1.はじめに 国内外で行われた調査研究では、週55時間以上の長時間労働は脳卒中、冠動脈心疾患などの脳・心臓疾患のリスクを増大させ、週60時間を超えるとそのリスクはさらに増大することが報告されています。国内で公表されている脳・心臓疾患の労災認定基準では、業務の過重性を評価する負荷要因として、労働時間、交代制勤務・深夜勤務、精神的緊張を伴う業務など7つの項目が示されており、その中で労働時間が最も重要とされています。総務省の労働力調査によると、2016年に週60時間以上勤務した労働者は約429万人で、未だに多くの労働者が長時間労働に従事している実態が明かされています。実際に、長時間労働を行う労働者の一部に、それが原因で脳・心臓疾患を発症し、過労死に至った例が存在します。2016年は、業務上の過重な負荷によって脳・心臓疾患を発症したとされる労災認定件数は260件でした。これらの認定事案の約90%に