「現実」と「カルト」の違いは何だろうか。コンビニでアルバイトする女性を描いた芥川賞受賞作「コンビニ人間」が国内外でベストセラーとなった村田沙耶香さんは、人間の本質や社会規範を根底から問い直す作品を著してきた。新刊「信仰」(文芸春秋)では、「現実」の「正しさ」が揺らぐ世界を描いた。小説を「信仰」していると語る村田さんに、作品に込めた思いと創作の原動力を聞いた。【関雄輔】 現実とカルトは紙一重 2016年に刊行された「コンビニ人間」は、これまでに38の国と地域で翻訳された。新刊「信仰」には、海外の出版社から依頼を受けて執筆したものを中心に、18年以降に発表した短編小説とエッセーの計8編を収めた。 表題作は、英国の文芸誌「Granta(グランタ)」のオンライン版に「Faith(信仰)」として掲載された短編小説。主人公の「私」は「原価いくら?」が口癖の現実主義者だが、友人から「カルト商法」を一緒に