母権制とはいかなる概念か 江戸川大学紀要『情報と社会』9号 1999所収 平山満紀 1.端緒 現在、男女の力の行使の仕方には諸次元で複雑な変化が起きている。これには先進国に共通の変化もあり、また日本社会に固有の変化もある。この変化は、単に女性が政治的、経済的、社会的な力をより多く行使できるようになり、男性が相対的により少ない力しか行使できなくなってきたということにとどまらない。女性が従来ある種の力を振るってきたことが問題視されるようになり、女性が自らその力を放棄しつつある、ということも起きているのである。 例えば先進国に共通した社会現象として、共依存co−dependencyの問題化がある。共依存とは、夫婦、恋人、親子関係などで、身近な人に献身的に世話をしつつその人を感情的な面で支配するということへの依存であり、従来は、女らしさとして文化で正当化されてきた姿勢である。アルコール依存症者の