「大野病院事件」なしに日本の医療問題は語れない。医療費抑制政策、医師・看護師不足、相次ぐ公立病院閉鎖、医療訴訟、へき地医療、医療事故調査組織、患者と医療者の意識格差など、日本の"医療崩壊"に拍車をかけるトリガーとなった出来事だ。 ◆福島県立大野病院事件 2004年12月17日、福島県立大野病院で妊婦が帝王切開手術中に死亡。翌年3月、福島県は事故調査委員会の報告書を公表し、病院長らは「医療ミスだった」と認めて遺族に謝罪した。福島県富岡警察署は06年2月に執刀医だった加藤氏を業務上過失致死と医師法違反の容疑で逮捕。福島地方検察庁は同年3月に加藤氏を起訴、福島地裁で14回に及ぶ公判が行われた。逮捕されている加藤氏の様子がテレビで映し出され、「医者が患者の命を奪った」とするセンセーショナルな報道が医療者と患者の間の溝を深めたとも言われる。この間、医療界からは「患者を助けるために医療を行った医師が逮