昨日もAlphaFoldの話をしたけれども。 AlphaFoldはめちゃくちゃすごいタンパク質の構造予測ソフトウェアなのはほぼ間違いないけど、やっぱりGoogleがおいしいところ全部持ってくのかよ、みたいな悔しさはあるよな〜。 あくまでこれまでの過去の科学者たちが必死に解析してきたタンパク質の構造のデータがあればこそ、機械学習させることができてAlphaFoldができたわけだよね。 何年も人生をかけてタンパク質の構造を解析してきて、結局うまくいかず人生を無駄にした人とかざらにいるわけじゃないですか。 そういう先人たちのある意味命をかけた努力のうえに成り立っているわけですね。 確かにものすごく優秀な学習モデルを考えたのはGoogleやDeepMindだけどさ。 オイシイところというか、名誉はGoogleがほとんど全部持っていくような感じになっちゃってるのが、悔しくないといえば嘘になるよね。
昨日まで、5型パラインフルエンザウイルス(PIV5)を利用した、鼻から投与できるワクチンを紹介してみた。 こちらのウイルス改変体を用いたワクチンでは、ウイルス自体の増殖能力があるため、投与された人の体内でワクチンのウイルスが増殖してしまっていた。(前回参照) これでは、安全性に疑問を持つ人もいるだろう。 一方、先日友人の某氏に教えてもらったとおり、三重大学出身のバイオコモというベンチャーでは、2型パラインフルエンザウイルス(hPIV2)を改変したワクチンを開発している。 バイオコモのhPIV2を改変して利用するワクチン(BC-hPIV2)では、「ワクチンのウイルスに自己増殖能力がない」というところがポイントであるようだ。 これなら、ワクチン接種を希望しない人にまでワクチンが広がる可能性はほとんどない。 希望しない人にまでワクチンが広がるというのは、受け入れられないと思う人もきっと多いはずだ
マスクの有効性に関してなにやら計算した論文がScienceに出ていた。 Science載るんだというのが意外ではあるが、それだけ世界的にマスクの着用の是非に注目が集まっているということなのでしょう。 Face masks effectively limit the probability of SARS-CoV-2 transmission Cheng et al (2021) Science https://doi.org/DOI: 10.1126/science.abg6296 論文を発表したのはドイツ、中国などのグループだそうで。 マスクをすることで透過してくる粒子の割合は普通の不織布マスクだと30-70%くらいだと言われているらしいが、「その程度しか粒子をカットできないのなら、マスクしてもしなくても変わらないんじゃないか?」という指摘が出ていた。 確かに、「N95マスクなどの5%程
サイエンスに載っていた記事によると、コロナ前と比較して、インフルエンザに罹患する人はなぜか知らんけどめちゃくちゃ減っている。 しかし、それ以外の感染症は、減ってはいるものの確実に罹患者が出ているらしい。 Uncertain effects of the pandemic on respiratory viruses Gomez et al (2021) Science https://doi.org/10.1126/science.abh3986 Global Influenza Hospital Surveillance Network(世界インフルエンザ調査病院ネットワーク?)という、20ヶ国以上の100を超える医療機関での調査で判明したということ。 たしかにインフルエンザは2018や2019のシーズンと比較するとほぼゼロと言っていい流行度であったけど、ライノウィルスとかRSウィルス、
スワームラーニングという、新しい機械学習のあり方が提唱されている件の続き。 (スワームラーニングっていう名前がかっこいいよな、どうでもいいけど。) 医療の患者データなど、プライバシー的にやっかいなデータを使って学習する時に役立つという。 この提案では、スワームラーニングの体制に参加している機関(あるいは自治体とか国でもよい)では、ブロックチェーン技術を使って情報を安全かつ正確にやりとりする仕組みが構築されるという。 参加している機関のコンピュータは、他の機関のコンピュータから機械学習モデルとパラメータを受け取り、自分の機関のデータを加味した改良したモデルを作って、それをまた別の機関に渡す、みたいな感じらしい。 これを繰り返すことで、各機関は生の個人情報を含むデータを他機関に一切渡すことなく、全員のデータを加味したモデルを作ることができ、全員がその恩恵に預かれるのだという。 ↑ネットワークの
なるほど盲点だったなぁと思ったんだけど。 新型コロナウィルス、鼻や気道や肺の細胞に感染するのはもちろん、そういえば腸の粘膜にも感染するという話もあったけど、実は口の中の細胞にも感染することが示されたようです。 SARS-CoV-2 infection of the oral cavity and saliva Huang et al (2021) Nature Medicine https://doi.org/10.1038/s41591-021-01296-8 唾液検査をやるとウィルスが検出されるのは、これまで肺など他の場所で感染増殖したウィルスが、呼吸や咳などによって口の中に運ばれているから唾液に混ざって感染するのだと、多分多くの人は思っていた。 だが、この論文の研究者たちは、「実は口腔内の細胞にもコロナって感染するし増えるんじゃないか?」という疑問を持ち、この点を追求することにしたよ
