先日、閉店直前に女性の客が現れた。 僕はカフェ店舗でパソコンに向かい、ミックスCDを制作していた。 気が付くとその女性は店の中にいて、何かを探している様子。 黒いパンツに黒い上着、黒いスカーフを首に巻き、 何しろ、頭のてっぺんから、脚のつま先まで黒ずくめ。 背は高く、体系は太め。年齢は50歳前後か?? 髪はストレートで長く、美人だが男性には媚びない頑固さのような ものが表情にある。 店内に香水の匂いが充満し、僕は作業をあきらめた。 「何か気になる物がございましたら、声かけてください。」 「ねえー、あそこにある額装はミュシャかしら?」 もちろん、そこに描かれているのはミュシャだった。 モエ・エ・シャンドンがシャンパンのポスターデザインにミュシャに 描かせたあまりに有名な作品だった。 僕は何だか少し意地悪な気になったので空々しく答えた。 「いやー、分からないですね。ミュシャのタッチには似てます