雪、無音、古刹にて僕は京都、妻は東京なので休みを見つけては行き来しつつ遠距離交際は2年ほど続いていた。京都は妻のお気に入りの観光地であったため、のべ10年ただ無為に過ごした僕よりも妻の方がよほど京都に詳しかった。妻はよく「君の体は京都にあるけど、君は京都に『住んで』はいないね😅」と呆れたものだった。僕が知っている京都の観光地はマーチャオ京都駅前店、向日町競輪場、そして淀競馬場だけだったのだ。(余談だが、ディープインパクトの菊花賞は淀まで観戦に行った。僕は記念馬券にディープインパクトの単勝を1000円買い、そのまま残してある) ある冬、西京区の古刹・善峯寺へ妻を後ろに乗せてバイクで向かった。市内は晴れていたので油断していたが、山に入ると昨夜の積雪が路面凍結しており、タイヤを取られた僕たちは時速5km/hでスローモーションのように地面に転がった。妻の無事を確認したあと、僕らは道路に転がったま