ゴールデンウィークの始まる前のころに、Cell誌に新型コロナの変異株関連の論文が、同じ号に4つも載っていた。 競争が激しい分野では、複数のグループが同時に同じような成果や結論にたどり着くことがある。 今回もそう言うパターンのようで、ちょうど変異株も話題になっていることだし、いかにも重要そうだから読んでおこうかなあと思っていたのだった。 これまで、新型コロナの変異株に対する論文というと、昨年2月に発見されたD614Gと呼ばれる変異に対する解析がほとんどであった。 D614Gは、ウィルスのSタンパク質の614番目のアミノ酸がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)に変わっているという意味ね。 D614G変異株は、人間の細胞に結合する能力が少し上がっていることがこれまで明らかになっていた。 しかし、このD614G変異株は、変異する前の型のコロナウィルスに対して作られた抗体がそのまま普通に効くので、
通常、ガラスは2000度近い温度で加熱しないと溶けてくれない。 それだけ高温にしないといけないから、ガラス加工には大量のエネルギーが必要だ。 しかも、この高音に熱しなければいけないと言うのがネックで、射出成形などの安価で便利な成形方法を使うことができない。 射出成形というのは、金型に溶かした材料を注入して固めることで、形を作ることができるという方法で、一般的にプラスチック製品を安価に大量生産するのによく使われる。 これまで、ガラスは射出成型することができないため大量生産がやりにくく、素材としての利用頻度でプラスチックに負けてしまっていたのだという。 たしかに、プラスチック製品は身の回りに溢れているが、ガラス製品はコップなど一部の用途を除いてそれほど多くは見ない。 だが、ドイツの研究グループの科学者たちはそれよりもずっと低い温度で、ガラスを成形する方法を発見したのだという。 え?どゆこと?ガ
新型コロナ(COVID-19)の患者の血中サイトカインの量は実はたいしたことないことが多い、という前回の話の続きだ。 COVID-19の患者では、稀にサイトカインストームを起こして血中サイトカインの濃度が異常に高くなる人がいる。 だが、全てのCOVID-19重症患者でそうなっているわけではないらしい。(ここ今回の話の大事なところ) 研究では、168人のCOVID-19患者を調べて、サイトカインストームらしき異常なサイトカイン量を示していたのは、3%程度(7人)であったという。 注意しなければならないのは、この7人だけが重症化していたわけではないということだ。 「サイトカイン量が異常に高いサイトカインストーム群」では、7人のうち4人が院内で死去したのに対して、「それ以外のCOVID-19患者群」でも、161人中35人が病院内で死去している。 単なる重症度の違いではないのだ。 研究者たちは、C
新型コロナウィルスを回復したコロナ患者の血清とともに培養したところ、80日くらいで変異ウィルスができて血清が全く効かなくなったらしいという話がタイムラインで流れていた。 Masahiro Ono 小野 昌弘@masahirono査読前論文であるが、回復者血清の存在下でSARS-CoV-2を培養すると、ウイルスは変異を徐々に獲得、80日目までに3箇所の変異(1箇所は11aa挿入)を含むようになり、その回復者血清に耐性になった(中和できなくなった)。同時に複… https://t.co/8xLQrjjNue 2021/01/04 08:01:25 元の論文はこちら。 SARS-CoV-2 escape in vitro from a highly neutralizing COVID-19 convalescent plasma Andreano et al, 2020 bioRxiv 査読前
今現在、国民がコロナに対する対策をとっているおかげで、インフルエンザの感染者数が激減していると言う話らしい。 このままいくと、インフルエンザを絶滅させられるんじゃないか、とか、コロナ対策してたらインフルエンザを完全に克服してしまった、とか言う人がいる。 だが、疫学の分野で使われるSIRモデルによると、必ずしもそうとも言えないらしい。 むしろ、ある年にインフルエンザの感染者数が非常に少ない場合、その翌年か数年後にインフルエンザが大流行してしまう危険があると言うことをSIRモデルは予測するらしい。 最近アメリカから出た論文は、そのように予測している。 The impact of COVID-19 nonpharmaceutical interventions on the future dynamics of endemic infections Baker et al (2020) PNAS
