環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が米ハワイで始まった。大筋合意への最後の機会と位置づけられる重大な局面である。 知的財産などの残された論点は、各国の国内事情で譲歩が難しいものばかりだ。日本も重要農産品関税の扱いで厳しい判断を迫られている。 だが、この機を逃して合意を先送りするわけにはいかない。各国は、高水準の自由化で成長を促すTPP本来の意義を再確認し、質の高い協定となるよう政治決断しなければなるまい。 特にTPPを成長戦略の柱とする日本は、自らの国益追求だけでなく、米国と途上国などの利害を調整し、合意を確実にする積極的な役割を果たしてほしい。 日本は米国との間で、コメの輸入枠の扱いなどについて詰めの協議を残している。国内農家が強く警戒する「聖域」だが、まず、この決着を急ぎたい。 交渉参加国の中で経済力が突出する日米の対立は、TPP交渉を停滞させる原因だった。その解消こそ
TPP交渉 米国のペースに惑わされるな(8月23日付・読売社説) 日本にとっては初めての本格交渉だ。いかに存在感を発揮し、交渉を有利に進めるか。攻めの姿勢が問われよう。 日米、豪州、カナダなど12か国による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合が、ブルネイで始まった。23日に閣僚声明を出し、年内妥結を目標に交渉の加速を確認する予定だ。 これをもとに、月末まで事務レベルで交渉が行われる。 閣僚会合の議長を務めるフロマン米通商代表は、「年内妥結はオバマ大統領の最優先事項だ」と強調する。大統領はTPPをテコに輸出を拡大し、雇用を増やすことを目標に掲げている。 米国は、ブルネイで年内妥結の方針を他国と再確認し、10月の大筋合意へ交渉に弾みをつけたい考えだろう。 それでは、7月の前回交渉の後半部分からようやく協議に参加した日本は、十分な交渉時間を確保できなくなる恐れもある。 米国ペースで早期に
TPP交渉参加 攻守両にらみ戦略で挽回せよ(7月26日付・読売社説) 日本がようやく、米国など11か国が進める環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加した。 安倍首相は、「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻め、国益にかなう最善の道を追求する」と強調している。 政府は、出遅れ挽回へ、攻守両にらみの戦略を強化すべきだ。 TPP交渉会合がマレーシアで開かれ、日本は12番目のメンバーとして2日半だけ合流した。 関税撤廃、知的財産権、投資など29章に及ぶTPP交渉をまとめた文書が、初めて日本に開示された。全体像を把握できるようになった意味は大きい。 次回会合は8月末にブルネイで開かれ、日米協議も8月以降、並行して行われる。政府は各国の主張を分析し、加速する交渉への対応を急がねばならない。 米国などは、10月の基本合意と年内妥結を目標に掲げている。マレーシアの代表も25日の記者会見
13参院選 農業政策 競争力向上へ具体策が必要だ(7月16日付・読売社説) 一層の貿易自由化に備え、日本農業の再生が急務だ。いかに衰退に歯止めをかけ、国際競争力を高めるのか。参院選の重要な論点である。 ところが、各党とも、成長産業としての「強い農業」の実現に向けた議論より、農村票を意識したバラマキ政策の主張が目立つ。そろって補助金の拡大を訴えていることが象徴的だ。 自民党は、民主党政権が導入した戸別所得補償制度を改め、「直接支払い制度」の創設を主張している。水田だけでなく、畑や果樹園も含む農地全般を対象にする。公明党も支援拡充を唱えた。 民主党は、現在の制度を維持したうえで、補償対象を畜産、酪農業者にも広げる方針だ。共産党や生活の党、社民党なども、所得補償制度を主張している。 農業従事者の平均年齢は約66歳だ。高齢化が進み、後継者不足は深刻である。農業所得も20年前からほぼ半減した。農家の
TPP交渉 攻守にらんだ戦略で巻き返せ(5月26日付・読売社説) 出遅れていた日本が、いよいよ約2か月後に環太平洋経済連携協定(TPP)交渉のテーブルに着く見通しになった。 政府は、交渉体制を強化し、アジア・太平洋地域での新たな貿易ルール作りで巻き返しを図ることが求められよう。 米国など11か国がペルーで行っていたTPP交渉が24日終了した。次回は7月15~25日にマレーシアで開く日程を決めた。 日本はTPP交渉参加を4月に11か国から認められたが、米国議会の承認手続きが残り、ペルーでの交渉には出席できなかった。 7月23日ごろに米国の承認が得られるため、マレーシアでは最長で3日間参加の公算が大きい。 11か国は年内妥結を目指し、関税、サービス、知的財産権などで交渉を加速している。日本はマレーシアで初めて詳細な交渉内容や各国の主張を把握できる。 TPPの政府対策本部を中心に早急に状況を分析
