勝又成さん(35)とともに開いた。 幹線道路に面したビルの1階。最寄りの京成稲毛駅からは10分ほど歩く。それでも連日、本場の味を楽しみに来る人が絶えない。 蓮姫さんは料理人の家系だ。祖母は北朝鮮の南西部、黄海南道・海州(ファンヘナムド・ヘジュ)で食堂を営んでいた。母は平壌で最高級の高麗ホテルに勤務し、冷麺を作った経験があった。蓮姫さんはその味を教
在日中国人はすでに87万人を超え、日本社会で存在感を増している。中国における経済不安や政治リスクなどを背景に移住者がますます増える中、ビジネスを主目的にコロナ禍ごろから急増した「ニューカマー」の一部が在日同胞社会にあつれきを生んでいる。 「金持ち風」を吹かすのが常套手段 「『自分は客だ』、『俺はお前より上だ』という偉そうな態度がありありだった。本当に腹立たしい」 都内でコンサルティング会社を経営する30代の在日中国人男性、王さん(仮名)は、こう怒りをぶちまけた。怒りを向けた先は、日本への移住を希望して中国からやってきた男性、陳さん(同)だ。知人からの紹介で、日本のビジネスについて陳さんの相談に乗ることになった王さんだったが、来日前からその横柄さに憤りを募らせたという。 陳さんはまず、成田空港へ迎えに来るように要求し、商談場所として都内の高級ホテルのラウンジをわざわざ指定してきた。王さんが多
日本の右派勢力は保守的で国家主義的な思想を持つと考えられているが、彼らの多くが戦後「親米」を掲げる。戦前は「反米」だったはずの右派勢力が、なぜ戦後に雪崩を打って親米に転じたのか。米国のトランプ大統領が日米安保体制に不満をにじませる今、これからの日米関係はどうあるべきか。「対米自立」を訴える「一水会」の木村三浩代表が、自身の活動を踏まえて、客観的に歴史的経緯を語った。 木村 三浩 KIMURA Mitsuhiro 1956年、東京都生まれ。一水会代表。社会活動家。30歳から慶應義塾大学法学部、同大学法学研究科で学ぶ。81年「反米愛国・抗ソ」を掲げた「統一戦線義勇軍」の結成に参画、議長に。98年NASYO(非同盟主義学生青年会議)の常任理事となる。2000年に一水会代表に就任。著書に『男気とは何か』『憂国論・新パトリオティズムの展開』『反米自立論 日本のための選択と共同』(大西広氏と共著)など
2024年、「東京都同情塔」で芥川賞を受賞した九段理江さん。生成AIの文章を一部に使用したとの発言が大きな注目を集めた。海外で翻訳刊行ラッシュが続く本作の執筆の背景と、九段さんの「言葉」への強い思いを聞いた。 九段 理江 QUDAN Rie 1990年、埼玉県生まれ。2021年、「悪い音楽」で文學界新人賞を受賞しデビュー。その後「Schoolgirl」(芸術選奨新人賞)、「しをかくうま」(野間文芸新人賞)を発表。2024年1月、「東京都同情塔」で芥川賞作家に。 海外でも続々翻訳刊行 「全体の5パーセントくらいはAIで書いた」──昨年、九段理江さんが「東京都同情塔」(以下「同情塔」)で芥川賞を受賞した際、記者会見でのひと言が大きな波紋を呼んだ。 本作は、現実世界では白紙撤回となったザハ・ハディド案の「新国立競技場」が建設され、2020年に東京五輪が開催された後のもう一つの日本が舞台。建築家の
参院選で争点の一つになっている外国人政策に絡み、SNSで「生活保護世帯の3分の1は外国人」といった内容の投稿が拡散されている。しかし、2023年度に生活保護を受給した世帯のうち、外国籍世帯の割合は全体の2.9%であり、「3分の1」というのは事実に基づかない虚偽情報にあたる。 厚生労働省によると、23年度に全国で生活保護を受けた世帯数は165万478世帯(保護停止中を含む)で、前年度に比べ7015世帯増えた。 このうち、世帯主が外国籍なのは4万7317世帯(同)。前年度から23世帯増えたものの、総受給世帯数に占める外国籍世帯の割合は近年、2%台後半で推移している。 生活保護法は日本国民を対象としているが、旧厚生省は1954年に「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」とする通知を出し、一定の外国人に対して人道上の観点から生活保護法に基づく保護に準じた保護を行うとし、外国人にも生活
「自国通貨建てならば国債はいくらでも発行することができる。日本銀行が円を発行しながら国債を購入すればよいからだ。それを続ければデフォルト(債務不履行)は起きないので、財源がなくても財政支出はいくらでも拡大できる」という声が日本のSNS上ではなぜか非常に多い。 筆者は仕事柄、機関投資家や銀行、証券会社で国債を実際に売買しているプロたちと日常議論しているのだが、そういった現象に強い危機感を表す人が最近増加している。根本的に間違っているからである。 この原稿は出張先のニューヨークで書いている。当地の金融市場参加者に冒頭の話をすると、「いや、それはあり得ないでしょ」といった反応が返ってくる。一言でいえば、「フリーランチ(タダ飯)は存在しない」ということになる。 自国の債務に悲鳴を上げた英国人女性 2010年~11年にかけて筆者がロンドンに滞在していたとき、財政に対するイギリス人と日本人の感覚の大き
神社を身近に感じる日本人でも、上部団体の神社本庁についてはほとんどが知らない。一神教ではなく、八百万(やおよろず)の神を信仰対象にする神社に全国組織があるのはなぜか。疑問を解くカギは明治期以降の近代史にある。 ヒンドゥー教と同種のアニミズム 日本には神道(しんとう)という、伝統的な民族宗教が存在する。 その原始は、天体や山、巨石などを信仰していた、日本古来のアニミズム(自然崇拝)的多神教である。よって、確たる教祖や最高経典といったものは存在しない。 そしてそういう宗教は、インドのヒンドゥー教や東南アジア地域のピー信仰(精霊信仰)、またネイティブ・アメリカンのシャーマニズムなど、世界のあちこちに同じようなものがあって、特に「日本だけに見られる珍しい信仰の形」などではない。 しかしあえて1点、「神道という宗教の珍しいところ」を挙げるとするならば、前述したような、教義体系的にはかなりゆるい自然宗
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