この世界のあらゆるものは、他のものと独立にそれ自体で存在する。それはそれでしかない。これが、グレアム・ハーマンのオブジェクト指向存在論における根本的な発想だ。 ハーマンは、「思弁的実在論」や「オブジェクト指向存在論」といった21世紀の新しい哲学的潮流を牽引しているアメリカの哲学者である。20世紀ドイツの哲学者であるハイデガーの研究から出発し、オブジェクト指向存在論という独自の哲学的立場を展開している。ハーマンのこの立場は、いまや哲学だけでなく、アートや建築などの分野にも影響をあたえつつある。 本シリーズは、オブジェクト指向存在論の考え方を、哲学の予備知識がなくても読めるように解説した入門的なシリーズだ。 とはいえ、あつかう対象は現代の最先端の形而上学理論である。ときにnoteにはふさわしくないほどに、高度に抽象的で日常からかけ離れた表現が出てくることもある。そもそも形而上学とは、この世界に