最近、このブログの更新が滞っていた。読書していないわけではないのだが、紹介しても読みたいと思う人がいないと思われる古い本や、必要な部分だけ読めばすむ本、あるいは紹介する気の起こらないような本ばかりだった。久しぶりに、新刊で紹介するにふさわしい本を読んだ。 白波瀬さんは社会階層研究者で、オックスフォードで学位を取った俊英。といっても、研究スタイルは地道そのもので、世界各国のデータを丹念に分析し、知見を積み上げていくタイプ。文体も地味で、読んでいてわくわくするようなタイプとはほど遠い。本書は前著『日本の不平等を考える』の日本に関する部分を抜き出し、さらに官庁統計などによってマクロな社会的背景について補い、これを誕生から老後までというライフステージの順に配列したもの。ですます調の文体といい、一般読者にわかりやすくする工夫がされている。岩波新書編集部的文体、という点では橘木俊詔の『格差社会』と共通
山本七平の話が続きますが、私の「朝日新聞の主張する『東條英機の論理』」という記事に、「竹林の国から:山本七平学のすすめ」というブログからちょっとおもしろいTBをもらったので、紹介しておきます。 これは、「是・非」論と「可能・不可能」論の区別ができないという日本的思考の弱点を、朝日新聞は未だに克服していないことを、みごとに証明した文章だと思います。この問題は、日本人にとっては実に深刻な問題で、山本七平氏は、「日本は、なぜあんな勝てない戦争に突入したんだろう」という疑問を解くそのカギは、実に、この「是・非」論と「可能・不可能」論の区別ができない日本的思考にあったということを、自らの体験に基づいて次のように指摘しています。 私だけでなく多くの人が、事ここに至った根本的な原因は、「日本人の思考の型」にあるのではないかと考えたのである。そしてほとんどすべての人が指摘したことだが、日本的思考は常に「可
IT時代の震災と核被害 (インプレス選書) 作者: 東浩紀,飯田豊,西條剛央,酒井信,神保哲生,飯田哲也,武田徹,津田大介,広瀬弘忠,三上洋,宮台真司,村上圭子,池田清彦,円堂都司昭,荻上チキ,加藤典洋,萱野稔人出版社/メーカー: インプレスジャパン発売日: 2011/12/08メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 7人 クリック: 470回この商品を含むブログ (25件) を見る コンピュータテクノロジー編集部のまとめた、震災とITに関わる各種の取材とりまとめに、「知識人」たちの対談をくっつけたもの。震災時に、グーグル、ヤフー、アマゾンなどがどんな要望を受けてどんな取り組みをしたか、ツイッターやウェブコミュニティはどう動いたかという検証部分は非常によい。SPEEDIが一向に公開されなかった話とか、情けない事情もきちんと出ているし、また海外報道の状況などもよくまとまっている。 それだけ
「良書悪書」のコーナーも最近は認知度が高まり、毎週10冊ぐらい本が贈られてくる。1冊ずつお礼することもできないので、ことし献本いただいた著者と版元には、ここでまとめてお礼を申し上げます。 今年は豊作だった。私の個人ブログとあわせてリストアップすると20冊ぐらいになったが、そのうち文句なしのトップは1である。タレブもいうように、これは国富論と並ぶような新しい学問を創造するインパクトをもつ本だと思う。来年、早川書房から邦訳が出るようだ。3も原著は名著だが、訳がひどい。 “Thinking, Fast and Slow” 『放射能と理性』 『フォールト・ラインズ』 『中国化する日本』 『エネルギー論争の盲点』 “Rational Decision” “Civilization: The West and the Rest” 『正義のアイディア』 『〈起業〉という幻想』 『マンキュー マクロ経済学
ようこそゲストさん ブログトップ 記事一覧 ログイン無料ブログ開設 The Red Diptych
家内とマネーボールを観に逝ってきたわけです。オークランドファンにとってはたまらない映画でしたね。お金が、ないんだよ。そういうハードな制約の中で、三倍の資金力を誇るヤンキースとかと戦うという絶望的な職務に挑むGMの生き様であります。私がなぜオークランドのファンになったかというと、ユニフォームが緑だからと、私が愛した南海ホークスの最後の外人トニー・バナザードがアスレチックス出身で、彼が私をメジャーリーグの面白さに導いてくれたのであります。いやー、野球って本当に面白いですね。 まあ、私も確率や統計、スコアラーといった方面に多大な関心を抱いているからなんですけれども、最近SMR Baseball Labの更新が止まっていて悲しいです。 http://www.baseball-lab.jp/ 映画では、ブラッド・ピットがやたら人情味溢れるビリー・ビーンを熱演しておりましたが、2002年のデーモンやジ
どうしても最近出張が多く、今週もイベントの後は東京を離れなければならないので読書量が増えてしまうのであるが、例によってちきりん女史が本を出したと言うので読みました。 一部の方はご存知かと思いますが、私自身はちきりん女史の書いておられるブログ(というか、はてな)があまり好きではありませんでした。というのも、私の仕事で詳しい事象について、かなりミスリードを強いるような記事をアップしておられるのを読んだ経緯があり、なんでそんなことを書くのかのうと思ったからです。まあ、私も誤読の類はたくさんやらかして迷惑かけますので同類と言われればそれまでなんですけれども。 Chikirinの日記 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/ などとしっかり予防線を張ったところで、なぜ最近ちきりん女史の本やブログ(のようなはてな)を読んで腹が立たなくなったのかというと、しばらく読み込み続けるなか
・ヤバい統計学 統計の失敗やウソを暴くのではなく、統計が正しく使われた成功事例を10のエピソードで解説する。統計学の成果を現実の社会に応用するには、難しい計算ができるだけではまったく不十分で、その数字が人間にもたらす心理効果や、実際の経済効果をよく考えなければならないということがよくわかる本。 最初のエピソードはディズニーランドのファストパスは統計学の成功例だ。ファストパス発券によってアトラクションの待ち行列が短くなるわけではない。しかしファストパスにより「ディズニーのテーマパークでアトラクションを待つ行列は年々長くなっているにもかかわらず、出口調査によるとゲストの満足度は上昇し続けている。」そうである。 ファストパスの役割は待ち時間を短くすることではなかった。パスがあっても、アトラクションの収容能力は変わらないからだ。統計学的にはパスの真の機能はゲストの待ち時間のばらつきを排除することに
ゲーム理論による社会科学の統合 (叢書 制度を考える) 作者: ハーバート・ギンタス,小川一仁,川越敏司,佐々木俊一郎,成田悠輔出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2011/07/14メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 328回この商品を含むブログ (17件) を見る 本書はNTT出版による業書「制度を考える」の一冊.著者のハーバート・ギンタスはゲーム理論家で行動科学者ということだが,多くの学際的な活動で知られる.本書もその邦題からわかるように非常に学際的な性格の強い書物であり,本書を貫くギンタスの主張は「ヒトの行動にかかる学問は,社会科学,生物学,心理学,経済学という分野ごとに分断化され,相互に相容れないモデルを使っているが,それは大変嘆かわしい状況である.そして行動科学は,ヒトを拡張された合理性を持つプレーヤーと扱い,社会規範を入れ込んだゲーム理論によって統合が可能で
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く