[読書] 吉川徹『学歴分断社会』(ちくま新書、09年3月刊) (下図は、大学進学率の変化。1960〜75年に大きく上昇したが、その後はゆるやかな変化であり、50%前半で頭打ちになると予想される。90年頃は18歳人口が多いので進学競争率が高かった(大学に行きたくても行けないという状況)。しかしその後の進学率のゆるやかな上昇は、大幅な人口減によるところが大きく、希望すれば誰でも入れる「大学全入時代」に近づいた。) 「学歴」は多くの人にとって微妙な問題であり、「今は学歴ではなく実力の時代ですよね」といった無難な言説がまかり通っている。だが本当にそうだろうか? 計量社会学者である著者は、大規模な社会調査の統計にもとづいて、学歴が日本社会の格差問題において果す役割を分析する。「実力の時代」とは言っても、大卒と高卒は当初から賃金水準が異なり、大卒は働く期間が4年短くても生涯賃金は1.2〜1.5倍も多い