TPP参加表明 自由貿易推進で成長に弾みを(3月16日付・読売社説) ◆国家百年の計へ交渉力発揮せよ◆ 自由貿易と投資を拡大し、アジアの活力を取り込むことが、日本の経済成長に欠かせない。そのための大きな一歩となるだろう。 安倍首相は、米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を正式表明した。 菅政権で検討を開始して以来、約3年間、意見集約が難航した。首相の政治決断を評価したい。 首相は記者会見で、「TPP交渉参加は国家百年の計だ。今を逃すと日本は世界のルール作りから取り残される」と指摘した。 ◆日米同盟の強化に寄与◆ TPPは米国、豪州、カナダなど11か国が関税、サービス、知的財産など29分野で交渉中だ。 首相が「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻められるものは攻める。国益にかなう最善の道を追求する」と強調したのはもっともである。遅れて参加する日本は不利な立場だが、「交渉力」
安倍晋三首相が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明し、「アジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組み」と述べた。TPP参加は、日本が抱える長期デフレ、少子高齢化による内需縮小、国際競争力の低下などの難題を突破する切り札として期待できる。 まだ、交渉の場に立ったにすぎないとはいえ、大きな一歩を踏み出したことを歓迎する。 自民党内の反対が強いTPP交渉への参加は、政権発足時に「7月の参院選後」と予想された。それに比べると大幅な前倒しだ。2月の日米首脳会談で「全ての関税撤廃を約束するものではない」との共同声明を発表した後、高い支持率を背景に一気に党内をまとめた首相の決断を評価したい。規制改革のテコにせよ もちろん、楽観は全く許されない。交渉を進める11カ国による承認手続きなどは進んでいる。実際に日本が交渉に加わるのは、早くても7月ごろとみられ、出遅れは覆うべくもない。 多国間交渉で
安倍晋三政権が打ち出した「攻めの農業」を目指す改革路線を大いに歓迎したい。 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加は、日本が貿易立国として生き残るうえで欠かせない。そのためにも、日本農業を国際競争に耐えうる強い産業へ転換させることが必須だ。耕作地の大規模化など、具体的な政策として推進してほしい。 首相は政府の産業競争力会議で「農業を成長分野と位置づけ、産業として伸ばしていく」と述べた。成長戦略の策定に向けた重点10項目が定められ、農林水産品の輸出額を1兆円に倍増する考えも示した。 目に見える目標設定は当然だし、実現してほしい。一方で、日本農業を根本かつ構造的に再生させるには、より思い切った改革が必要だ。規模の小さい農地を集約化し、若者も従事できる専業農家を育成する基本政策である。 日本の農業従事者は、この30年で半減し、平均年齢は65歳を超えた。全国には埼玉県とほぼ同じ約40万ヘ
農業政策 攻めの戦略で自由化に備えよ(2月11日付・読売社説) 競争力を高め、一層の貿易自由化に耐えうる体質に変えていく。日本農業の課題は明らかだ。 農林水産省が「攻めの農林水産業推進本部」を設置した。農産品の輸出拡大などを検討し、政府がまとめる成長戦略に反映させるという。 林農相は初会合で「生産現場が需要を敏感につかんで付加価値を高め、農林水産業の潜在力を最大限に引き出したい」と語った。 基本的な方針に異論はない。問題は、それを裏付ける政策を打ち出せるかどうかである。 安倍政権の農業論議は、とても「攻め」の姿勢とは言えない。 2013年度予算案が象徴的だ。農業予算は13年ぶりに増額されたが、どこまで農業の競争力強化に役立つだろうか。 民主党政権が大幅に削減した土地改良事業費を復活させた。12年度補正予算案と合わせると約6000億円に上る。補助金を一律にばらまく農家の戸別所得補償制度も手つ
自公連立合意 TPP先送りなら国益損ねる(12月26日付・読売社説) 国益を本当に重視するなら、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する決断を先送りしてはなるまい。 自民党の安倍総裁と公明党の山口代表が会談し、景気・経済対策、外交安保など8項目の連立政権合意書に署名した。 合意書は、「自由貿易をこれまで以上に推進する」としたうえ、TPPについて「国益にかなう最善の道を求める」と明記した。 先の衆院選政権公約は、自民党が「聖域なき関税撤廃が前提なら反対」、公明党も「(国会で)十分審議できる環境をつくる」と、いずれも慎重だった。連立合意は、TPP交渉参加に含みを持たせたのであれば、前向きな動きだ。 米豪など11か国は、来年中のTPP交渉の妥結を目指している。日本は参加に踏み切れず、カナダ、メキシコにも後れをとった。 自由貿易を通じた経済成長にも日米同盟の強化にも、TPP参加は有力な手段とな
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く