トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事 【書評】 日本人の朝鮮観はいかにして形成されたか 池内敏 著 Tweet 2017年12月17日 ◆憧憬と衝突を繰り返して [評者]四方田犬彦=比較文学者 かつて中野重治は、友人が「朝鮮の人」という表現をつい口にしたとき、それを叱責(しっせき)して、朝鮮人はきちんと「朝鮮人」と呼ぶべきであると語った。ところが『広辞苑』は一九七〇年まで「鮮人」という見出し項目を立てていた。日本人は朝鮮人・韓国人に対し、自分たちが蔑称を用いていることに、長い間あまりにも無自覚であった。 竹島、従軍慰安婦、強制連行…。今日、日韓関係はあまりにも多くの困難を抱えている。巷(ちまた)にはヘイトスピーチが氾濫し、「嫌韓本」が書店に平積みにされている。どうしてこのような不幸な事態が起きたのか。根底に日本人の長年にわたる朝鮮人蔑視