いつの間にか今年も残り少ない。例年と異なり年末の賑(にぎ)やかさもなく、大阪の街はまるで冬の寒さが作ったかのような静かな年の瀬を迎えている。 こうした状況下でも年末を味わわせてくれるのが、平年と変わらない恒例の食事だ。普段と何もかもが変わってしまっている、こうした状況の中では、いつもと変わらないことほどありがたいものはない。 初詣などはどうなるか分からなくても、例年と変わらない食事はすべてが戻ってくることへの希望を持たせてくれる。新年のおせちやお雑煮、大晦日(おおみそか)の年越し蕎麦(そば)は多少なりともいつもの年明けを思い出す手助けだ。筆者のような将棋棋士は大晦日も働くことが多いため、仕事が終わった後の温かい蕎麦がやっと新年心地をもたらしてくれることも多い。 蕎麦は普段の食事としてはもとより、年越し蕎麦や引っ越し蕎麦など、折々の祝いの食事としても供される。その形状から食べた者が細く長く生