「でも、そんな偶然があるんですか?」 「佐野の証言だと、その女のサンプル瓶は途中で当然、廃棄するつもりだったらしいが、どういうわけか、その会社に忘れてきたらしい。」 阿島が答える。 「その女の人は捕まったんですか?」 亜子は阿島に質問するうち、誠実に答えてくれる阿島に、警戒心を徐々に解いていった。 「捕まるもなにも、その女、黒木はすでに施設に収容されていた。」 「えっ、施設?」 「そう、彼女はSirouts博士のブログ中毒患者専用収容施設に措置入院されていたんだ。妄想性のひどさから、LV.5の施設に収容されていたらしいが、なぜか、郵送物のチェックをすり抜けたらしい。」 「cookpadにパクられたための復讐という主張も?」 阿島はうなずく。 「おそらく、彼女の妄想だろう。彼女は外出許可が出たときにその材料を持ち込んだらしい。患者とはいえ、囚人とは違い、強制的な監視もできなかったということら