新型コロナウィルスSARS-CoV-2は昨年末から世に出てきたウィルスだが、前世紀から人類はコロナウィルスとの戦いを続けてきている。 2003年のSARSの前は、コロナウィルスは単なる風邪を引き起こすだけのウィルスであった(と、多くの人は考えていた)。 人に感染を起こすコロナウィルスとしては、従来はHCoV-NL63, HCoV-229E, HCoV-OC43 そしてHCoV-HKU1 の4種が知られていた。 これらのいわゆる「風邪コロナ」との戦いの軌跡は、新型コロナウィルスとの戦いにおいても一定の知見をもたらしてくれる可能性がある。 オランダの研究グループが、1980年から現在までの間に同じ被験者に対して継続的に採取された血液サンプルを使って、コロナウィルスに対する抗体の量を調べた。 すると、ヒトは同一のタイプのコロナに頻繁に罹患してしまうらしいことがわかったという。 Seasonal
健康な人のウンコを食べると頭が良くなるが、デブのウンコを食べても頭は良くならないという研究結果が発表されていた。 何を言っているかわからないと思うが、俺もわk…じゃなかった、スペインの研究グループによるとても真面目な研究らしい。 Obesity Impairs Short-Term and Working Memory through Gut Microbial Metabolism of Aromatic Amino Acids Arnoriaga-Rodríguez et al (2020) Cell Metabolism https://doi.org/10.1016/j.cmet.2020.09.002 学習能力と腸内細菌叢(チョウナイサイキンソウ、腸内フローラともいう)の関係が、近年着目されているらしい。 腸内細菌叢とは、要するに腸の中でどんな種類の細菌がいるのか、という話だ。
中国では、政府の発表する統計の値が信用できないと言うことが往々にしてあるようだ。 個別の農家やあるいは政府の担当者が水増しして報告してしまう場合も考えられる。 最近では前よりは改善してきたと言うことになっているが、それでも依然として不正確な報告がなされることがあるようだし、中国人自身もそれを認識しているようだ。 そんな中国で、気象衛星のデータをもとに穀物収穫量を予測し、不正確な穀物収穫量の報告をしている地域を見つけ出すと言う研究が発表されていた。 事実上、中国の統計の不正確さを暴露する形になってしまっているような気もするが、こういうの出して良いんだな。 On the accuracy of official Chinese crop production data: Evidence from biophysical indexes of net primary production Li
SARSのコロナウィルスのRdRpは、これまで見つかっている同種のウィルスのそれよりも数倍早い可能性があるらしい。 Rapid incorporation of Favipiravir by the fast and permissive viral RNA polymerase complex results in SARS-CoV-2 lethal mutagenesis Shannon et al (2020) Nature Communications https://doi.org/10.1038/s41467-020-18463-z ウィルスは自身のRNA配列を複製するために、RNA配列をもとにRNAを作る酵素( RNA複製酵素、RdRp)を持っている。 ご存知のように、RNAは数珠つなぎにヌクレオチドが繋がってできたヒモ状の分子で、ウィルス含めた生物の遺伝情報を配列にして保存
当初、新型コロナの患者数は一旦増加を始めたら爆発的に指数関数的に増殖し、国中のほとんどの人が感染して免疫を得るまでその勢いは止まらないと考えられていた。 この想定が正しければ、新規感染者数は日に日に増え続け、確認された感染者総数のグラフはS字型を描くはずである。 感染者数の伸びは、急激に立ち上がる時期(”S字“の下のカーブ)の後、集団の大多数に免疫が成立して急激に鈍化する(”S字”の上のカーブ)というわけだ。 しかし、現実はそうなっていない。 日本だけではなく、世界の多くの国で、毎日発表される感染者数は一定であるとのデータが出ている。 患者数のグラフは、S字ではなく直線だ。 何故なのか? 確かに不思議だ。 粒沢も、7月に感染者数が伸びた後、一気に感染者数が爆発的に増加して手がつけられなくなると思っていた。 この疑問に答える疫学のモデルが発表されていた。 投稿は6月になされており、アクセプト
太っているとインフルエンザに対して弱くなるばかりか、インフルエンザの毒性が強くなりやすいという、ある意味衝撃の研究結果が米国の研究で報告されていたので紹介したい。 Obesity-Related Microenvironment Promotes Emergence of Virulent Influenza Virus Strains Honce et al (2020) mBio https://doi.org/10.1128/mBio.03341-19 肥満の人は感染症リスクが高い 肥満の人はインフルエンザなどの感染症に対して重症化するリスクが高い事は以前から知られていた。(シオノギのウェブサイトなど) また、肥満者はウィルスを周りにうつす期間が長いとする研究結果も近年報告されていたようだ。(CareNetの記事) 一方、Honceらは、もう一歩踏み込んでなぜ肥満者では感染症の重篤化
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