水木しげるは『ゲーテとの対話』とともに戦場に赴き、1968年パリで闘う学生たちのポケットにはフーコーが入っていた――。20世紀の激動を人は哲学とともに生き抜いてきました。早くも暗い兆しの21世紀を生きる私たちが、いま出会うべき思考とは一体、どのようなものでしょうか。 連載《21世紀の必読哲学書》では、SNSでも日々たくさんの書籍を紹介している宮崎裕助氏(専修大学文学部教授)が、古今の書物から毎月1冊を厳選して紹介します。 第1回(前編)は王道中のマイナー、イマヌエル・カント『判断力批判』(熊野純彦訳、作品社/上・下巻、牧野英二訳、岩波書店/上・下巻、宇都宮芳明訳、以文社)です! 日常にちょっぴり哲学を 唐突ながら、これから毎回一冊のペースで哲学書を紹介することになった。ふだん大学で哲学を教える身であり、哲学の伝統にそれなりの使命感はあるつもりだ。ここではしかし、教科書的な概説を目指すのでは