つぎはぎ仏教入門 [著]呉智英 現代日本では「一般教養」の枠からこぼれてしまった仏教の現状を憂えて書かれた入門書。知識人の役割を重視する著者の立場は明快だ。覚者シャカのことばだけが仏教の本義。その厳しい教え、高い思索性は門外漢をもうならせる。なのに、主流派仏教は大衆への浸透を意識するあまり、後世まとめられた経典に依拠し時流に合う解釈を積み重ねてぐずぐずになっていった——。 エッセンスをつないだ作りが分かりやすく、かえって根源に触れる。特に「鎌倉新仏教」の各宗派を論じた部分は刺激がいっぱい。阿弥陀信仰は「救い」に重点を置くところにキリスト教の影響が見え、禅宗の「無」の重視や逆説好みは、そのまんま荘子思想だという。 ◇ 筑摩書房・1470円
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