思えば商標法の世界に「小売商標」なる得体のしれないものが導入され、「当局の説明を何度聞いても運用のイメージがわかない!」という担当者の悲鳴と阿鼻叫喚の中、施行されてからはや12年。干支がくるっと一回りするくらいの月日が流れた。 幸いにも、特許庁の比較的”柔軟”な査定運用のおかげで、昨今の「新しいタイプの商標」のような悲劇的な事態*1は生じなかったし、さらに幸いなことに、小売等役務の区分で登録された商標が紛争の道具として使われることもそう多くはなかったように思われる。 それゆえ、「小売・卸売の区分で商標を使いたい会社が淡々と商標を出願して登録し、淡々と使っている」という実務者的には極めて幸福な時間が今に至るまで流れているわけだが、それは裏返すと、制度導入当時にいろいろと議論されていた「小売等役務商標の本質」とか、そこから導き出される「小売等役務商標の権利範囲」はどこまでか?という解釈論があま