日本の家族を取り巻く制度や現実には伝統的な価値が強く反映され、他の先進国で起きている変化が見られない。法律は夫婦別姓や同性婚を認めず、法律上、結婚していない男女の間に生まれる子どもは少ない。変化の兆しもある日本人の家族観の行方を、千田有紀・武蔵大学教授が読み解く。 最近、「ちょっと前に彼は結婚したんだけど」とアメリカ人の友人から聞かされ「え? 彼はゲイじゃなかったの?」と聞き返すと「そうよ。だから男性と結婚したのよ」とけげんな顔をされた。 私は家族社会学者だが、まだまだ日本の家族観に縛られているなと感じた。研究の文脈では同性愛者同士の結婚、もしくは結婚に準ずるパートナーシップ制度の存在を知っている。 しかし日本では同性愛者による結婚はまだまだ身近ではなく、同性愛者の結婚を考えつきもしなかったのだ(日本では、法的に結婚できない同性愛者のカップルが、養子縁組制度を利用し、同居人としての法的権利