世の中には見てはならないものがある。例えば……おっと、それを語っていいのだろうか。語る分にはかまわないか。語ることと見ることは違うからな。例えば、花見客のおっさんが夜陰で……おっと、見るのはいけないが書くのはいいともいえない。いやいや、例なんかどうでもいいといえばいいんだ。とにかく世の中見てはいけないものがあると僕が、今日夕暮れの桜の小道を歩いていて思ったのには、ちょっとしたわけがある。 一通でもないのに自動車がすれ違うのはちょっと無理だろうという、歩道もないような小道を歩いていると、なにやら向こうから、接近するのだった。あれがピンク色だったら、きっとカービーだと思っただろう。でも緑の色だった。緑の玉のような、それでも人間だったのだけど、ようするにけっこう太った感じの人だった。太っていようが本人の自由だと思うし、僕は目が悪いんで、より接近して見たら、それほど太っている人でもなかったのだけど