以前、東北大学の北川章臣教授からご教示いただいたのだが、今昔物語に「御読経の僧が平茸にあたる話」というのがある。僧が平茸にあたって亡くなってしまったところ、左大臣が同情して手厚く葬った。それを聞いた他の僧が一生懸命に平茸を食っている。「なぜそんな危ないことをするのか」と聞いてみると、「手厚く葬ってもらいたくて平茸にあたって死のうと思った」という話である。 何百年も前の書物に、自殺の経済インセンティブ(動機)に関わる記述が残っていることに驚く。この僧に「そんな危ないことはおやめなさい」と言うべきなのだろうか?。そうだとすれば、その根拠はどこにあるのだろうか?。そして、どうすれば自殺を抑止することができるのだろうか?。今回はこれらの点について考えてみたい。 言うまでもなく今の日本において自殺は最も深刻な社会問題の1つだ。そこでは、3つの特徴を挙げることができる。 13年間、毎日90人が自殺して