初出:Tactics/Keyゲーム評論集『永遠の現在』(2007年8月19日 コミックマーケット72)、2007年6月24日脱稿 Key作品においては、感想等で「家族がテーマである」と言及されることが多いが、これまで、この「テーマ」という言葉が発せられるとき、家族の存在を自明とし、家族「である」ことを称揚する家族主義の立場から発せられていることに特徴があるとの印象を有していた。そこで、この際、Key作品において水瀬家という特異な存在を有する『Kanon』において、改めてその家族の有り様を検討し、表現上実際にどのような家族の姿や人物同士の関係が示されているかについて検討する。 『Kanon』における主人公、相沢祐一の水瀬家への招待から馴染んでゆくまでの部分について、まず見ていこう。冒頭、名雪が迎えに来た際のやりとりについては、水瀬家全般に関わるというより、名雪自身の有するわだかまりに端を
初出:GD# Vol.25(2006年11月12日 第5回文学フリマにて初売り) 『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』は、涼元悠一氏が企画・シナリオを担当した作品であるが、Tactics/Keyブランドとして他の作品が有するものと同様の、顕著な特徴がみられる。第1には、「天国をふたつに分けないでください」という、ロボットである「ほしのゆめみ」による言葉によって「ふたつの世界」への意識化が行われていることである。この点においては、『ONE』や『CLANNAD』のように、明確にふたつの世界の描写が行われているものではないが、意識化のレベルとして、人とロボットの天国というふたつの分かたれた世界の対立構造を示している。そして、それらがいつかひとつに融合することを夢み、そこに至上の幸福があると位置づけている。この点において、『CLANNAD』のように「幻想世界」と生活世界(*1)との
初出:『Sweetheart,Sweetsland〜長森瑞佳論〜』(2006年8月11日 コミックマーケット70にて初売り) 0.本論の目的 折原浩平を視点人物とする『ONE』において、浩平を規定する人物としての長森瑞佳の存在を対象として、ほぼ浩平の視点によって描かれた彼女の人物像を検討し、『ONE』の作品理解の一助とすることを目的とする。 1.浩平と長森との相互の関係認識 視点人物かつ主人公である浩平に対して、理想的な幼なじみとしての関係を保ちつつ、攻略対象としては最高位の難易度を有するといわれる長森。彼女との関係は、このアンバランスさの中に成り立っていると言っても過言ではない。 浩平に構い続ける長森に対し、浩平自身は常に逃げ去ろうとする態度をもって接するのが通常の姿である。例えば、 (1)幼少時に部屋に引きこもっていた浩平と、石を投げて一緒に遊びたいと関わりを求める長森(
初出:Romantic Irony(2005年12月30日 コミックマーケット69にて初売り) 0.本論の目的 本論は、『CLANNAD』の作品論として、映画『花とアリス』や麻枝准作品『ヒビキのマホウ』を引き合いに出しつつ、『CLANNAD』の作品について検討するものである。 1.花とアリスの記憶の捏造 以前、C.F氏とともに『花とアリス』を映画館で鑑賞した際、氏から「自動的に打ち込まれたI(アイ)について」という方向性の指摘を受けた。確かに、宮本雅志のことを記憶喪失だと自分に都合の良いよう決定づけ、宮本との恋人の関係を、過去の感情と記憶を捏造していくハナ。ハナにつじつま合わせをお願いされたことをきっかけに、宮本との過去の恋人役を務めながら二人がつきあっていた頃の思い出を捏造していくアリス。全てが嘘だと分かっても、「責任取ってもらうからね」とその嘘に乗り続けることを表明する宮本。
Research Research ONE ~輝く季節へ~ 私論・試論・恣論? then-d 0. まえがき いま、このページをご覧になっている方なら、『ONE ~輝く季節へ~』(以下、ONEと略)については少なからず驚愕し、感動を覚えたことだろうと思います。私もその多くの人間の一人です。しかし、感動といっても、言葉にすると本当に通り一遍になってしまいます。とはいえ絵も描けなければ、音楽は少し演奏できるだけで創作のできない私には、やはり言葉で表現するしかありません。 言葉の限界については重々承知しているつもりです。でも、分かって貰うためには言葉を用いるしかない、それが私です。そのために、ONEを論ずるに当たってその文章面にしか言及できないことになりましたが、自分がONEと切り結ぶにあたっては、そこが最適な条件ではないかと思っている次第です。 ………。 ……。 つまりは僕は、自分の立場をわき
Research Research 恋愛ゲームへの、4つの視点からの考察 本原稿は1999年冬C57に「lo/ast love.」の中で「1999年恋愛ゲーム総括」と題して発表されたものです。 then-d 0. ご挨拶 評論を担当させていただくthen-d(ぜんでぃー)と申す者です。 1999年恋愛ゲーム総括などと、ずいぶん大上段に構えたタイトルにしてしまいましたが、もちろん私がプレイした恋愛ゲームの数は、全タイトル数に比べればほんの一握りです。今年発売のタイトルでは、10本に満たないと思います。その中で、私が選んでプレイしたゲームは、常に「読む」ことのできるものを意識しているようです。やはり、時間を割いてプレイするからには、そこからなにかしら得るものがなければ満足できないと考えてしまうため、このような傾向になるのでしょう。 もちろん、全てを忘れてゲームの世界の中に浸り、その世界を無心に
