ジョン・ハワード首相(オーストラリア)が長期政権を築いた際の立役者であり、逆風にある幾多の候補者を当選に導いたのが、選挙ストラテジストのリントン・クロスビーである。その戦略から見えてくるものは、単に選挙に勝利する方法ではなく、ビジネスを成功に導くための定石である。本連載では、筆者が選挙対策の中枢を担った英国・ロンドン市長選をケースに、戦略の本質を解き明かす。連載は全8回を予定。 世界最強の選挙ストラテジスト リントン・クロスビー 2012年5月3日。ロンドン市長選挙の投票日。 翌日の開票を前に、保守党現職候補であるボリス・ジョンソン市長の選挙対策本部メンバーは、ロンドン市内のバーを借り切ってパーティをしていた。選挙対策本部の一員として選挙戦を戦った私は、夜10時半から始まったこのパーティに参加していた。 投票日も終日、有権者に投票を促すキャンペーン活動を行って誰もが疲れ切っていたが、もはや
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