中世教会の壁や座席には、おまじない、祈り、呪詛、守護呪文と思しきグラフィティが刻み込まれている。刻み込んだのは、主に信徒だが、教会によって刻まれたグラフィティもところどころに遺っていた。 マシュー・チャンピオン(Matthew Champion)は、新刊『中世のグラフィティ:英国教会の失われた声(Medieval Graffiti: The Lost Voices of England’s Churches)』で、イギリス中の教会を巡り、壁や座席の裏に描かれたグラフィティについて実施した調査から、「教会は、これまで考えられていた以上に、いわゆる「魔術」に関わっていたのでは」という興味深いテーマに突き当たった。チャンピオンによれば、教会が「中世の奇妙な獣や、未知のドラゴンと戦う騎士、石灰の海を渡る船や、壁に忍び寄る悪霊」たちの戦場になっていたという。壁や椅子には「ラテン語による死者への祈り」