業界紙で働いてきた岡田恒雄さん(62)=仮名=は、3年前、5歳下の妻と離婚した。その12年前の夏の蒸し暑い夜、風呂上がりの岡田さんの前に冷えたビールと枝豆が用意されてあった。めったに飲まない妻のグラスもある。 乾杯してグラスをテーブルに置いたとき、「ちょっと話があるんだけど…」と妻が切り出したのは離婚話であった。「別れたいの」という妻の言葉に、岡田さんは当然のごとく「なぜ?」と聞いたが、妻からは明確な理由は語られなかった。 岡田さんの会社に契約社員として入社してきた妻と結婚して18年、仲が悪かったわけでもない。それどころか言い争いすらしたことがなかった。その夜は、「もう一度ゆっくり話し合おう」と就寝したが、ベッドを共にする妻の寝息を耳にしながら岡田さんはほとんど眠れなかった。 翌日、妻はなに事もなかったように、そのとき勤めていた翻訳の会社に出社していった。高校2年になる娘は、前夜そんな会話