食料を国民に安定的に供給するため、自給率の向上を図るとしても、目標に現実味がなければ食を支える農業の強化にはつながらない。 政府は新たな農政指針である「食料・農業・農村基本計画」で、自給率目標(カロリーベース)を50%から45%へと引き下げることにした。 足元の自給率は4年連続で39%となり、実現可能性を念頭に目標を改めたのは理解できる。実態から乖離(かいり)した目標に固執し、あるべき農政をゆがめてはならない。 もっとも、新たな目標の達成も容易ではない。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉が妥結すれば農産物輸入も増えよう。それに備え、担い手の確保や農地の集積を進め、国内生産者の競争力を高めることが急務である。 5年前に定めた50%目標は、農業資源をすべて投じたときに可能となる高い数値だったが、消費動向を踏まえずに生産目標を引き上げても、成果は期待できまい。 高すぎる目標を無理に達成しよ