1990年の8月に刊行された本が22年近くを経て加筆され再版された。僕も90年版を手に取ったとき、まだ大学院に入る前であった。そのとき今回の2012年版のまえがきにもあるように、当時はまだインフレが問題だった。そのため大学院で僕が始めていたデフレーションの研究の中で本書はあまり重要なものとは映らなかった。だが、今回の2012年版は、この20年近くにおよぶデフレーションの経験をフルに活用し、さらに予想(期待)を重視する金融政策のフレーム(つまりインフレ目標)の意義をより深く解説することで、インフレとデフレの題名にふさわしい決定版になったといえる。 日本にとってデフレの経験は不幸だが、本書がデフレの側面を強化したことは、この本にとっての「幸運」だといえる。おそらくこれから長い間、本書が経済の貨幣的な側面を考えるときに古典としての地位を占めるのは間違いない。岩田先生の本書改訂にかけた情熱はすばら