Research Research 身体的関係性と経験 本論は「Piece of Distiny」(seraphim's/「コミックマーケット58」にて頒布)に初出の原稿です。 then-d 0.まえがき 昨年冬に、私にとって即売会用では2本目、このサークルでは初めての評論を上梓しました。そのときにちょっと気張りすぎてしまい、これまで私が持っていたほとんどの材料は使い果たしました。というわけで、今回については全く使えるコマがない状況でスタートしてしまい、ひねり出すのに多大な苦労を強いられました。全く、自分を常に変化させていくということは厳しいものです。 いろいろ本を読んでみたものの、なかなか自分の血肉にならずに前の時以上に消化不良なものになりそうですが、ご用とお急ぎでない方だけおつきあいください。……といっても、これを読んでいらっしゃるということは、既にその心配は無用というわけですね。 今
Research Research 『ONE』 ~視点の問題を中心に~ 本論は「ONE卒業文集プロジェクト」(http://onegraduate.tomangan.org/)による「ONE卒業文集」 2001年 2月12日初版第1刷、「Blight Season 8」 にて初売)に初出の原稿を恋愛ゲームZEROに掲載に当たり改訂したものです。(2001/03/11) ONE卒業文集第2版制作につき改稿しました。(2002/06/08) then-d 2001/03/11初版、2002/06/08最終更新 『ONE』(注1)において最も注目されることは、恋愛ゲーム(注2)中において「永遠の世界」という世界を設定したことと、2つの世界を交互に描き出していく、という特徴的な表現方法にある。 後者の方法によって書かれた小説で、『ONE』に先行するものとして『世界の終りとハードボイルド・ワンダーラ
Research Research 私的AIR論 恋愛ゲームを遠く離れて 本論は「far from」(seraphim's/「コミックマーケット59」にて頒布)に初出の原稿を恋愛ゲームZEROに掲載に当たり改訂されたものです。(2001/09/23,秋風)ページデザインのみ更新しました。(2003/05/10,秋風) then-d (初稿: 2000.12.30 改稿: 2001.9.22) 1.絶望と希望・意志と諦念の狭間で 「AIR」(※1)において最も特徴的な点で、最も目に付くのは、なんといっても観鈴のキャラクタとしての幼さに尽きるだろう。どう考えてもこれでは一般的な恋愛ゲームとして主人公との関係を構築できるようなものとは考えにくい。どうしてこのようなキャラクタをもって「AIR」のスタートが切られるのか、そこを本論のとりかかりとして、物語のメインストリームである"DREAM"における
Research Research 自己の物語化及び物語の交錯論 本論は「Departure」(Project Seraphim/「コミックマーケット61」(2001/12/30)にて頒布)に初出の原稿です。(2002/07/08) then-d 2002/07/08初版 目次 序 MOON. ONE~輝く季節へ~ Kanon 舞シナリオを中心に AIR CLANNAD 参考文献 1.序 本論は、ほぼ共通したスタッフからなると目されるMOON.・ONE・Kanon・AIRを横断的に概観することでその作品中に通底する要素を探ること、及び作品毎にその要素がどう変化して現れているか、という観点によって考察を行ったものである。この方針により、考察は所謂麻枝系シナリオの部分に論点が集中することとなった。この点についてはご容赦願いたい。 なお、本論考においては、過去に私自身が言及した作品及び論点につい
Research Research 記憶を巡って 本論は「GD# vol.2」(GameDeep様/「コミックマーケット63」にて頒布)に初出の原稿です。then-d氏ご本人の許可を得て掲載しています。(2003/05/10,秋風) then-d 昨今、同種の物語を下敷きにしつつ、新たな物語を紡ぎ出そうとする動きが、ゲーム、アニメ、映画といった様々なジャンルで見られる。例えば、映画「A.I.」において、「ピノキオ」の主題に同一化しつつ行動するデイヴィットの姿は記憶に新しいところだろう。アニメーションにおいては、現在「プリンセスチュチュ」において、様々な童話を下敷きにして、そこから紡がれてゆく物語という形式を意識的に扱うという意欲的な作品が進行中である。また、ゲームにおいては、システム上の特性を活用し、単線的ではなく、円環的な構造を用いるものが目立つ。「AIR」においては、"DREAM"とい
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く