銀座エルメスで『ベゾアール展』が開催されるという報に接した。昨年のことだ。オランダの写真家シャルロット・デュマの作品を中心にした展覧会らしい。デュマといえばアレクサンドル父子というふうにしつけられたため、恥ずかしながらシャルロットさんのことはまったく存じ上げず、それだけでは心を素通りするような情報だったが、テーマがベゾアールとなると事は重大である。 ベゾアール石とは山羊の胃から取り出す石のことで、たいていの薬に対する解毒剤になる、というのは常識である(『賢者の石』を読んだ者にとっては)。ロンが毒入り蜂蜜酒を飲んで死にかけた時に機転を効かせたハリーが魔法薬学の教室の棚からマッハでベゾアール石を探し当て、ロンの喉に押し込んだことで彼の命を救ったことも、もちろん周知の事実である(『謎のプリンス』を読んだ者にとっては)。ちなみに前者は魔法薬学の最初の授業でセブルス・スネイプ教授がハリーに対して「答