丼のふたを開けると、きらきら輝いて艶めく鰻(うなぎ)の蒲焼(かばやき)。圧倒的な光景に一瞬くらっとし、香ばしさに酔いしれる。 そのうな丼の行方が危ない。今年二月、環境省はニホンウナギを絶滅危惧種に指定。IUCN(国際自然保護連合)もレッドリストへの記載を引き続き検討中である。わたしたちは、どうすればウナギを守れるのか。いま日本人が知るべきこと、知りたいこと、知りたくなかったこと、本書はウナギをめぐる現実を多角的に浮かび上がらせ、きわめて精度が高い。今年七月、土用丑(うし)の日に開催された画期的なシンポジウムを、異例の速さで編集してわずか四ヶ月めに刊行、ウナギと日本人のありかたを世に問う。 シンポジウムの多彩な顔ぶれが、読みどころだ。ニホンウナギの産卵場所を世界で初めて解明した日本大学・塚本勝巳教授をはじめ、水産学者、増養殖の研究者、行政担当者、報道関係者、養鰻(ようまん)業者や蒲焼商など、