バスタブ渦の起源 日常生活で,浴槽や台所のシンク内の水を排出するときにバスタブ渦と呼ばれる水の渦巻 き流が見られる.この渦の回転方向は,台風などとの類推から,地球の自転によるコリオリ 力によって北半球では反時計まわり,南半球では時計まわりであるという「俗説」が有力で ある. しかし, バスタブ渦のような小さな渦構造に及ぼすコリオリ力の影響は非常に小さく, バスタブ渦の回転方向はコリオリ力では決まらないとする意見も強い.マサチューセッツ工 科大の Ascher H. Shapiro 教授は,北半球のアメリカ合衆国ボストンで,円筒容器を用いた軸 対称流れの詳細な実験を行い,バスタブ渦の回転方向は反時計回りとなって,コリオリ力に よって決まることを確かめた.Shapiro はその成果を 1962 年に科学誌 Nature に論文として発 表した.その結果には懐疑的な意見も数多く出されたが,南半球