書評委員お薦め「今年の3点」 柄谷行人[掲載]2008年12月21日[評者]柄谷行人(評論家)(1)暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る [著]山極寿一 (2)K・A・ウィットフォーゲルの東洋的社会論 [著]石井知章 (3)民主主義への憎悪 [著]ジャック・ランシエール [訳]松葉祥一 (1)動物には攻撃性を抑止する本能的機制があるのに、人間にはそれが欠けているという考えがこれまで支配的であった。しかし、たとえば、類人猿たちは本能的機制をもっておらず、さまざまな社会的システムによって攻撃性を抑止している。人間にもそれができないはずがない。 (2)ウィットフォーゲルはロシアや中国の社会主義体制を「東洋的専制国家」として批判したため、「反共」思想家として葬られた思想家だが、本書が示すように、現在の中国や北朝鮮、ロシアを見る上で、彼の認識は今も不可欠だ。 (3)議会制民主主義とは、実は、少数