没後26年、なお根強い人気があり、未来社から現在刊行中の著作集も48巻を数えた旅する民俗学者、宮本常一さんの代表作です。 岩波文庫版で1984年に初版が発行され、2006年で53刷を数える大ベストセラー、その魅力について本屋の視点から語ってみたいと思います。 この作品は宮本常一さん自身が1950年代に、日本各地のさまざまな村の古老たちに行なった聞き取り調査がもとになっています。 古老たちは農民や馬喰など歴史の表舞台に出ない庶民たちであり、その人たちが経験してきた記憶、たとえば村の寄り合いの様子、田植、一日の生活、旅の話、夜這いの話など、その当時ですらすでに失われつつあり、現代においては消えてしまった数多くの風俗が丹念に描き出されています。 それでは誰が「失われた日本人」だったのか? 読んで感じたのは知恵を持った老人たちではないかということです。 長い人生の中で身に付けた個人的なもの、また村