名優ジャック・ニコルソン主演の米映画「チャイナタウン」(1974年)は、英国の映画批評家たちによって「永遠の名作ベストワン」に選ばれたこともあるハードボイルドの傑作(アカデミー脚本賞ほか受賞多数)だが、後味の苦みが嫌いな人にはあまりお勧めしない。 舞台は30年代の米ロサンゼルス。大恐慌(29年)の爪痕を感じさせる殺伐とした都市の、チャイナタウンはとりわけ手が付けられない無法地帯として登場する。奇妙なことに、中国人はろくに描かれない。悪行を犯さないのに、不気味な悪の隠喩に使われているのだ。 30年代の人種差別が史実だったにせよ、70年代に往年の差別観そのままの映画が作られ(90年に続編も製作)、21世紀に入ってなお批評家たちが絶賛するとは、鈍感なのか、それくらい偏見は根深いのか。見終わってそう思い至ると、作品が上出来なだけに、後味はさらに悪い。