暑いから蕎麦を食べる!と私は彼に宣言した。 彼は、まぁいいけど、と言った。私に逆らえないことをよく分かっているからだ。 スマホに導かれる私を先頭にして、いざ蕎麦屋へ。 渋い蕎麦屋ではなく、白を基調としたシンプルお洒落な蕎麦屋。客層もシャレオツ。 そんな中紛れ込むクールビズの彼と、全身が灰色の私。こちらも負けじとシンプルイズベスト! 一つ隣の席には、雑学しか話さない男とそれに相槌を打つ女が座っている。 私達は蕎麦と向き合いに来たのだ。 鴨蕎麦、鴨蕎麦を食べるのである! 彼は、うーん、と一言唸ったあと、カレーうどんと蕎麦で迷っていると言った。 「蕎麦屋に来たら、やっぱ蕎麦っしょー」 私ではない。同じくメニューを選んでいるカップルの発言が奇跡的に一致したのだ。 彼は、蕎麦と出し巻き卵、と注文した。 出し巻き卵はそれはもうふわふわで、キラキラしていた。 ダシが薄く、上品だ。大根おろしとも合う。主役