冷戦終結後のアメリカ一極の時代は終わった。中国やインドなど新興経済の台頭著しい現在、ポスト・アメリカの世界が模索されている。 欧米各国はウクライナの紛争に関して、総論としてウクライナ暫定政権を支持しロシアを非難しているが、具体的な制裁となると、一致した立場をとることは今後とも難しいだろう。あるいは依然として紛争が継続するアフガニスタンやパキスタンをとりまく南アジアの国際関係をみても、大国を軸にして割り切れる状況にはない。ポスト・アメリカの世界は、まさに多極化の時代に入りつつあるように見える。 本稿では、多極化する南アジアをとりあげ、パキスタンを中心に対テロ戦争以降の国際関係をめぐる論点を整理しておこうと思う。そこで明らかになる地域の現状は、より広いポスト・アメリカの世界を展望するためにも意味があると思われるからである。 パキスタンは、中国・アメリカ双方と歴史的にきわめて深い関係をもってきた