オーロラ熱水噴出孔フィールドで見つかったガラス海綿と、その上を泳ぐ赤いエビ。(PHOTOGRAPH BY OFOBS, AWI TEAM) どこまでも続く氷原や、ところどころに突き出た氷塊はまるで陸地のようだが、グリーンランドの北の海に陸地はない。それを示すように、ノルウェーの砕氷調査船「クロンプリンス・ハーコン号」が、北極海の海氷を砕きながらゆっくりと進んでいた。 ノルウェー領スバールバル諸島にある町ロングイェールビーンを出港してからここへ到着するまで、予定よりも長い時間がかかってしまった。ところが、米ウッズホール海洋研究所のクリス・ジャーマン氏はせっかくの絶景に見とれることもなく、海底から送られてくるライブカメラ映像を一心に見つめていた。 ジャーマン氏らが画面に映るのを待っているのは、海底に開いた裂け目から漆黒の深海へ噴き出す超高温の水煙だ。ガッケル海嶺沿いのオーロラ熱水噴出孔フィール