本書はプラトンの初期の作品であり、岩波文庫が1927年に創刊されて以来、現在にいたるまでの累計販売部数で1位に輝いている著作です。 本文は100ページ程でコンパクトですが、その内容には終始圧倒されます。 ソクラテスが告発者から「人々を欺く雄弁家」「神々を信じてはならないことを教えて青年を腐敗させる者」などと憎悪を込めて訴えられたことに対して法廷で弁明を試みる話で、この独白には感動せずにはいられません。 ソクラテスの弟子で友人でもあるカイレフォンはかつて聖域デルフォイにおもむき、「ソクラテス以上の賢人はいるか」という問いに対する答えを神託に求めました。 デルフォイの巫女はこの問いに対して「ソクラテス以上の賢人は一人もいない」と答えます。 ソクラテスはこの神託を知って自問自答し、賢者と評判の政治家や詩人、手工業者に会いに行っては対談をするのですが、彼はこんなことを悟りました。 とにかく俺の方が