それは新婚旅行の時だった。京都の街、四条河原町だったか。なぜその店に入ったのかは覚えていない。歩き疲れたのか、あるいは信号待ちのついでだったのか。 小さな書店の棚に、その本はあった。 『ひとりぼっちの山歩き』。そのタイトルになぜか惹かれた。ページをめくってみると、単なる登山の入門書ではない。著者の静かな語り口に、一気に引き込まれた。 その本はやがて僕にとって大切な一冊となり、寝る前に広げ、通勤電車の中でも読みふけった。京都の本屋が掛けてくれた緑色の紙カバーはやがて破れ、何度もセロテープで補修したが、もうボロボロだった。 装備の選び方などがご自身の経験に基づいて書かれており、道具屋に行く前にとても役に立った。また、タイトル通り著者はもっぱら単独行の方で、その気構えや危険回避についても詳述されていた。何より、章の名前が良かった。 第三章 危険沢を渡る 第四章 孤独稜線を登る と。会津の山の記述

